『異世界』
連続投稿
「よくぞ、来てくれた。勇者たちよ、我々は貴方方を歓迎しよう」
女神に転生してもらい、閉じていた目を開けるといきなりそんな声が聞こえた。
とりあえず、状況確認の為に周りを見渡すと俺は30人の生徒たちに紛れ込んでいた。
生徒たちは、怯える子や怒りで震える子、とても嬉しそうな子など様々だった。
本当にこの子達の生徒の一人として召喚、いや転生したみたいだ。
「勇者たちよ。今、この世界は人類滅亡の危機に瀕している。その原因は凶悪な魔物を従える魔王が人類を滅ぼそうとしているからだ。だからこの世界を救うため力を貸していただけぬか?」
王様っぽい人が俺たちにそう頼み込んできた。つうか、王冠被ってるし偉そうな髭生やしてるからこの人が王様なんだろう。
そして人類滅亡の危機なんて真っ赤な嘘を何の悪びれもなく言っているのが本当に凄い。
まあ、女神が本当の事を言っているとも限らないんだけど、あの王様を信じるんだったら女神を信じるよ。
おっさんと美人、どっちを優先するって言われたら・・・ねえ?
「ちょ、ちょっと待ってください!そんな事急に言われても困ります!僕たちは元の世界ではなんの力も持たない普通の学生です!世界を救えと言われても無理です!」
そう言ったのはクラス委員長の中村隼人君だ。イケメンで成績優秀、スポーツ万能、クラスの皆だけではなく学校の先生にも信頼されている人物、と女神から貰った知識ではそうなっている。
「それについては問題ない。異世界から召喚された勇者はこの世界の一般人には到底及ばない特殊な力が備わっていると昔の見聞にある。ステータスを確認してみるといい」
「ステータス?」
王様は当然のように言っているが地球出身の俺達にはステータスというゲームのような能力を閲覧するなんてしないし、出来ない。
皆が動揺していると一人が大声をあげた。
「おおっ!?ステータスオープンって念じてみたら目の前に一覧表が出てきたぞ!?」
全員がその声が発生した場所へと向く。そこには男子生徒の葛西誠君という眼鏡をかけた少年だ。アニメ大好きなオタクでよく1人でラノベを読んでニヤニヤしている子。
「本当だ!」
「私も出てきた!」
誠君の言ってたように皆が念じて自分のステータスを確認していく。俺も確認してみよう。
名前:倉木海人
性別:男
年齢:17
種族:人間
職業:勇者
レベル:1
状態:普通
H P:100/100
Ⅿ P:40/40
攻撃力:50
防御力:30
俊敏力:120
魔攻力:20
魔防力:30
魅 力:50
通常スキル:【忍耐】
勇者スキル:【火事場の馬鹿力】
称号:【最弱勇者】
うん?基準が分からないから強いかどうか分からないぞ。
それと勇者スキルにある【火事場の馬鹿力】。あまり勇者ぽくないんだけどどういう効果なんだ?
というか称号って欄に【最弱勇者】って書いてあるんだけど・・・
「確かに今はここにいる騎士達より弱いかもしれん。じゃが、勇者の成長はこの世界の人間より遥かに上回っているという。レベルが同じになれば騎士達では相手にならないくらいお主たちは強くなるであろう。ちなみにこの国にいる騎士の平均ステータスはこうなっておる」
騎士の平均ステータス
レベル:30
H P:1500/1500
Ⅿ P:1000/1000
攻撃力:1500
防御力:1500
俊敏力:1500
魔攻力:1500
魔防力:1500
魅 力:100
レベルの差があってか騎士の人達の方がかなり強い。
でも、王様が言ってた通り俺もレベルが上がればここの騎士たちよりも強くなれるのかもしれない。
でも、【最弱勇者】の称号が気になってしょうがない。他の皆のステータスはどうなっているんだろう?
自分のステータスに頭を悩ませていると他の生徒達の話し声が聞こえた。
「俺の攻撃力は150か。こんなもんか?」
「私の魔攻力は200。でも防御力は60しかありませんわ・・・」
聞き耳を立てていたが俺はそんな声を聞いて内心焦り出す。
ま、まじかよ・・・。俺の倍以上も皆のステータスは上だってことなのか?
「ねえねえ、隼人君のステータスは?」
「ん?僕は―――」
名前:中村隼人
性別:男
年齢:17
種族:人間
職業:勇者
レベル:1
状態:普通
H P:500/500
Ⅿ P:500/500
攻撃力:400
防御力:400
俊敏力:400
魔攻力:400
魔防力:400
魅 力:200
通常スキル:【剣術】
勇者スキル:【魔武両道】
称号:【最強勇者】
なんじゃそりゃ!?
俺の数倍どころの騒ぎじゃねえぞ!?まさに勇者に相応しいステータスだ。
つか、称号がそれを表してやがる。俺と真逆の【最強勇者】という称号が輝いて見える!
