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暴力的な姉妹

ゆたかな手と足で

俺を殴る蹴るする姉妹 それが

怒れる手品師の渇きを癒します

姉妹の暴力が俺の思い出を拭い去ります

俺を殴る蹴るし続ける姉妹の上空を

パラグライダーが飛んでゆきます

俺にはそれがとびきり偉大に思えます

姉は美少女です

彼女の美しいかかとが俺をアザだらけにします

妹は風邪をひいています

彼女が四十過ぎの太った事務員になったのは俺のせいです

姉が馬乗りになって俺を美しい拳で殴ります

妹がマイケル・ジャクソンを踊ります。たった一人で。

野次馬が集まってきました。磁石にくっつく砂場の

砂鉄のように。彼らの目には俺が透明人間として

写っているようです。群衆の野次が飛び交う公園は

暮れゆく街の中にありました。妹はシンディ・ローパーを歌い、

姉は関節技を極めました。俺は戦意を喪失しました。

というよりはなから闘う気などありませんでした

外灯が灯り始めたころ、俺は解放されました。

ひびの入った腕時計によると俺は30分近く

あの姉妹に殴る蹴るをされ続けていたわけで

それに対しての報酬も代償もあるわけもなく

姉妹はタクシーで帰ってゆきました。妹のマスクが

遊具に引っかかってはためいています。

俺はベンチに腰かけて空を見ます

そりゃ体も顔もずきずき痛みますよ でも

どこか懐かしい気がするんです この痛みが

水飲み場で喉を潤すと血の味がします その味も

どこか懐かしい味なんです 悔恨と追憶の味なんです

汗や涙と共に私は悟ります。私が暴行された理由など

いかほども見当たらないということを


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