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『ダンジョン喪失後』

連日投稿継続中です!

「勇者ランクC級11位『倉木海人』とその護衛をしていた『ミランダ・ビュフベルト』は死亡と判断した」

「・・・えっ?」


国王様が臣下や騎士、召喚された勇者達全員を呼び、そう宣言された。

それを聞いた私は身体が硬直してしまい、その言葉を信じられなかった。


私の名前はメイシクル・アルホント。

スペイーダ帝国のお城でメイドをやっています。

と言っても病気で寝込んでいるお母さんの代わりとして一時的に働いているのですが・・・


最初はドジばっかりで迷惑ばかりかけてましたけど、慣れて今では1人で任せてもらえる仕事が多くなりました。


そんなある時に勇者召喚と呼ばれる儀式が行われ、31人の勇者様が私達の前に姿を現しました。


何が目的で召喚されたのか知らされませんでしたが、私を含めたメイド達は勇者様達の身の回りのお世話をする事になりました。


勇者様達のお世話を始めて数日。先輩のメイドさん達は休憩時間の時、集まってお話をしているですが、勇者様達のお話ばかりでした。


「勇者っていうから期待してたのに格好いい男いなくない?」

「だよね?子供だし、少し話しかければ興奮してメイド服をじろじろ見てなんか怖いし!」

「女も我が儘ばっかりだし、メイド使いが荒いのよね。化粧の手伝いとか、夜呼び出して軽食を準備させたり!」


出てくるのは勇者様達の愚痴ばかり、私はまだ関わった事がない為どのように判断すべきか迷っていた。


そしてまた数日が経って―――


「聞いた?A級の勇者がメイドを襲おうとしたらしいわよ?性的に」

「マジ!?あり得ない!その子は大丈夫だったの?」

「なんとか処女は守ったけど、胸やお尻を触られたって!でもその勇者は少し注意されただけでお咎めなし」

「勇者だからって何でもやっていいと思ってるのかしら?」


どうやら酷い勇者様もいるみたいです。でも私は大丈夫です。13歳で勇者様達より子供なので興味ないでしょうから


「メイちゃん。貴女も気を付けなさいよ?」


えっ?


「そうよ?貴女、歳の割には出るとこ出てるし。さっき話出た子は近くに兵士がいたから大丈夫だったけど誰もいない所で勇者に襲われたら抵抗出来ないわ」

「男の守備範囲は広いって言うし、メイちゃんも十分に可能性あるわ。気を付けてね?」


そんな話もあって私は一層気を引き締めて仕事を行いました。でも、先輩方の配慮のおかげで勇者様達と会わないよう仕事を振って下さいました。


でも、そんなある日。夜遅い時間に食堂で食器を洗っている時でした。1人の勇者様が食堂に訪れたのです。


「こ、こんばんわ・・・。勇者ランクC級11位のカイトです・・・。ご飯を頂けないでしょうか?」

「は、ははははい!わ、分かりました!」


私はすぐに食事の準備に取り掛かりました。あの勇者様はかなりボロボロの格好をしていました。

時々、見かける勇者様はもっと生き生きとしていたのですがこの方はどうしたのでしょうか?


「お、お待たせ致しました!」

「ありがとう・・・ねえ、君あまり見かけないけどよくこの時間に働いているの?」


勇者様が私に話しかけてきました。私はかなり驚きながらもすぐに返事をしました。


「は、はい!そうです!」

「そっか。こんな夜遅くに偉いね。頑張って」

「あ、ありがとうございます!」


勇者様はふらふらと遠くのテーブルまで行ってしまいました。

私が先輩方の話を聞いた勇者の人とは違う印象の御方でした。


よくよく考えれば勇者様全員がそんな酷い事をする訳ありませんよね?


