『夢から現実へ』
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「えー、では俺達のパーティー結成を祝って乾杯の言葉を―――」
「頂きまーす!」
「なのじゃー!」
「聞けよ!!」
冒険者ギルドを出た俺達はエリーお勧めの飲み屋さんに来ている。
そして今、俺が乾杯をする前にミランダとエリーはテーブルに並べられた料理とお酒を食べ始める。
「んぐんぐ、いいじゃねえか!堅苦しい挨拶なんか俺達らしくねえって!楽しくいこうじゃねえか!」
「もぐもぐ、そうじゃそうじゃ!」
「まったく・・・それじゃあ、食って飲んで楽しむぞ!!」
「「おおー!!」」
俺達は楽しく料理と飲み物を食べ始める。ちなみにこの世界に未成年の飲酒に対する規制はない。
だから、俺と同い年のミランダはお酒をぐびぐび飲んでいる。でも俺は身体に悪いアルコールはちゃんと大人に20歳になるまで飲まないと決めているので絶対に飲まない。
だから、果実水という甘い飲み物を飲んでいる。2人から酒を勧められるが―――
「俺が飲むより2人が飲んだ方が良いよ!ほらほら飲んだ飲んだ!」
「「うぐぐっ!?」」
みたいな感じで無理矢理飲まされそうになったとしても俺のステータスをフル活動による反撃でそれを防いでいく
「ああ・・・。久しぶりにこんなに飯を食ったよ」
帝国ではパン1個と水だけだったしな。メイちゃんから差し入れとかもらってたけどそれでもこんなに食べたのは前世でもなかったよ
そういえば、帝国は俺とミランダの事をどう捉えているんだ?ダンジョンが消滅したから死亡扱いにされたかな?
帝国には全く未練はないけど、鎧さんやメイちゃんにお別れを言えなかったのは辛いな
そしてクラスメイトの何人かとは仲良くなったのに残念だよ
「おいおい、カイト。何しけた面してやがんだ!もっと楽しもうぜ!」
「・・・おう!」
せっかくの祝い事だ。そういうのは後で考えよう。
俺は並べられている料理に手を伸ばす。
それから数十分が経過したんだが―――
「えへへ~!カ~イ~ト!ヒック!」
「しくしく、しくしく・・・カイトー・・・ヒック」
「・・・・・・」
とりあえず状況を説明したいと思う。
俺達は楽しく1台のテーブルを囲うように座っていたのだが、ミランダとエリーは俺の隣に移動してきた。
すると、ミランダは緩んだ笑顔に甘えるような声で俺の腕に抱き付いてくる。
エリーは、いきなり泣き出してミランダと同じように抱き付いてきた。
「酒臭い・・・」
こいつら完全に酔っ払ってるな?
ミランダは甘え上戸で、エリーは泣き上戸か・・・
「2人とも取合えず離れてくれ。動けない」
「嫌っ!」
「なのじゃ!」
ますます俺の腕を掴む力が上がっている。一応言っとくがかなり痛い。みしみしと鳴ってはいけない音が俺の腕から聞こえてくる。
ふと、ミランダは俺の腕から手を放して変わらない満面の笑みで話し出した。
「なあなあ、カイト!頭撫でて!」
「ん?ああ、良いよ?」
「えへへ!気持ちいい~」
いつもは男勝りで言動も男みたいなミランダが正反対な女の子の反応見せてくる。なんだろう?かなりグッとくるものがある。
「カイト!私ね、カイトには感謝してるんだ!」
「私?感謝?」
ミランダが俺に感謝?つか、一人称まで変わってるんだけど・・・
「うん!私の夢はドラゴンのトラウマを克服だけど、それ以外にもに叶えたい夢があったんだ!それをカイトが叶えてくれたの!」
トラウマが出来る以前の夢?
まあ、ミランダの事だし、ドラゴンを倒す!とかそんなところだろ?
「私の事をちゃんと見てくれるお友達が出来る事!」
可愛い!ミランダ!可愛い!!
