『初依頼』
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「さあ、初依頼となるけど何やる?」
俺達は朝飯を済ませた後、すぐに冒険者ギルドへ訪れていた。
そして、様々な依頼が張り出されている掲示板の前で何の依頼を受けるかを迷っていた。
「どばーん!と稼げる討伐系がいいんじゃないか?」
「じゃが、その討伐系は今のところAランク以上のものしかないぞ?ワシとミランダはともかく、AランクよりとはいえBランクのカイトには厳しいんじゃないかのう?ここは、安全に採取系の依頼でコツコツ経験を積むべきではないか?」
対照的な案を出すミランダとエリー。両者の言い分は分かるが今回はミランダの案を採用したいと思う。
「今回は討伐系をやろう。俺達は互いの実力をちゃんと理解出来ていないようだからね。それを理解する為に力を見せ合おう」
「それは構わんが・・・」
「安心しろよ、エリー。カイトは俺より強え」
ミランダは笑顔でそういうがギルドで測定した結果を信じているエリーは疑いの表情を見せている。
ステータスを見せればすぐなのだが、今は【偽装】でステータスを弄ってるから見せても意味はないだろう。
だから、戦闘を見てもらう事で理解してもらおうって訳だ。
元に戻して見せるのも良いんだけど、あれって設定するの面倒なんだよね。
「では、この『新ダンジョンの情報収集』なんてどうじゃ?」
「情報収集?ボスの討伐じゃなくて?」
「うむ。カイトよ、ボスの討伐などAランクの冒険者が10人は集まらんと達成できんほど難しい依頼じゃぞ?Aランク2人とBランク1人じゃ到底不可能なのじゃ」
さすがは元々冒険者だったエリー。その辺の事情はちゃんと理解できているようだ。
つか、帝国が勇者達をダンジョンに潜らせたのってかなり無謀だったんじゃないか?
帝国一のミランダ級が10人以上いないと倒せないって明らかに戦力不足だろ。
「じゃから、この依頼ではボス討伐はせずにそのボス部屋までの道のり、罠や出現する魔物の種類を明確にし情報を提供するのが仕事じゃ」
「カイトがいれば討伐も余裕だと思うんだが、まあ、今回はいいか。暴れられれば俺は問題ないぜ?」
「それじゃあ、それを受けよう。この紙を受付に渡せばいいの?」
「そうじゃ」
俺は新ダンジョンの情報収集の依頼書を持って受付に提出する。
「新ダンジョンの情報収集の依頼ですね?これは既に複数のパーティーが依頼を受けています。情報提供の順番、重要性でお支払される金額が変わりますがよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。確認ですが提供した情報がすべて被ってた場合は依頼失敗になるんですか?」
「それは大丈夫です。情報が被るという事はその情報の信憑性が高まるので問題ありません。しかし、最初に提供した人よりも支払金額は減ってしまいます」
確かに提供した誰かが嘘を吐いている可能性もあるから被っていた方が信頼できる優先もんね。
「分かりました。ありがとうございます」
「いえいえ、無事のご帰還をお祈りしております」
俺は依頼を受理して2人の元へと戻る。
すると、何故か2人は言い争いをしていた
「だから、それは金の無駄使いだから必要ないって!」
「何を言っておる!必要不可欠じゃろ!」
「どうしたのさ、2人とも?」
「おっ、戻ってきたな」
2人が揃って俺の方を向くと言い争いをしていた理由をミランダが説明してくれた
「ダンジョンはここから馬車で1時間かかるらしいんだけど俺は必要ないって言ってるのにエリーが必要だって」
「必要じゃろ!歩いて行ったら3時間はかかるのじゃぞ!」
普通に考えたら馬車を借りるべきなんだろうけど、どうしてミランダが必要ないって言っているのか俺には分かった。
「ミランダ。俺が言うのもなんだけどあんな目にあってまだ乗りたいの?」
「まあ、馬車より速いし使わない訳にはいかねえだろ?」
「な、なんじゃ?何を言っているのじゃ?」
話に置いてけぼりのエリーは困惑しているが説明するより見せた方が早いだろう。