確かあの方はC級11位の勇者様。

私はお偉い様からの指示で勇者ランクごとの指定されたお食事を渡したのですが、パン1個にお水だけでした。

ランクで対応が違うと伺ってはいましたが流石にあれでは可哀想です。厳しい訓練にこれでは身体を壊してしまいます。


「・・・よしっ!」


私は賄いのスープを勇者様にご馳走しようとスープを並々入れた皿を御盆に乗せて向かいました。


私がスープをお運びしている時、ふと勇者様の姿を見ると、目を瞑りながらパンを食べています。

恐らく、日々の訓練でかなりお眠いのでしょう。それでも食事をとっているのは少しでも食べないといけないのを理解しているから。


実は私、勇者様に憧れてたんです。困っている人達を救い、悪を滅ぼして世界を平和に導く存在。って、昔お母さんに読んでもらったご本に書かれてて、それはどんな人なんだろうとよく考えてました。


あの勇者様はこの世界を平和にする為頑張っています。私はすぐにでもスープをお届けしようと足を速めようとしたその時でした。


「あっ!?」


私は何もない所で足をつまずかせてしまい転んでしまいます。しかし、問題はそこではありません。


私の手には『何も乗っていない』御盆。それは何を意味するのか。視線を御盆から前方に移す事ですぐに理解しました。


「・・・・・・」

「あ、ああ、あああ・・・!?」


スープが入っていたお皿が勇者様の頭の上にありました。そして髪や服がスープによって濡れ、具材が勇者様のお膝の上や地面に拡散していました。


その光景に私は血の気が一気になくなるのを感じました。そして、その後に頭をよぎったのはメイドの先輩方がしていた勇者様の愚痴。


『この前、花に水を上げてた○○○さんが誤って男の勇者の服に少し水をかけちゃっただけで、頬を叩かれたらしいわよ?訓練でイライラしてたみたいで凄い形相だったって言ってたわ』

