第五ノ二十二話 精彩に翔ぶ
「署長、今回の件なのですが」
「どうした?」
住良木村の調査報告書が届き、それを雲雀が受け取る。
そこには、村の外れにある石碑、鼓太郎を祀ったものの下に洞穴があり、そこに戦闘の跡があったと記されている。その傷痕は未知のものであり、稲嶺六之介が回収したクリスベクターという銃器による弾痕と酷似、そして、残っていた血の跡と細胞の一部から不浄のものであると判断された、と書かれている。
「妙だな……六之介たちは不浄はいなかった、と」
「はい。これはかなり以前のものであるそうです。少なくとも一年は経っていると」
一年前、住良木村の近くになにかしら不浄が存在していたという事。それは言い伝えられている主であったのかもしれないが、判断できない。
ただ唯一言えることは、魔導官が赴くよりも前に、何者かが不浄を戦闘をしていたという事。そして、殲滅していたということのみ。
「死骸は?」
「二枚目に書いてあります」
めくる。
「……死骸無し? どういうことだ?」
「回収されたのではないか、と」
不浄は魔力の塊である。過剰な魔力は毒となるため、よほどのことがない限り、魔導官が回収し、適切に処分する。しかし、これは違う。魔導官の知らないところで何かが起きている、それを予感させる。
「……」
「あの銃器に関しては、周知ですか?」
「ああ、全く未知の技術、素材で作られていた。開発部の連中が涎垂らしていたぜ」
あんなものは見たことがない。その上、あの銃には『魔力がなかった』。魔力は万物に存在している。生物であろうと、非生物であろうとそれは関係ない。しかし、あれには無かったのだ。
そんな存在はありえない。一人の人間を除いては。
「……なんだか厄介なことになりそうだな……」
窓の向こうにそびえたつ、多法塔を見つめる。入道雲を背景に、悠然とそれは存在していた。




