『勇者×呪い=チート』
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「おっ!転送が終わった―――」
「・・・・・・」
「うおっ!?カ、カイト・・・?」
ダンジョンからの転送が終わった事を理解した俺は覆い被さっていたミランダを優しくどかして自分の身体を触り始める。
ミランダは一体何をしているのか分かっていない。だが、俺が焦っている事は見てわかるだろう。
何故、俺がこんなに焦っているのか?
それはダンジョンから転送される前に手に入れた腕輪を誤って装備した時に脳内へ流れたアナウンスが原因だ。
『呪いの腕輪』を装備しました。
貴方は『呪われ』ました。
苦労して手に入れたお宝がまさかの呪い装備という罠。
それに、さすがの勇者スキルも装備に付加された効果は無効にしてくれないようだし、マジでやばい。
「は、外れねえ・・・」
俺は腕輪を引っ張って取ろうとしたが、びくともしない。しかも脳内にアナウンスが流れた。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
ふ ざ け ん な !!
俺は負けじと呪いの腕輪を外そうと繰り返す。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
無駄だから諦めろよ、馬鹿
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
この装備は呪われています。外す事が出来ません。
何度やってもダメだった。
ん?さっきアナウンスに罵倒されてなかった?
「・・・まさかその腕輪外せないのか?」
「・・・うん。呪いの腕輪だったみたい」
「マジかよ!?」
驚きの表情でそういうミランダ。俺の境遇に悲しんでくれるのか?
原因はミランダなんだけどね?
「危なかった!小さいの選んでたら俺が呪われている所だったぜ!良かった良かった!」
「良くないから!?」
悲しむどころが喜んでるよ!?少しは心配してくれても良いじゃないか!?
「ははは!冗談だよ冗談!そんな怒るなって!でもよ、その様子じゃあ苦しむ系の呪いじゃないみてえだけど、どんな呪いにかかっちまったんだ?【鑑定】で調べてみろよ?」
他人事だと思って軽いミランダにイラッときたが、確かに呪いの効果は気になる・・・。外す事しか頭になかったから忘れてた。
とりあえず、鑑定でこの腕輪を調べよう。
【LFB】
レア度
・・・UR
効果
・・・死んだ生物達が今を生きている生物達を羨み妬んだ事によって生成された腕輪。
装備者に永遠の呪いをかける。
HPを『1』、他ステータスを10000下げる。
装備している間、他の防具・装飾品を装備しても数値・効果は無効になる。
装備者が死んだ時、腕輪は爆発する。
こ、怖ええええええっ!!??
なんか無駄に怖い内容で泣けてくるんだけど!?
それにこの腕輪のせいでHPは1な上に一万もステータスを減らされる。
守りを固める為に防御力が高い防具や補助効果が付与された装飾品を装備しても無効で意味がないという徹底ぶり。
「た、確かに恐ろしい腕輪だけど、その割には平然としてんな。呪いの効果でステータスがほぼ0になってるはずだろ・・・?」
俺はミランダに腕輪の説明をしたらそう言ってきた。
言われてみれば確かにそうだ。俺のステータスは平均しても二千も行かない。つまり、全部のステータスが0又はマイナスになっているはずだ。
それなのに特に苦しかったり死にそうになったりしてはいない。何でだろう?
俺は自分のステータスを確認してみた。
名前:倉木海人
性別:男
年齢:17
種族:人間
職業:勇者
レベル:30
状態:勇者スキル発動中+LFB効果発動中
H P:1/1
Ⅿ P:50000/50000
攻撃力:140000
防御力:190000
俊敏力:190000
魔攻力:50000
魔防力:190000
魅 力:2000
通常スキル:【忍耐】、【脱兎】、【器用】、【節約】、【防御魔法中級】、【補助魔法中級】、【偽装】、【鑑定】、【全ダメージ無効(勇者スキル発動時のみ)】、【全状態異常無効(勇者スキル発動時のみ)】
勇者スキル:【火事場の馬鹿力】
称号:【人類最強】、【呪われた勇者】、【努力の才能】、【奇跡を起こす者】、【ドラゴンを倒し者】、【災い転じて福となる】
・・・・・・ん?