隼人君のステータスを見た皆はかなり驚き、王様やその周りにいた騎士や偉そうな人達も驚いている。
「素晴らしい!レベル1でこのステータスだ!レベルが上がれば、魔王を倒すのだって夢ではない!まさに勇者となるべく生まれた者だ!その者、名前は?」
「はい!中村隼人と申します!」
「勇者ハヤト!是非ともこの世界を救って欲しい!」
「・・・分かりました。僕で良ければ、力をお貸し致します。ですが僕からもお願いがあります!」
隼人君は真っ直ぐな目で王様にそう言い放つ。凄いなこの子。初対面でかつ王様を相手に堂々としてやがる。
「なんだ?出来る限り要求に応えよう」
「一つ、戦いを望まぬ者に訓練や戦闘を強要しない事。二つ、僕達が魔王を倒すまで最低限生活に困らないように保護してくれる事。三つ、魔王を倒したら僕達を元の世界に返してくれる事。以上です」
隼人君の要求に顎を撫でながら考え込む王様。つか、隼人君って本当に高校生?元大学生の俺よりしっかりしてるんだけど・・・
「よかろう。戦いたくない者には強要しないし、最低限の保護も約束しよう。しかし、元の世界に返す事は正直な話かなり難しい」
「どうしてですか!?」
声を荒げて驚く隼人君。難しいって、そもそも返す気ないないだろ?と言いたい気持ちを押さえて話を聞くことにした。
「この召喚にはかなりの魔力が必要なのだ。それも2年もの時間を要するほどに。返す場合だとその倍はかかるやもしれん」
「そ、そんな・・・」
王様の言葉に隼人君だけではなく、周りの生徒達も表情を暗くしている。もしかしたら二度と帰れなくなるかもしれないんだ。当然の反応だろう。
逆に俺は正直、どっちでもいい。転生した俺が地球に戻ったら帰る家がありませんでした、なんてオチだったら嫌だし。
それでもこの異世界で死んだらそれまでなんだが・・・
「・・・魔王を倒せばもしかしたら可能性がある。魔王がいる魔王城には大量の魔力が封じられている。それを使えれば勇者たちを元の世界に還す送還魔法を使えるやもしれん」
「どっちにしろ。魔王を倒さなければいけないという訳か・・・」
早く帰るためにも魔王を倒さなければいけないと隼人君たちは思っているんだろう。
俺はというと、この王様エグイわ、とドン引きしていた。
落ち込む勇者たちにあからさまな希望をふらつかせて飛び付かせようなんて酷いんじゃないか?
つか、その魔力は【送還魔法】とやらにではなく戦争に使う気満々じゃねえか!そもそもその【送還魔法】って言うのも本当にあるのか怪しいもんだ。
「では勇者たちのステータスを確認したい。今から騎士達に紙を配らせるから記入するのだ。我は忙しい為、席を外す。くれぐれも見栄を張って多く書かぬようにな」
笑いながら王様は奥の扉へと行ってしまう。そして騎士たちは俺達に紙と書くもの渡していく。皆は紙に自分のステータスを書いていく。
俺もちゃんと書こう。勇者スキルがどういった効果なのか知りたいし。
ステータスを書いた俺たちは隼人君がまとめて騎士に提出した。
「勇者の皆様。色々あってお疲れでしょう。部屋を用意してありますのでご案内いたします」
「分かりました。皆、行こう」
いつの間にか隼人君が指揮をとっているが誰も気にせず、そのまま騎士と隼人君の後に着いていった。
俺も隼人君が指揮する事は特に気にはしていなかった。
この後、王様が何を仕掛けてくるのかが不安でそれどころではなかったからだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
海人や勇者たちが騎士に案内されている頃、勇者召喚を行った国『スペイーダ王国』の王様、アルベルト・スペイーダが大臣たちを集めて会議を行っていた。
「王様。あの勇者共の要求を本当に受けるのですか?」
「ふん!そんな訳なかろう。あそこで断れば何を仕出かすか分からんからそう言ったまでだ」
勇者たちには見せなかったどす黒い笑みでそう答えるアルベルト。この国は女神の言う通り私利私欲で勇者を使おうとしていた。
「王様。勇者たちのステータスでございます」
「うむ。ではこのステータスでランクを付けるのだ。より強い勇者を優遇し、弱い勇者は最悪、礎として扱え」
「はっ!!」
大臣たちはアルベルトの言う通りに作業を始める。それを眺めてアルベルトはまたどす黒い笑みを浮かべた。
「くくくっ!ボロ雑巾みたいになるまでこき使ってやるぞ、愚かな勇者共!ふっはははははははっ!!!!」
アルベルトの高笑いは海人や勇者達に届くことはなかった。