馬車よりも速い超特急カイト号の実力をね!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「で、ここが新ダンジョンだね」
俺達は洞穴のような見た目の入口に立っている訳だけど、ここが最近できたダンジョンらしい。
「おう。つか、見事に馬車より30分早く着いたな」
「な、なんであんなに速く走れるのじゃ?ワシとミランダを抱えているのに普通の馬よりも速く、そして息一つ乱しておらんなどカイトはどんな身体をしておるんじゃ・・・」
俺がここまでくる間の事を振り返っているのかブツブツ独り言を呟いていた。
どうやら超特急カイト号はお気に召さなかったようだ。
「こんな事で一々気にしていたんじゃ身が持たないぜ、エリー」
「むう・・・。さすがはURの腕輪を装備しているって事で納得しておくのじゃ」
「んじゃ、早速ダンジョンに行こうぜ」
確かに腕輪のおかげではある。俺は特に何も言わず、ダンジョンへと潜り込んだ。
「おらあっ!!」
『ピギッ!?』
「ふむ。事前の情報通り地下1階は『ビッグマウス』や『コボルト』がメインで出現するようじゃな。罠も特にないし、地図もちゃんとその通りになっておる。問題はないのじゃ」
「了解。次は地下2階に行こう。役割も変更で、エリーがアタッカーでミランダはサポート。俺が記録係をする」
「分かった!」
「了解なのじゃ!」
順調に進んでいく俺達はまだあまり調査が行き渡っていない地下2階へと突入する。
「【アースバインド】!からの【アースジャベリン】!」
『ガアアアア!?』
「トドメじゃ!!」
エリーは武器である杖でオークの頭を貫いた。
拘束系土魔法【アースバインド】で足を拘束し、貫通性攻撃の土魔法【アースジャベリン】で上半身の動きを鈍らせ、その間に杖術でトドメを刺すのが彼女の戦い方のようだ。
魔法と杖術による臨機応変の戦い方には年期を感じられる。
「なんか失礼な事を考えんかったか?」
「気のせいです」
ミランダのサポートは全く必要なく、この階層は順調に調べられそうだ。
「エリーもカイト程じゃねえが強いじゃねえか。勝負ねえか?」
「それはまた今度なのじゃ」
「ミランダ。今は依頼に集中してなさい」
この戦闘狂はいつかどうにかしないと駄目だね。
そして、地下2階も調べ終わり地下3階を調べる事となった。
「次は俺がアタッカーで、エリーがサポート、ミランダが記録係だ」
「分かった」
「うむ・・・カイト、無理はしないようにの?」
どうも俺の力を信じきれないエリーが心配の声をかけてくれる。
「大丈夫だって!カイトの心配なんてするだけ無駄だぜ?寧ろダンジョンが崩壊しないかを心配すべきだぜ」
「流石にそこまで力は・・・あるのかな?」
「なんか不安になってきたのじゃ・・・」
俺が先頭に立ち、地下3階の調査探索を開始した。
数十分後―――
「ここが最後の部屋?」
「そうだ。特に危ないもんとかなかったな」
「だよね。ちょっと拍子抜けしちゃったよ」
「いやいや!ちょっと待つのじゃ!」
地下3階の調査を開始して数十分、俺とミランダが最後の部屋の前で談笑していたらエリーが怒鳴ってきた。
「どうしたの?」
「どうしたの?じゃないじゃろ!ミランダ、この階層で起こった内容を読み上げてみるのじゃ!」
「ん?まあ、いいけど・・・。えっと、まず魔物は『ゴーレム』と『ガーゴイル』が出てきた」
「うむ。Aランクの冒険者でも苦労する岩並に堅い防御力と魔防力を備えた魔物がカイトの手刀で真っ二つにしておったのう」
「罠は、『電気床』や『毒矢』、『モンスターハウス』なんてのもあった」
「カイトが即死級の電気床を歩いても『うわっ!びっくりした!』と飛び跳ねてびっくりするだけだったり、猛毒の矢を喰らっても『ペロッ、これは・・・青酸カリ!』と意味の分からん事を抜かし、モンスターハウスでは出てきた魔物を目にも留まらぬ早さで瞬殺じゃった」
「えっと・・・どこかおかしかった?」
「おかしい所だらけじゃろ!?」
「ですよねー」
エリーは頭を抱えながら叫ぶ。まあ、俺もやっといてなんだけどありえないよね。
まじ、【勇者スキル】が最強だわ!
