『非常事態発生』
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「おらおらっ!待ちやがれ!」
ミランダさんとの鬼ごっこが始まってどのくらい時間が経過したのだろうか。
俺はミランダさんに追い付かれないように必死に逃げている。
もし追い付かれでもしたらあの大剣の餌食になる。それだけは絶対に嫌だ。
「カイト!お前も男なら逃げずに戦いやがれ!」
「お断りします!」
例えどんな男であろうと大剣を振り回す女性に追っかけ回されれば逃げるに決まってんでしょ!?
「ちっ!腰抜け!チビ!バカ!アホ!」
俺を怒らせて闘わせようとしているみたいなのだろうけど、そんな小学生レベルで一々反応する訳ない。
「この童貞野郎!」
「ど、どどど童貞ちゃうわ!」
「ここだ!」
俺が足を止めて振り向いた瞬間、ミランダさんの大剣が上段から俺に振り下ろす。
俺はすぐに横へ飛ぶことでなんとか回避に成功。なんて、高度な技?を使うんだ。思わず振り向いてしまった。
「逃げるな、童貞!」
「だから違うって言ってんだろ!」
さらに数十分が経過。
「ぜえ、ぜえ・・・。畜生!なんてすばっしこい男だ!」
「はあ、ふう・・・」
ミランダさんは肩で息を吐き、声を荒げる。俺は最近、走り続けてきたおかげかまだ余裕がある。まさかあの訓練に感謝する時が訪れるとは思わなかったな
「・・・もう止めませんか?俺としてはそうしてもらえると嬉しいのですが・・・」
「ふざけんな!!こうなったら奥の手だ!」
「えっ・・・?」
「ふぅ・・・はああああああああああっ!」
ミランダさんが大きく声を上げると何か真っ赤なオーラみたいなものを放出し始めた。
そして、オーラが収まると俺に向けて言い放った。
「これからが本番だ、カイト!固有スキル【鬼人化】を発動させた!」
「ば、【鬼人化】・・・?」
そういえば、ミランダさんのステータスにそんなスキルがあったな。
「これはオーガの力を増幅させる事によって魅力以外のステータスを2倍にする!その副作用で少し見た目が変化するけどな」
確かにミランダさんの頭に2本の角が生えている。でも、ちょこんと生えている感じなので怖い感じではない。
「これは使い続けると、身体に負担がかかり丸1日は身体が動けなくなるが、まあ問題ねえ!すぐに捕まえるからな!」
「っ!?【シールド】!」
俺は咄嗟に防御魔法の【シールド】を唱えた。俺の目の前に直径1m程の魔力で作られた盾が現れる。
それと同時に衝撃が走った。
俺が見たのは、盾に亀裂が入り、その原因となるミランダさんの拳だった。
「へえ?よく受けたな?だが・・・おらっ!」
「うわっ!?」
ミランダさんは、シールドで受け止められているにも関わらず、その拳を振り抜いた。その事で俺は踏ん張り切れず10mぐらい吹き飛ばされた。
「な、なんて力だよ・・・」
確かミランダさんの【鬼人化】は魅力以外のステータスを2倍にするって言ってたな?そうなると・・・
名前:ミランダ・ビュフベルト
性別:女
年齢:17
種族:人間とオーガのハーフ
職業:重戦士
レベル:40
状態:鬼人化
通常→固有スキル発動(魅力以外の元の値x2)
H P:3500/4000→7000/8000
Ⅿ P:900/1500→1800/2000
攻撃力:5000→10000
防御力:3000→6000
俊敏力:1500→3000
魔攻力:300→600
魔防力:500→1000
魅 力:300→300
通常スキル:【大剣術】、【大斧術】、【気功術】、【裁縫】、【料理】
固有スキル:【鬼人化】
称号:【狂戦士】
「さあ、この状態の私は手加減が出来ないぞ?早く私を倒さないとお前が死ぬことになる。逃げてないで反撃したらどうだ?」
ふざけんな!
