『勇者の異変と戦闘狂』
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騎士からの号令で俺達は王の間と呼ばれる場所で待機している。
すると、奥の部屋から王様が出てきた。
「日々の鍛練ご苦労である勇者達よ。今回呼び出したのはお主たちに頼みがあるのだ」
「はい、なんでございましょうか?A級だけではなく全員に依頼というのは初めてですが?」
クラスを代表してA級1位の隼人君が応える。
話には聞いていたがA級の10人は王様から直々に魔物の討伐などの特別な依頼を受けているのは本当らしい。
報酬はかなりの良いものを貰っていると騎士達の話を盗み聞きしたことがある。
俺なんて王様にあったのが最初と今日の2回だ。まあ、あんな悪い王様になんて会いたくなかったからどうでもいいんだけど。
「最近、この城の近くにダンジョンが発生したとの情報が入った。勇者達には全員でそのダンジョンの攻略を頼みたい」
「お言葉ですが、王様。A級の者達ならばともかくB級やC級の皆には荷が重いのでは?」
「ステータスを見たが最下位の者でも下級騎士並の力はある。問題無かろう。それに勇者1人に騎士を何人か付ける。安心するがいい」
王様の言葉に「分かりました」と渋々了承して黙る隼人君。
皆は何も言わないが本当に大丈夫なのだろうか?
隼人君の言う通り実戦経験のあるA級なら問題ないかもしれないがB級やC級の俺達はかなり危ないのではないか?
「あ、あの!王様!」
「ぬう?なんだお前は?A級ではなそうだが?」
「奴は『C級11位』最下位の勇者です。しかも、4週連続で一度も最下位から脱した事はありません」
「そうか。最下位、貴様に発言の権利はない。黙っていろ」
うわあ・・・。隼人君とは違ってこの扱いの差。王様云々より人としてどうよ?
だが、はいそうですかと下がる訳にはいかない。これは俺だけではなく、実戦経験のないC級やB級の皆にも関係するのだから!
「ですが、これはあまりにも無謀だ!特別な訓練を受けていないC級やB級には危険すぎ―――」
「黙っていろと言っているだろう!最下位!!」
「―――ぐあああああああああっ!?」
王様の一喝と同時に俺の身体に電流が走った。これは、あの指輪の効果か?
俺が逆らったと判断され発動されたようだ。
「ぐっ・・・」
「ほう。死にはしないが気絶するくらいの電流が流れるのだが・・・仮にも勇者という訳か」
失神級の電流で倒れずにいる俺を見て意外そうな表情をしている王様。
いや、マジで痛えよ!スキル【忍耐】がなければ本当に気絶していたぞ!?
「最下位。我は忙しい。貴様の話など聞いている時間すら惜しい程にな。では、勇者達よ、検討を祈る」
そういって王様は奥の部屋へと戻っていった。あの野郎・・・いつか王冠の尖った部分を奴の尻にぶっ刺してやる!!
「大丈夫かい、倉木?」
俺が王様入っていった部屋を睨み付けていると隼人君が声を掛けてきた。
「倉木って馬鹿よね?王様にあんな態度とるなんて死にたいの?」
「め、恵美ちゃん。そんな事言っちゃダメだよ。大丈夫ですか、倉木くん」
隼人君の後ろから出てきたのは女子が2人。
ポニテをした男勝りな性格で隼人君の幼馴染である坂下恵美ちゃん。
ロングの黒髪でカチューシャを付けた気の弱そうな性格で恵美ちゃんの親友の上条静香ちゃんである。
2人は唯一、隼人君のグループに所属している。ちなみに恵美ちゃんはB級3位で静香ちゃんはC級1位。
ランクは全員バラバラでありながらも一緒にいるって事は実力よりも信頼関係を優先しているって事が分かる。
「だって、王様よ?一番偉い人に逆らうなんて馬鹿のする事でしょ?」
「落ち着くんだ、恵美。・・・倉木、僕も王様にああいう態度は良くないと思う。一体何が言いたかったんだい?」
「何がって分からないのか?」
俺が逆に聞いても首を傾げてしまう隼人君。
そして、周りから小さな声だが聞こえてきた。
「なんだよ、倉木の奴。魔物にビビりすぎじゃね?」
「本当だよね?A級の皆も魔物なんて大したことないって言ってるし、騎士の人達もお供してくれるから大丈夫でしょ」
「ほんと、あいつって空気読めねえよな。だからいつまで経っても最下位なんだよ」
なんか俺だけが悪者扱いされてないか?周りを見ても皆が俺に冷たい視線を突き刺してくるし・・・
「・・・な、なんでもないよ。気にしないでくれ」
「・・・次はあんな事しないようにな」
そう言って隼人君たちは俺の元から去っていく。電流喰らうし、クラスメイトからお叱りを受けるし散々だな。
俺はそう思いながら溜息を吐いているといきなり体が軽くなった。
「ごめんなさい・・・。そして、ありがとう」
「えっ?」
声の方を向くと、早足で俺から離れていく静香ちゃんの後ろ姿。もしかして、今のは静香ちゃんの回復魔法か?