「どうなっとるんじゃ、カイトは!たとえSランク冒険者だろうとカイトみたいな事はできんぞ!」
「カイト。やっぱりステータスを見せた方が早いんじゃねえか?」
そうだよね。俺もそう思ってた。
なので、俺は偽装スキルを解除してエリーに俺のステータスを見せた
名前:倉木海人
性別:男
種族:人間
職業:勇者
レベル:35
状態:勇者スキル発動中+LFB効果発動中
H P:1/1
Ⅿ P:60000/60000
攻撃力:160000
防御力:210000
俊敏力:210000
魔攻力:70000
魔防力:210000
魅 力:2000
通常スキル:【忍耐】、【脱兎】、【器用】、【節約】、【防御魔法中級】、【補助魔法中級】、【偽装】、【鑑定】、【全ダメージ無効(勇者スキル発動時のみ)】、【全状態異常無効(勇者スキル発動時のみ)】
勇者スキル:【火事場の馬鹿力】
称号:【人類最強】、【呪われた勇者】、【努力の才能】、【奇跡を起こす者】、【ドラゴンを倒し者】、【災い転じて福となる】
「な、なななななな・・・」
俺のステータスを見て驚愕しているエリー。しばらくして、一度息を吐き自分を落ち着かせた。
「色々と聞きたい事が沢山があるが・・・ミランダがすべて諦めたように眺めていたのはそういう事だったのじゃな。ならば、ワシもそうする事にしよう。カイトは化け物だから何を起こそうとも不思議ではないと・・・」
その解釈は納得できない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おはようございます!」
冒険者ギルドで受付嬢をしている『アリシア・エルミタージュ』は朝が早い。
仕事の準備を冒険者が来ないであろう時間帯の間に済ませ、完璧な対応をするのが彼女の良さであった。
もうすぐ準備が終わる時に、冒険者にしては若い青年に元気よく挨拶をされた。
アリシアは驚きはしたものの、慌てず笑顔で対応する。
「はい。おはようございます。今日はどうなさいましたか?」
「すみません。昨日、受けた依頼なんですけど・・・」
アリシアは申し訳なさそうにして口ごもる青年を見て思い出す。
その青年は一昨日、冒険者登録して、昨日の朝に新ダンジョンの情報収集の依頼を受けたカイト・クラキである事を。
彼の様子を見てアリシアは依頼が達成出来ずどうにかして欲しいとお願いしてきたのではないかと思った。
Bランクの彼がAランクの依頼を受けて不安だったのだが見た感じ大した怪我はなさそうでアリシアは安心した。
初めての依頼だ。失敗しても仕方ない。アリシアはせめて助言をして上げる事にした
「カイト・クラキさんですよね?昨日も言いましたが情報は被っていても依頼は失敗になりません。最悪は嘘の情報でも今なら目を瞑りますよ?」
アリシアは最後の方は小さな声で彼にそう言ってあげる。普通は罰金なのだが彼女はそういう面では甘く、特に新人には優しく接している。
「いえ、そうではなくて・・・これなんですが・・・」
「?」
様子のおかしいカイトに頭を傾げるアリシア。すると、カイトは頭を掻き、気まずそうな表情をしながらあるものをアリシアの前に取り出し見せた。
「これは新ダンジョンの記録帳ですね・・・・・・・・・っ!?」
「・・・・・・」
アリシアはその記録帳を読んでいく。それは丁寧なもので詳細も事細かに書かれている。
確かに被っている情報もあるが十分に依頼達成と言える。
そして、記録帳のページを一枚また一枚と捲る度にアリシアの表情は曇っていく。
何故ならカイト地下1階だけでなく地下2階、3階とまだ誰も潜っていない情報までも書かれていた。
そして最後のページを捲ったアリシアはかけている眼鏡を危うく落としてしまいそうになるほど驚いた。
その内容とは―――
ダンジョンボス:『スケルトンキング』
ダンジョン報酬:【ホーンブレイド】
ダンジョンボスの記載。それどころかその報酬まで書かれている。
それが何を意味しているのかアリシアは理解出来るも信じられないでいた。
そんなアリシアの様子にカイトはカウンターにあるものを置いた。
それは骨で出来た巨大な剣。まさに記録帳に書かれていたダンジョン報酬の【ホーンブレイド】だった。
そして、すぐにカイトは頭を下げてこう言った。
「すみません!情報収集の筈が間違えてボスを倒してきちゃいました!」
そんな言葉に呆気に取られたアリシアの気持ちを表すかのように、ずれていたアリシアの眼鏡が落ちるのであった。
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