・・・おっといけない、思いがけない内容につい取り乱してしまった。
「私ね。子供の頃から同い年の子よりも大きくて、よく仲間はずれにされてたの。誰にも相手にされないで1人になった私はお母さんお父さんと一緒に稽古を受ける事しかしなかった」
オーガと人間のハーフであるミランダにそんな辛い過去があったんだ・・・
「そして、強くなったけど友達が出来る事はなかった。帝国の兵士になっても私を見る目は変わらない。デカくて怖い強い奴としか見られなかった。でも、カイトは違うの!私と話しても対等に向かってくれる!カイトとなら言い争いできるし、喧嘩も出来る!私はそういうお友達が欲しかったの!」
確かに、俺はミランダと言い争いもするし、喧嘩だって必要とあらばする。
ミランダは誰でもしている事が出来ずに今日まで生きてたんだ。
「そっか。良かったな」
「うん!それでね!お母さんがね!もし、そんな友達が出来たらその人をもう一つの夢の相手にしなさいって!」
ミランダはいくつも夢を持ってて凄いな。俺もそんな夢を持つ子供でありたかった
「もう1つの夢ってなんなんだ?」
「・・・笑わない?」
さっきまで笑顔だったミランダが顔を真っ赤にしてそう言ってくる。俺の腰へと抱き付いているから上目遣いになっていてまた不覚にもドキッと心を震わせた
「もちろん、絶対に笑わない」
「聞いても私を嫌いにならない?」
「ならない」
「私の側から居なくならない?」
「ならない」
相当不安なのだろう。何度も俺に確認してくるミランダ。俺は安心させる為、頭を撫でながら答えていく。
ミランダは、気持ちがいいのか目を細めて不安な表情が消え、和やかな表情へと変わる。
「あの、ね?わ、たしの、夢は、お・・・」
「ミランダ?」
「すー、すー」
ミランダが急に黙り込んだかと思ったらどうやら眠ってしまったようだ。あんなに酒を飲んだんだ。当然と言える
「エリー。ミランダが寝ちゃったから今日はここでお開きに―――」
「嫌じゃ~!まだ飲むのじゃ!」
エリーは泣きながら1リットルはあるお酒の瓶をラッパ飲みし始める。
これは流石にやばい。俺はすぐにそのお酒を没収した。
「何をするのじゃ!返すのじゃ!」
「ダメ。もう終わり!飲む前に話した通り、エリーの家に行って今日は休む!」
駄々をこねるエリーに俺は厳しくそう言うがそれでも抵抗される。
「嫌じゃ!嫌じゃ!帰ったら夢から醒めてしまう!そんなの嫌じゃ!!」
夢?一体何の事を言っているんだ?
「もう気づいておる!これはワシの夢の中じゃって事を!!このままワシのベッドに戻って眠ったらこの夢から醒めてしまう!この夢はワシが望んできた夢。ずっと味わっていたいのじゃ!」
エリーは泣きながらそう言ってくる。言っている事はとんでもなくぶっ飛んでいる。でも、彼女は本気でそう言っていると、その目と涙が証明していた。
「ワシはレア装備を探す為に冒険者になった。じゃが、ワシと一緒にパーティーを組んでくれる人はおらんかった。それは何故か?レア装備は誰もが欲するものじゃったから。ワシが初めて一緒にしたパーティーにレア装備の図鑑を作成する夢を話したらどうねじ曲がったか、ワシがどんな手を使おうともレア装備を手に入れる恐ろしい奴となっておった」
「・・・・・・」
だからパーティーに入る事を承諾した時、あんな反応をしてきたのか。
「その後は地獄じゃった。どのパーティーにも入れて貰えんかったし、たまに見るレア装備を持った冒険者に親の仇のように怖い目で見られた。ワシは1人で頑張ってきたが、結局逃げるように冒険者を休業し店を建てた」
俺は何も答えずただ黙ってエリーの話を聞いていく。
「カイトとミランダがワシをパーティーに、仲間にしてくれた時、嬉しかった。でも、これは夢じゃと思ったのじゃ。こんな都合の良い事が起きる筈がないとの・・・」