「んんん?」
「お、おい、どうしたんだ?」
どうしたもこうしたもない。俺のステータスがおかしい。
どうやら元々、HPが1だったので勇者スキルが発動された状態のまま、呪いが発動してしまったようだ。
『元のステータスx100(勇者スキル)-10000(LFB)=現在』
という計算式になっているみたいだ。
だから、勇者スキルのおかげで平均15万のステータスを持つ俺が呪いで1万程ステータスを削られても痛くも痒くもない。
それどころかLFBの効果のおかげでMAXのHPが1となった為、死ぬほど辛かった苦痛が綺麗さっぱりなくなっているのだ。
しかも、【火事場の馬鹿力】の効果でダメージは喰らわない。まさに隙の無い無敵状態となった。
しかし、もし勇者スキルが発動する前にLFBを装備してしまったら?
『{元のステータス-10000(LFB)}x100(勇者スキル)=???』
このような計算式が成り立ち。俺のステータスは『0』あるいはマイナスのステータスだったかもしれない。
そう考えるとゾッとするが、結果オーライなので良しとしよう。
俺は今、年甲斐もなくわくわくしてるんだ。
こんなステータスになったんだ。どのくらいの力が出せるか試したくなってしまうだろ?
「ミランダ。ちょっと離れてて」
「カイト?」
俺は近くにあった木に近づき、右手の人差し指と中指をだけを立てる。
その状態の右手を振り上げ、木に斧を振り下ろすような感じで思いっ切り振った。
「えっ?」
「はっ?」
普通の人なら指が怪我するし、普段の俺なら骨折していただろう。
しかし、まるで豆腐を切ったかのような手応えで振り抜けてしまった。木は縦へ綺麗に真っ二つだ。
しかも、それだけではない。
どういう原理か分からないが斬撃みたいのが飛び出て後ろにある木々、岩さえも真っ二つに斬られていく。
「あ、あれ?」
「あれ?じゃ、ねえ!!どうなってんだこれ!?」
ミランダは真っ二つになった木・・・ではなく、現在進行形で真っ二つになっていく光景に指さしている。
「えっと、多分俺のせいかな?」
「多分じゃねえし、そんなのは分かってんだよ!ちゃんと説明しろ!!」
「は、はい・・・」
俺は馬鹿げたステータスになった事情を一から説明した。
「・・・そんなのありか?」
「まあ、その、ありなんじゃない?」
「ふ ざ け ん な !!」
俺の返事に鬼のような形相で言い寄ってくるミランダ。あと、その応え方は俺の専売特許だぞ、真似すんな
「そんな度重なる偶然が起こす、ご都合主義みたいな事、漫画でもないぞ!」
起こってしまった事はしょうがないんです。だから、そんな顔で怒るのは勘弁してください。本気で怖い。つか、この世界にも漫画あるの?
「はあ・・・。もういいや。カイトはチートな鈍感系主人公だって事で納得する事にした」
チートはともかく、鈍感ってなにさ?
そう聞こうとしたらまた頭の中からいつものアナウンスが流れた。
レベルアップしました。
えっ?
「・・・なあ、今、戦ってもいないのにレベルアップしたんだけど?」
「はあ?それって・・・・・・あっ!」
ミランダが何かに気付いたのか顔を急いである方向に向けた。
俺も同じ方向に向くとそこには俺が真っ二つに切った木・・・あっ!