『知ってる!しかも、叩かれて倒れたその子を剣で斬ろうとしたらしいわ!他の勇者に止められて事無きを得たとか』


ドジをして、勇者様に頭からスープをかけてしまった私の末路が私の身体を恐怖で震わせる。

今は私と勇者様しかいない食堂。私は勇者様に襲われて、最後には殺されてしまう。そんな末路が私の頭の中を一杯にした。


「ご、ごめ、ごめん、なさい・・・」

「・・・・・・」


震えるからだから振り絞るように謝罪の言葉を出すけども、勇者様は席から立ち上がって私の方へと歩いてきます。


怯えながら私は勇者様の顔を見ようとしましたが未だ頭の上にあるお皿の陰で表情が確認できません。


「・・・・・・」

「ひっ!?」


そして、勇者様は私の前で片膝を付き、両手を私の両肩に置きました。私は恐怖で小さな悲鳴を出し、勇者様はこう言いました。


「大丈夫?」

「・・・・・・えっ?」

「どこか怪我した?痛い所はない?」


勇者様は私の身体をじろじろと見回します。でもその視線は厭らしいものではありません。

私の事を心配しての行動だと、真剣な眼差しを見て理解できました。


「メイドちゃん?」

「は、はい!?怪我も痛い所もございません!!」


私はすぐに立ち上がって返事をする。勇者様も立ち上がり、私の姿を見て優しい顔で笑ってくれました。


「良かった。怪我して動けないのかと思ったよ」

「え!?その、あの・・・」


襲われると思って震えてました、とは言えない私。どうすればいいかと頭を悩ませていると勇者様から話しかけてくれます。


「申し訳ないんだけど、何か拭くものをもらえないかな?流石にこのままじゃ風邪ひいちゃう」

「は、はい!ただちに!!」


私は急いで拭きものをキッチンから持ち出して勇者様のところへ行くと、勇者様は落ちた具材を皿の中に入れてお掃除をしてくれてました。


「も、申し訳ありません!?本来ならば私がやらないといけませんのに・・・」

「気にしないで。あっ、拭きものありがとう」

「あっ、ま、待って下さい!」


勇者様が私が持ってきた拭きものを取ろうと手を伸ばしますが、私はそれを止めました。ご迷惑しかかけていません。このままではいけないと思ったからです。


「わ、私がお拭きいたします!」

「え?でも・・・分かった。お願いするよ」

「は、はい!」


私の思いを優先して頂き、勇者様は椅子に座りました。私はすぐに濡れた髪と服を一生懸命に拭きました。


「ありがとう。助かったよ」

「そんな・・・お礼なんて・・・」


勇者様は笑顔でお礼を言ってくれますが、スープの臭いが残っています。私を気遣ってのご配慮なのでしょう。なんてお優しい御方。


「それでこのスープは?自分の賄い?俺のせいでダメにしちゃったかな?」


勇者様は何一つ悪いことなどないのに、申し訳なさそうに私を見ます。私は正直に事の顛末を話した。


「違います!これは、訓練でお疲れである勇者様にと思って用意させて頂いたのですが、私がドジをして、転んで、勇者様に・・・本当に申し訳ありません!」


私は頭を下げて謝りました。さっきから優しいお言葉しか頂いていない私はお叱りの言葉を聞きたかった。

最悪は殴られたっていいそう思うほど、この勇者様に負担をかけてしまう事が嫌だと感じたのです。


「そっか・・・ありがとう」

「え?」

「俺の為にスープをご馳走しようとしてくれるなんて君は優しいね。その気持ちだけでとても嬉しいよ」

「で、ですが私は勇者様にあんな粗相をしてしまいました!」

「誰にだってドジする事もあるよ。気にしないで」


ああ・・・なんてお優しい御方。私がした事を全て許してくれる。この御方こそ本当の勇者様なのかもしれない。


「それでは私の気がすみません!どうか私に罰を!罰を下さい!」


私だけ優しくされるなんて不公平です。この勇者様の負担を少しでも減らしてあげたい


「うーん・・・。それじゃあ一つ良いかな?」

「は、はい!なんなりとお申し付けください!」

「このスープを頂けないかな?」

「えっ?」

「このスープ少し口の中に入ったんだけどとても美味しくてね。食べてみたいんだ。ダメかな?」


私に笑顔を向けてくれる勇者様。直感で本気でそう言っているのだと理解した。私を気遣ってではなく、それを罰として言っているのだ。

そんな事、罰にすらならないのに。私は思わず笑ってしまいました。


「喜んで!今すぐにお持ちいたします!」


この勇者様、いえカイト様は頭の中はお花畑みたいに綺麗なのだろう。少し失礼に思われるかもしれないけど的を得ていると思います。


私は、カイト様に少しでもお返しをしようと思います。返せるのは小さな事だけど、カイト様は大変喜んで頂けるでしょう。

それが私にできるカイト様が立派な勇者様になる為のお手伝いだから。


それから、私はカイト様の身の回りのお世話役を買って出ました。


寝泊りしている場所は馬小屋でしたので、する事はありませんでしたが、食事時にお菓子を差し入れしたり、訓練の最中に拭きものとお水を差し上げたり、ランクの関係でお風呂に入る事が出来ないので水でお体を拭くのですがそれをお手伝いしたりしました。


お体を拭くときはお背中だけしかさせてもらえなかったのは残念でしたが、ありがとうとお礼を言ってくれるので私は満足でした。


お母さんが復帰しても私はここで働かせて頂けるようにお願いするつもりです。

カイト様が本物の勇者様になる日を見届けたいから。

もし駄目でもカイト様直属の召使いとしてお傍に居させてもらえるようにカイト様にお願いするつもりです。

カイト様なら渋々了承して頂けるはずです。断られても私は陰ながらカイト様を見届けるでしょう。


私はカイト様の召使いとなった姿を思い浮かべながら毎日を過ごしてきました。


そんな時に国王様からのお言葉。


「・・・カイト様が死んだ?」


あの勇者様となるべき御方が・・・死んだ?


