39.何でそんなことしなくちゃいけないんだ。運営に文句言ってやる。
11連ガチャ引換券(ゲーム)で当った物を確認した。
ダンジョンマスター祭が今夜開催されるらしい。
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機械ゴブリンメイジ達に世界中のトランプ詰め合わせの残りを渡した。
今頃、無駄に広い大部屋の連中に配っていることだろう。
俺は機械ゴブリンメイジ達と一緒に5人で大富豪をしている。
大富豪とは、ジョーカー含む53枚をプレイヤーに配り、トランプを場に出し、手札を0枚にして上がるゲームだ。
札の強さはジョーカーが最も強く、2>A>K>Q>J>10>9……4>3の順の強さとなる。
ジョーカーはペアに添えると、他のカードの代わりとして使うことが出来る。
ただし、4枚以上のカードを同時に出すと『革命』が起こり、ジョーカー以外の強さが逆転する。
また、Jを出すと、場が流れるまで一時的に『革命』状態となる。
これはイレブンバックと言うローカルルール。
「8切り、ジョーカー、4のダブルで上がりっと」
8切りは、8の札を含む手を出すと強制的に場が流れるローカルルールだ。
「ギャギャー(また命様が大富豪ですか)」
「ギャギャ(今度は負けねぇ! 6のダブル!)」
「ギャギャン(むむむ、パス)」
一度大富豪になると、次のゲームでは大貧民から最も強いカード2枚をこちらのカード2枚と交換できる。
2位の富豪は、次のゲームで貧民から最も強いカード1枚を手札の1枚と交換できる。
こうして最初から手札格差が生まれるのだが、それをひっくり返して勝つのもまた一興。
「ギャーギャ(また大貧民かよー!)」
「ギャギャ(お前カードの出し方下手すぎ)」
「ギャッギャ(まあまあ)」
順位が決まったみたいなので、俺はトランプをシャッフルして、大貧民の機械ゴブリンメイジにカットさせ、配らせる。
53枚を5人で分けるから、誰か3人が1枚多くなる計算だ。
それが有利になるか不利になるかは手札次第。
大貧民が配っているということは、手札の数をどうするかの決定権は彼にあるということだ。
そこまで深く考えているかどうかは知らないが。
さて、次はどんな手札になるかな、っと。
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間もなくダンジョンマスター祭が開始されます。
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あっそ。それより俺の手札は……3、3、3、7、8、9、
10、10、J、J、2か。
Jと3の使い方に注意だな。Jを出すと3が強くなるが、8で流される可能性を考えると、Jのダブルか?
いや待て。手札交換をした後で考えよう。
とりあえず7、9を渡すか。
貰ったカードは、2、ジョーカー。
手札は3、3、3、8、10、10、J、J、2、2、ジョーカー。
うは。負ける気がしない。
大貧民から時計回りで俺は2番目。彼は7を出す。
俺は2を出す。当然場は流れる。
次にJJジョーカーでトリプルJだ。場は『革命』状態となり
3が最強となる。
6のトリプルを出されたが、問題なく3のトリプルで場が流れる。
8で場を流し、2を出す。そして10のダブルで上がり。
余裕すぎる。
「ギャギャ(命様、ちょっとは手加減してください……)」
「やだね」
手札に応じた駆け引きが楽しいというのに、それをしないのはゲームに参加しないのと同じだ。
というか、手札が良すぎた。次はこうはいかないだろう。
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ダンジョンマスター祭が開始されます。映像を流します。
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◇ ◇ ◇ ◇
・ダンジョンマスター祭会場
湖底のダンジョン18階層、多目的ホール。
大部屋サイズの部屋は床が大理石、壁は苔で覆われた岩肌。
水が満たされる部屋がほとんどの中、この部屋には空気が満ちていた。
「レディース、エーン、ジェントルメーン!