「さっきの斬撃が魔物倒しているんじゃないか?しかも現在進行形で?」
「と言うことは・・・」
木や岩、魔物だけではなく、人にも―――
「「やばい!!」」
俺とミランダは同時に走り出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「やああああっ!!」
「ガッ・・・オオッ・・・」
「はあ、はあ、はあ・・・」
1人の女性が複数の魔物と戦っている。
そして、彼女の背後には倒れている鎧を着た人たちが数人。
女性はその鎧の人達を守りながら戦っている。
魔物は『ハイナーエ』と呼ばれる狼のような獣で体長が1m程。群れをなして襲い掛かる習性がある。
女性は数十匹程度であるならば余裕で倒せるほどの実力者。
だが、怪我人を守りながらとなると厳しい。
彼女は後ろの人達を守る為動けない。そんな彼女にハイナーエ達は縦横無尽に襲い掛かる。
「【ワイドスラッシュ】!!」
しかし、女性はスキル駆使して立ち向かう事でなんとか凌いでいる。
「『マルティグラス隊長』!もうお下がりください!後は我々が足止めを致しますから!」
「馬鹿者!部下を置いて下がれるものか!そんな事をすれば先に撤退している姫様が悲しまれる!」
『隊長』と呼ばれた女性マルティグラスは、よく見れば部下である鎧の人達と似たデザインの鎧を着ている。
マルティグラスは部下に一喝してハイナーエの群れに立ち向かう。この身に何があろうと守ると心に決めて
「ウオオオオオオオオンッ!!」
「っ!?」
だが、マルティグラスの状況は悪くなる一方だった。
急に聞こえた大きな鳴き声にハイナーエ達は左右に開き、道が作られた。その道から出てきたのはハイナーエの倍以上の大きさ。地球で言うならゾウと同じくらいの大きさのハイナーエが現れる。
ハイナーエの変異種『ワーハイナーエ』。
群れのハイナーエのステータスを上昇させ、その群れのハイナーエの数で自身のステータスも上昇させる固有スキル【統率】を持っている。
今のマルティグラスにとって最悪の展開となってしまった。
ハイナーエの群れだけであれば多少怪我しようと殲滅させる勝算はあった。
しかし、ワーハイナーエと強化されたハイナーエの群れではどう足掻こうと勝つのは不可能であった。
「お前達!私が少しでも多く時間を稼ぐ!だから動ける者はすぐに姫様のところへ向かいこの事を伝えよ!!」
「し、しかし・・・」
「急げ!!」
部下にそう言って駆け出すマルティグラス。剣を下段に構えて突進する。彼女の狙いはワーハイナーエの首。
「【昇竜剣】!!」
マルティグラスの下から上に斬りあげる技を繰り出す。
「なっ・・・!?」
そのスキルは首に向けていたが、ワーハイナーエは首を動かして剣を牙で受け止めた。
するとマルティグラスの剣が壊れてしまう。
牙が頑丈であったのもあるが、先ほどまで何十匹ものハイナーエを倒していた剣は限界に達していたのだ。
「ガアアッ!!」
「くっ!」
ワーハイナーエは牙でマルティグラスに襲い掛かる。なんとか後方に跳んで避けるも敵は1匹ではない。
「うああああっ!?」
4匹のハイナーエがマルティグラスの両腕両足に噛みつく。マルティグラスは咄嗟に跳んでいた為、受け身が取れず、そのまま押し倒される。
「くそ!離せ!!」
マルティグラスは痛みに耐え、脱出を試みるも自分の体重に近い魔物4匹に抑え込まれてしまいびくともしない。
「ガルルルルルッ」
「っ!」
ハイナーエに拘束されたマルティグラスを見下ろすように立ったワーハイナーエ。
マルティグラスはこの後自分がどうなるのか、剣を破壊した牙を見てある程度の結末を察した。
「・・・姫様。先絶つ私をお許しください・・・」
「ガオオオオオオ――――ガッ!?」
「・・・えっ?」
死を覚悟したマルティグラス。それでも彼女は眼を瞑らない。
死ぬ間際、死ぬ瞬間でも誇り高き存在であろうという、まさに騎士の鏡と言えよう。
しかし、その死は訪れない。その理由はしっかりと目を開いていた筈のマルティグラスにも分からなかった。
ワーハイエーナの口が残り数十cm。そこで止まった。
そしてワーハイエーナはゆっくりと横に倒れていく。
エルザは倒れたワーハイエーナの次に見たのは変哲もない林・・・のはずだった。
見たのはワーハイエーナ・・・の体の断面。しかも何かに切断されたような綺麗な切り口だった。
それを見たマルティグラスはそのグロイ光景よりも何故そうなったかの理由が気になった。
マルティグラスであろうとワーハイエーナの胴体を真っ二つに切断することなどできない。
では誰が?
部下の誰かか?しかし、マルティグラスに出来ないものを部下の騎士達が出来る筈がない。
そもそもこれは人の仕業なのか?
頭をフル回転させながら考えるも結論に至らない。エルザは混乱しているとその原因が現れた。
「すみませーん。こっちにカマイタチ的なものが来たと思うんですけどー、大丈夫ですかー?」
全く緊張感を持たない少年カイト・クラキの参上だった。
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