C級の中では唯一回復魔法を使える人物。その回復魔法はA級にも匹敵すると言われている。
今、身をもって経験したけどかなり体が軽くなった。静香ちゃんには感謝だね。
「ではこれからダンジョンへと移動を行う!A級は高級馬車。B級は普通の馬車。C級はボロボロな馬車で移動となる!」
移動するにもランクの差別があるのかよ!!まあ移動できるだけよしと考えるべきか?
「そして、最下位!貴様は馬車の定員オーバーの関係で、地図を渡すから走りだ!」
「ふ ざ け ん な !!」
「ああ・・・。体が痛い・・・。うぷっ・・・吐きそう・・・」
俺は腕や足の筋肉を揉んだり、口を押さえながら呟く。結局、俺は走りで向かう事はなかったが馬車の屋根にしがみ付いて移動となった。
地球とは違ってちゃんと舗装されていない道の為、馬車の揺れが半端ない。
そのせいで何度も振り落とされそうになったが日頃の訓練のおかげで耐え抜いた。
「・・・倉木くん、大丈夫ですか?」
「う、うん。大丈夫・・・」
しかし、筋力ではどうにもならないものもある。正直吐きそうだけどスキル【忍耐】でどうにか耐えている。
ああ、【忍耐】マジ万能!
でも、静香ちゃんに回復魔法をかけてくれたおかげでかなり楽になった。
クラスメイトに味方はいないと思っていたけど誤解だったようだ。
「静香ー!どこにいるの!」
「あっ!・・・倉木くん、ごめんね!」
「う、うん。ありがとね」
恵美ちゃんの呼ぶ声に静香ちゃんが俺に謝ってその場から去っていった。
至福の時間ってすぐに経過しちゃうんだね・・・
「これより勇者1人に騎士達をお供につける!」
1人の騎士がそういうと馬車から騎士たちがぞろぞろと出てくる。
あれ?俺もあの騎士たちの馬車に乗せてくれれば良かったんじゃね?
俺のそんな考えを余所に、一人の勇者に4人以上の騎士がお供として付いていく。
ランクに関係なくちゃんと分かれると思ってたんだが、ここでも最下位という汚名の効果が発揮された。
俺のお供となる騎士の人数・・・0人
ふ ざ け ん な !!
「ちょっと!流石にこれはあんまりでしょ!!」
「うるさいぞ!またお前か最下位!」
先ほどから仕切っていた騎士がやってくる。怒っているがそんなのは関係ない。
「今回ばかりは反論させてもらいますよ!1人でダンジョンに潜れとか無理ですから!」
「なに?最下位には1人騎士が付くと聞いているが・・・」
それでもたった1人かよ!0人よりマシだけど!
だけど、その1人すら見当たらないんだけど!!