あの笑顔どころか御姿を見る事がもう二度とないって事なの・・・?


ありえない・・・


ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない


私の頭の中がどんどん真っ暗になっていく。その目から涙が一滴も流れない程、私の身体は絶望に支配されていく・・・


他の勇者様の中で何人か悲しんでいる人の姿もあった。

でも、それ以上に無関心な人や笑っている人が多かった。


なんで笑っているの?貴方達はカイト様と同じ世界で一緒にいた人なのでしょ?


その笑っている顔が歪んで見える。あんな奴、勇者じゃない。勇者と名乗っているだけの屑だ。


消してやる


勇者で笑っていいのはカイト様だけだ。

屑は処分しないといけない。



消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる消してやる



「ヤメロ」

「はっ!?」


私は頭に響く高い声で呼び止められた。護身用小刀を手にする腕を掴まれながら。


「貴方は・・・」


私を止めたのはお昼の食事でカイト様とよく一緒にいる鎧さんでした。


「カイト、生キテイル」

「・・・えっ?」


よく考えてみれば鎧さんの声を初めて聞きました。カイト様と会話している時も手話でしたからてっきり話せないものなのかと思ってました。


「コレヲ」


鎧さんが見せてきたのはペンダント。これはカイト様がダンジョンに行く直前に渡していたものです。


「コレハSRスーパーレア武器【4種の武器フォース・アーツ】。ペンダントハ仮ノ姿デ剣・槍・弓・鎌ヘト姿ヲ変エル事ガ出来ル」


「す、SRスーパーレア!?」


帝国でも所持していないSRスーパーレアの武器をなんで鎧さんが!?


「ソシテ、【4種の武器フォース・アーツ】ノ特性『分離』デ4種ノ内、1ツヲカイトニ渡シタ。ソレヲ装備シタ者ガ死ンダ場合、ペンダントハ消エ、メイン武器デアル剣ヲ所持シタ者ニ帰ッテクル。私ガカイトニ渡シタノハ鎌ダ」

「っ!?」


鎧さんが言いたい事が理解できました。

今、私に見せてくれているペンダントに描かれているのは剣・槍・弓の『3』種類。もし鎧さんの言っていることが本当ならカイト様が死んでいればその絵に鎌が追加されているはずです。


「カイト様は生きている?」


私はそう呟くと鎧さんは首を縦に振って肯定してくれます。私はさっきまで絶望で頭が一杯だったのに希望で一気に晴れやかになりました。


「君ニ弓ヲ預ケル。【4種の武器フォース・アーツ】ハ互イニ引き寄セ合ウカラ鎌ガドコニアルカヲ教エテクレル。会イタイナラ使ウトイイ」

「い、良いのですか?こんな貴重なものを・・・」

「大丈夫。2人ガ死ンデモ剣ヲ持ッテルカラ勝手ニ戻ッテクル」


嫌な言い方ですが確かにその通りです。でも、鎧さんもカイト様とはかなり親しくお話をしていました。


「鎧さんは探しに行かないのですか?」

「残念ダガ私ニハヤル事ガアル。デモ、カイトガ心配ナノハ君ト同ジ。ダカラ代ワリニお願イシタイ」


少ししゅんとした感じになる鎧さん。なんとなくだけど悔しい気持ちが感じられる


「分かりました!お任せ下さい!」

「アリガトウ。君ニトッテ大事ナ存在デアルト同時ニ私ニトッテモ大事ナ存在ナノダカラ・・・」

「えっ・・・それはどういう―――あれ?」


鎧さんが意味深な言葉を言ってたので真意を聞こうとしたらいなくなってました。先ほどまで私の目の前にいた筈なのに。


ですが、弓の絵柄のペンダントはしっかりと私の手の中にあります。私はカイト様を探しに行くべく行動を開始します。



この世界、唯一無二の勇者カイト様!


メイシクル・アルホントが今!お傍に参ります!!

ブクマ・感想宜しくお願いします!

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