「・・・エリー。これは夢じゃない、って言っても信じて貰えないだろう。どうすれば信じてくれる?」
「・・・約束するのじゃ。絶対にワシの前から居なくならないと・・・」
もうエリーの涙は止まっていた。しかし、その目はかなり真っ赤になっていてまるでウサギみたいだった。
エリーの言葉からウサギは寂しいと死んでしまうという話を思い出してしまいつい笑ってしまう。
「約束する。絶対にエリーの前から居なくならない」
「そうか・・・。では帰るとしようかのう・・・」
「ああ・・・」
エリーと俺は眠ったミランダを連れてエリーの自宅へと帰った。
その間の俺とエリーは一言も話さず、ミランダの健やかな寝息しか聞こえなかった。
「へえ、ベッドかなり大きいの使ってんだな」
「うむ・・・」
到着した俺達はミランダを降ろす為、寝室に来ていたが、そのベッドの大きさと広さに俺は普通に驚いていた
エリーの奴、飲んでいる時と全くの別人のように元気なくしやがって・・・
「俺はどこで寝ればいい?最悪床でも構わないが?」
「何を言っとる。ここで寝ればよかろう」
エリーもミランダと同じようにベッドへ座り、そのベッドをぽんぽんと叩いている。この酔っ払いは何言ってやがんだ?
「悪いけど断る。俺は別の部屋で適当に寝るよ」
「・・・・・・約束を破るのか?」
俺はエリーの言葉に部屋から出ようと進めていた足を止めた。振り向くと悲しそうな表情で俺を見つめている。
エリーめ、卑怯な真似を・・・
「・・・分かった。分かりましたよ」
「うむうむ。では早く来るのじゃ」
ゴロンと寝転がるエリー。俺は渋々ベッドの目の前に来たが、問題はどこに寝るかだ。
何故かエリーとミランダの間に人間一人が十分には入れるスペースが空いているのは気のせいだと思いたい
「・・・・・・」
「・・・・・・」
チラッと横目でエリーを見るが、エリーは早くしろと言いたげな目で俺を見ている。覚悟を決めるしかないか。
どうせ、こんな事今日で最後になるのだから
「手を握るのじゃ」
「はいはい」
「・・・頭を撫でるのじゃ」
「はいはい」
「・・・・・・約束を破る出ないぞ」
「はいはい」
俺は何度も話しかけてくるエリーに適当に返事をしていく。流石のエリーも眠気には勝てないのだろう。瞼がどんどん閉ざされていく
「・・・おやすみ。また、明日」
「おう。おやすみ。明日は依頼を受けて皆で頑張ろうな」
最後の言葉だけ、俺は真剣に答えた。
その答えに満足したのかエリーは笑顔で瞼を閉じ、本当の夢の世界へ旅たった。
その夢から醒めた時、夢だった光景はちゃんと現実のものだと信じてくれるだろう。俺はそう思いながら目を閉じて眠るのであった。
「あの・・・ミランダさん?」
「・・・・・・」
翌朝、俺は腕を組んで仁王立ちしているミランダに正座していた。
何があったかと言うと、目が覚めた俺の両脇には眠るミランダとエリー
ああ、なんだろう。両脇に女の子とか俺どんだけリア充なんだ
でも、俺はその後ある事に気付いた。2人は泥酔状態だった。ミランダに関しては途中で潰れてしまった。
俺と同じベッドにどうして寝ているのか分かる訳がない
俺はどうにか抜け出そうとするも2人に腕を掴まれて脱出不可能。
目が覚めたミランダが俺と目が合う。そして、今がどのような状態なのか理解した瞬間だった。
「俺になにしやがった!この変態!!」
「ご、誤解―――ぐぼげらっ!?」
顔を真っ赤にしたミランダに拳で殴られて宙を舞った。リア充から転落した瞬間である。
宙を舞い、回転しながら落ちていく最中、エリーが幸せそうな顔をして俺達を見ているのを見て俺は再びベッドへと頭を突っ込む羽目になったのであった。
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