「そいつのお供は俺だ俺!」
「えっ?うおっ!?」
俺は思わず飛退いてしまう。
俺の背後から声を掛けてきたのは身長175cmある俺が見上げてしまうくらい大きい人だった。
そんな大きい人が気配無しに後ろから現れたらびっくりしても仕方ないと思う。
「おっ?悪い悪い、驚かしちまったか。俺の名前は『ミランダ・ビュフベルト』。宜しくな」
「は、はあ・・・」
気の抜けた返事で答える俺。
だってこのミランダさん。身長は2mはあるし、彼女と同じくらいの刀身がある剣を軽々と背負っているのだ。動揺しても仕方ないと思う。
でも、顔は爽やかボーイッシュな感じで格好良さの中に可愛さも感じられる。体も女性の象徴ともいえるある部分が凄い。どこがとはあえて言わないが・・・
「どうした、元気ねえな?男子たるもの元気でねえと!!」
「は、はい!!俺は倉木海人です!倉木か海人と呼んでください!!宜しくお願いします!!」
「そうそう!男の子はそのくらい元気じゃないと!はははっ!!」
ばんばんと俺の背中を叩きながら笑うミランダさん。男の俺以上に豪快で逞しい人だな・・・
「では、これよりダンジョンの攻略を開始する!A級から順番に一人ずつ入ってもらうから準備するように!!」
「ん?全員で入るんじゃないの?」
「カイトは分かってないな。狭いダンジョンの中をこんな人数で入ったら動きづらいだろ?それに罠があったら後ろが邪魔で逃げられない可能性もある」
「あっ、なるほど」
だったら勇者全員で来る必要なかったんじゃないか?と思ったが、人が多ければその分楽に攻略出来るから良いのだろう。
「ちなみに狭いダンジョンだと俺の相棒【竜斬炎刃】を振り回すと敵だけではなく、壁に突き刺さったり、味方に当たる可能性があるから不向きなんだ」
「それじゃあ、その武器は使えないって事ですね」
強力そうな名前の武器なのにもったいないな・・・
「何言ってんだ?俺はダンジョンでもこれを使うぜ?もちろん、今日も」
「はい?」
何を言っているのだろうか、この人は?
さっき自分で武器の弱点を言ってたじゃないか。
「じゃあ、もし壁に突き刺さったりしたら?」
「そのまま壁も粉砕するから問題ねえ」
「み、味方に当たったら?」
「事故だ。つか、避けられなかった味方が悪い」
暴君発見!この人危ない人なんじゃないか!?
「俺は相棒以外からっきしなんだ。だから、どんな状況であろうと味方に攻撃が当たろうと相棒を使うんで宜しく!」
「宜しく!、じゃねえええええっ!!」
なに?下手したら俺、あの大剣の餌食になるかもしれないって事だよね!?
「じゃ、じゃあ今まで他の騎士達と一緒にどうやって戦ってたんですか?」
「俺はいつもは1人で任務をしてるんだ。集団任務をする時もあるけど必ず別行動してる」
ダメだ・・・。一番一緒に付いて着て欲しくない人がお供になってしまった。
「じゃあ、ミランダさんは待機してもらって俺の戦闘ぶりを見ていただくって事に・・・」
「嫌だ。俺は戦闘が大好きなんだ。黙ってみてるなんて御免だね。お前が黙って何もせずに付いてくればいいんだよ」
「これって一応勇者である俺の依頼なんだけど!?」
俺が楽になるかもしれないけど、それはダメだと思うんだ・・・。俺もどれくらい戦えるか試してみたいし。
「言っとくが最下位のお前にお供に付いたのはどうせ誰も付かないだろうから一人で大暴れできると踏んだからだ。見事に予想通りだ。久しぶりに暴れてやるぜ!」
お供が戦闘狂で困ってます。誰か助けて!!
「ミランダ!最下位!お前達の番だぞ!早くは入れ!」
「ほいほーい!」
「ま、待って!まだ心の準備が!!」
このままじゃ生きて帰れるか分からなくなる!主に味方のせいで!
「最下位!仮にも勇者のくせに魔物にビビってんじゃない!!ミランダ!さっさとこいつを連れて行け!」
「ほーい」
ち、違う!俺は魔物以上にミランダさんのフレンドリーファイヤが怖いんです!!
俺がそういう前にミランダさんが俺の首根っこを掴んでダンジョンへと連行していく。
「俺の~、前や後ろに~、立っている奴らを~、敵味方問わずに~、ぶった切る~♪」
「いやあああああああああっ!?」
ミランダさんの独特な歌が俺を恐怖のどん底へと突き落としていく。
マジで誰か助けて!?
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