今の攻撃だってまじでギリギリだったんだぞよ!それを反撃とか無理!それに俺がミランダさんに攻撃をしない一番の理由がある
「俺は、女性を殴らない主義なんだ!」
「・・・は?」
俺の言葉に呆気に取られた表情をするミランダさん。ちょっとすると片手を顔に置きながら急に笑い出した。
「おいおい。そんな冗談マジありえねえよ。この状態の俺相手に女性だから攻撃しねえとかマジ笑える」
「いや、俺は真面目に―――」
俺はそれ以上言葉を続けられなかった。何故ならミランダさんの纏う雰囲気が一気に豹変したのが感じ取れたからだ。
そして、片手によって隠された顔が見えた瞬間、それが気のせいではなかったことが証明される。
「いや、ホント・・・殺されたいのか?」
その顔はまさに【鬼】だった。
「っ!?【スピードアップ】!【スピードアップ】!【スピードアップ】!【スピードアップ】!【スピードアップ】!【スピードアップ】!」
身体全体に悪寒が走った俺はすぐに補助魔法の俊敏力を上げる【スピードアップ】を早口で言ってすぐにその場から逃げだした。
「調子に乗ってんじゃねえぞ!ゴラアアアアアアアアアア!!」
【竜斬炎刃】を思いっきり地面へと叩きつけたミランダさん。地面は抉れ、衝撃波で岩や近くにいた魔物すらも粉砕された。
「俺が、女だから、攻撃できない、だと!?俺は、女だからって差別する奴は大っ嫌いなんだ!!」
ドドドドッっと地響きが俺に向かってやってくる。俺はそれから少しでも遠くに逃げるように走るスピードを上げた。
やっぱり怒っちゃったか、でもまさかあそこまで豹変されるほど怒るとは思ってなかったけどね。
俺は少し違うが予想通りの展開に溜息を吐く。
ミランダさんみたいな人はプライドが高い。特に男女の違い等で分けられたら彼女にとって侮辱に値するだろう。
それが分かっていながらもミランダさんに伝えたのは、その信念は俺も譲れないものだからだ。
男は女を守るもの。
だから俺は、女性を傷つけない強い男になりたいと思っている。
「でも、このままじゃ・・・」
MPが尽きて、ミランダさんに捕まり、マジで殺されてしまうかも・・・
「カイトおおおおおおおおおおっ!!」
「やべっ!追い付かれてきた!!【スピードアップ】!【スピードアップ】!【スピードアップ】!」
考え事をしてたら補助魔法の効果が切れて走るスピードが落ちていた。
だから俺は再び補助魔法を唱えてスピードを上げて逃げるが目の前には大きな扉が存在していた。
「止まったら追い付かれる!【パワーアップ】!【パワーアップ】!【パワーアップ】!」
攻撃力を上げる補助魔法【パワーアップ】を唱えて、某改造仮面のように跳んで扉に蹴りをかまして中へと突入。着地して再び逃走しようとしたが俺は足を止めてしまう。
いや、足を止めざるおえなかった。
「カイトおおおおおおお!死ねえええええええ!!」
後ろからミランダさんの声が聞こえたがそれでも俺は目の前にある存在から目を離す事が出来なかった。
「ガオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
「なっ!?」
「・・・・・・」
鼓膜が潰されたと思うぐらいの大声に俺は無言で、横目で映ったミランダさんは【竜斬炎刃】を上段に構えたまま俺と同じように唖然としていた。
目の前いる巨大な『ドラゴン』を目の当たりにして
「ガルルルルル・・・」
「な、なんでドラゴンがここにいるんだ・・・?」
さっきまでの怒声がまるで嘘かのように怯えた声を出すミランダさん。
見てみると【鬼人化】は解けていてその眼には恐怖の色しかなかった。
「知らないよ・・・。このダンジョンのボスなんじゃない?」
「あ、ありえねえ!!今までのダンジョンでドラゴンがボスなんて一度もないんだぞ!!」
ミランダさんは身体を震わせながら言っている。完全にドラゴンの恐怖に呑まれている。でもその怯え方は普通じゃない。この感じ、精神的障害か?