ただ今からダンジョンマスター祭を開催するよー!」
「司会はわたくしホーラと、ニセルですわ~」
ホールには舞台があり、そこで2人のダンジョンの女神が
ダンジョンマスター祭の開始宣言をした。
50人の上級者ダンジョンマスターは拍手を送る。
「今回も、様々な神にお願いして、屋台を出してもらっていますわ~。
皆さん、心ゆくまで楽しんで欲しいですわ~」
そう。このダンジョンマスター祭、何と色んな神が屋台を出している。
神の作った武器や魔法、スキル、魔獣、施設、などをDPで購入することが出来るのだ。
この映像を見た中級者ダンジョンマスター達は羨ましがり、次こそは俺達もあそこへ行くんだ、とモチベーションがぐんと上がる。
女神パチモも、屋台を出している。ニセルやホーラの等身大フィギュアや抱き枕、お面を販売中だ。
「では早速、ベストダンジョン賞から発表しますわ~」
「ベストダンジョン賞アメイジング部門! 今回選ばれたのはこの人!
ダンジョン『引きこもり拠点』の伊乃田命!」
うおお、やっぱりか、とてもマネできない、あれはすげーよ。
発表と同時に会場からワイワイ声が溢れる。
「イビルホーネットの大量討伐! ダンジョンマスターテイマーの討伐!
それを出来てたった1ヶ月のダンジョンが成し遂げた! 素晴らしい!
神々の評価ポイントはなんと1000点中、673点!」
つまり、1000の神のうち673が命のダンジョンに投票したということだ。
普通は200点を超えたら賞を取れる。余裕の半数越えである。
「では現場の中継映像お願いしまーす!」
ニセルの声と同時に、命達が大富豪してる姿が映し出される。
『6が3枚とジョーカーで革命! 3! そして7! また俺が大富豪だ!』
『ギャギャ(そんなー)』
「……あのー」
『ん? 何だ人工音声さん。え? 見てる? 誰が? 皆?』
あいつ何やってんだ。大富豪やってるっぽい。大物か?
トランプか、いいな、俺の所にも導入しよう。
俺の好みだな。ああ。大貧民だと、俺も混ぜろ!
ダンジョンマスター達は各々、色んな反応をしてみせた。
「あいさつして欲しいな」
『俺は伊乃田命だ。これでいいな? はい終わり』
「終わらないで?! 自己紹介とかしてくれない?」
『何でそんなことしなくちゃいけないんだ。運営に文句言ってやる』
『ギャギャ(それでは僭越ながら。私は命様によって青1と名付けられ……)』
「配下君の自己紹介はいらないよ?! 命君に頼んだんだよ?!」
「はい、時間が押してるから終わりですわ~。
命さんには、第1033回ベストダンジョン賞アメイジング部門のトロフィーと、10DKP(ダンジョン階位ポイント)を差し上げますわ~」
『うお?! 何だこの邪魔な物体は! イチ!』
『イーッ!』
「ああっ! トロフィー分解しないで?!」
女神ニセルの悲痛な叫びは虚しく、全長5mの第1033回ベストダンジョン賞アメイジング部門のトロフィーは、イチが分解して疑似DPの肥やしにしてしまった。
あまりに素早い行動だったため、他のダンジョンマスター達には何が起こったのか分からない。
ダンジョン改造屋のイチの声だけしか分からなかった。
「さて、次はベストダンジョン賞ストロング部門ですわ~」
待て、さっきのは何だ。気になるところで映像切るなよ。
トロフィーが一瞬で消えた?
色々と気になることがあったが、次の賞を発表されると、彼らの興味はすぐに他へ移った。
ただ1人を除いて。
「ひゃっはっは、消毒しがいのありそうな奴じゃねーか」
眼帯を付け、つばの広い帽子を被り露出の多い黒の服を着て、サーベルを身につけた赤茶髪の女性。
海賊船ダンジョンのダンジョンマスターに命は目を付けられたようだ。
次に喧嘩を売る相手を誰にしようか悩んでいたが、どうやら命に決めたらしい。
ダンジョンマスター祭が終わり、彼女は1通のメールを命に送り付けた。
◇ ◇ ◇ ◇
今回の成果。
増減前4,936,410DP
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収入0DP
支出0DP
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現在4,936,410DP
 