「ミランダさん!逃げよう!早く入口へ!!」
「あ、ああ!」
俺はミランダさんの手を取って走り出した。
しかし、それは無駄に終わる事になる。
俺が蹴破って破壊した筈の入口が綺麗さっぱり消えていたのだ。
「な、なんだよ、これ!?ボス戦に入ったら逃走不可能になる仕様でもなってんの?」
「そ、そんな筈は・・・い、今まではちゃんと逃げられるようになってた筈なのに・・・」
さすがの俺も冷静を欠いてしまい、ミランダさんに問い詰めてしまう。
ミランダさんは今にも消えてしまいそうな声でそう答えた。
違うっていうなら一体何がどうなって―――
「それは私の仕業ですよ」
「!?」
ドラゴンから背を向けていた俺達はドラゴンではない声を聞いてすぐに振り向いた。
しかし、ドラゴン以外何もいない、と思ったがそのドラゴンの頭の上に人がいた。
「こんにちは。この国で最強の騎士様と最弱勇者様」
「・・・・・・」
無言で返す俺にドラゴンを乗った奴は溜息を吐いた。
「つまらない反応ですね?もっと泣き叫ぶなりしてもいいんですよ?」
「泣き叫べばここから返してくれるならいくらでも叫んであげるよ。その前に、君は何者だ?」
「私ですか?私はダンジョンマスターをやっている者ですよ」
「だ、ダンジョンマスター!?」
ドラゴンに乗った奴の自己紹介にミランダさんが過剰に反応した。
なにそれ?そんな凄い奴なの?
「ダンジョンマスター。世界に1人しかいないと言われていてその名前通りダンジョンの支配者でこの世界のダンジョンはその者によって創られると言われている・・・」
「よく知ってますね、流石はこの国最強の騎士様。実は久しぶりに新しいダンジョンを創ったのですが強くしすぎてしまいまして。修正しようと来たのですが運悪く君達が入ってきちゃったんですよ」
「・・・それで口封じの為に俺達をここで消そうと?」
俺の言葉にダンジョンマスターは首を振った。
「違います。むしろチャンスを与えようと思いまして」
「チャンス?」
「そう・・・」
「っ!?消え―――」
話している最中にダンジョンマスターが消えてしまった。探そうと辺りを見回そうとするがも―――。
「チャンスを与えます」
「なっ!?」
「一瞬で後ろに!?」
ドラゴンに乗っていた筈のダンジョンマスターはいつの間にが俺達の背後に立っていた。
緑色の髪でツインテールをした可愛らしい女の子。
全然、気付けなかった・・・。何か転移か何かの魔法を使ったのか?
というか遠くでよく分からなかったけど、女の子だったんだね。
ドラゴンのせいで小さく見えてたと思ってたけど本当に小さい。
「・・今、失礼な事を考えましたね?最弱勇者様」
「ドンデモナイデス」
その見た目からは想像できない怒気を纏わせて言ってきたダンジョンマスター。俺はすぐにそう返答した。
「まあ、いいでしょう。とりあえずこれをどうぞ」
「これは・・・ドラゴンの、ステータス表?」
ミランダさんに渡したのは一枚の紙。それはどうやらドラゴンのステータスが書かれているらしい
「それを使ってドラゴンをぱぱっと倒してください」
「そんな無茶な・・・。それになんでそんな事を?」
「実はこのダンジョンは失敗作なんですよ。こんなモンスターがボスじゃ誰も来ないでしょ?だから、さっさと戦って、ダンジョンを攻略するか、死ぬかしてもらいたいんです」
「・・・・・・」
おいおい。さらっと怖い事言ってるぞこのダンジョンマスター様は。そして、かなり自分勝手で何も言えねえ。
「待ってよ!このダンジョンには俺たち以外の人もいるんだよ?もし俺達が死んだらその人達はどうなるんだ!?」
「ああ。その人達なら大丈夫ですよ。もう外に出ています」
「・・・は?」
「貴方達がこの部屋に到着した瞬間、ボス部屋の扉は消滅させました。他の人達はこの部屋以外の場所を調べつくして何もないと判断し、このダンジョンから出て行きましたから、残っているのはあなた達2人だけ」
そういう事ね。でもまだ俺達が残ってんだから捜索してくれても良くないか?
「では頑張ってくださいね?倒せばレベルは一気に跳ね上がるでしょう。ついでに豪華なお宝も用意してます。まあ、あなた達では倒せないでしょうけど―――」
「お、おい!!」
俺が声掛けるよりも早くダンジョンマスターは姿を消した。そして―――
「ガオオオオオオッ!!」
「ひっ!?」
「・・・・・・」
脱出不可能の部屋に残された俺とミランダさん。脱出するにはダンジョンボスのドラゴンを倒す事。
ドラゴンに怯えて使い物にならないミランダさんと最弱勇者の俺の2人だけで。
・・・これなんて無理ゲー?
ブクマ・感想宜しくお願いします!




