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俺と幼馴染みは遊歩する

 幼馴染みと二人で観光。関係が関係であれば、周りを微笑ましく、妬ましく、羨ましい気分にさせるのだろうが、生憎、俺と榊じゃそういう空間を作り出せない。期待は裏切ってナンボだろ?だから、先生はそんな冷たい目で俺を見ないでください。俺、ハートブレイクされそうです。


「はぁ、ついてねぇ……」

「何を言ってるのさ、学年一の美少女と二人きりで回れるんだよ?もっと喜んでもいいと思うけど?」

「美少女と回ることが、男にとっての喜びだなんて誰が決めたんだよ。まぁ、その通りだが」

「全く、神座は素直じゃないなぁ」


 肩を竦めてヤレヤレといった風に首を振る榊。美少女だから、そんな仕草も様になっていやがる。畜生、神はどうして、こいつに欠点を与えなかったんだ。いや、弱点すらないからね、榊。マジどこぞの完璧超人だよって話。俺は、凡人の幼馴染みですか、そうですか。……しょげるぞ。


「大体、お前はどうして俺と回ろうとするんだ?」

「だーかーらー、私の班員の穹ちゃんも彗ちゃんも幸崎くんのところ行っちゃったしさー」


 穹ちゃん。

 フルネームは空谷(そらや)(そら)という。俺と同じクラスの二年二組所属で、幸崎を取り巻くハーレム構成員の一人にして、ハーレム構成員最初の一人。現実では、まだまだ拡散が足りない、僕っ娘って奴で、笑顔はクラスメイト曰く可愛らしく、しかし、爽やかさも感じさせるものであるらしい。運動神経が高く、須佐原のライバルでもある。あ、勿論、俺の幼馴染みが一番運動神経高いけどな。そこをお忘れなく。つ訳で、須佐原と空谷は、運動神経の順位争いという点において、泥沼の二位争いをしている。まぁ、頑張ってくれ。凄い幼馴染みを持つと、ちょっと鼻が高くなる。ドヤっ!


「え?なにそのドヤ顔、気持ち悪い……」

「なんだか、今日のお前はやけに俺に手厳しいな、泣くぞ?」

「そんな全力で、泣くぞ宣言されましても……、女々し!」

「はんっ! 男だからって、男らしくなければならない理由なんてないんだよ!むしろ、今の時代は男の娘など女々しい男子にも萌える時代が来ている。つまり、男が女々しくてもなんら問題はない!」

「その発言が全力で問題ありだよ……」


 確かに、言ってて自分でも思った。けど、俺は炊事、洗濯はある程度出来るし、一人暮らしに必要な必須スキルは全てノーマル主婦レベルでは修得している。母親が、家事全般をできないと嫌でも修得せざる終えないからな。あの人は、どうして焼き加減と、分量を適当にするのだろう。料理が下手な人は、レシピ通りに沿わなければ、旨く作れないというのに。


「いや、でも男子でも家事は出来た方がいいだろ」

「そりゃ、結婚を前提に考えたら、そっちの方がいいけどさ……」


 チラッチラッ、と顔を付せこちらを伺うように、顔を上げたり下げたりを繰り返す。おい、どうした、俺の顔になんかついてるのか。俺の顔が見るにも耐えないとか言われたら、俺泣いちゃう。話の流れ的にあり得ないけど。


「どうでもいいが、顔を赤らめるの止めてくれないか?」


 俺に気があるのかと思っちゃうだろう。

 何を戯れ言をと思うが、心の隅でそんな風に思ってしまう俺がいることは確かなのだ。諦観、静観、達観をモットーにしているだけに、そういうことに興味がないと思われがちだが、そんなものそぶりを見せられたら、流石の俺も動揺するぜ。別に、俺は言うほどリアニストではないからな。むしろ、ドリーマー。


「まっ、そんなもん、やっぱ俺の幻想でしかねーんだろーけど」

「ん?どうしたの、神座」

「いや、何でもない。ほら、さっさと行こうぜ」

「うわ、急に先導し出して、気持ち悪い……」


 ちょっと泣きそうだけど、こいつ、さては……!


「……故意にやってるだろ」

「あ?ばれた?」


 ……誰か、この幼馴染み、引き取って頂けないでしょうか。




 そんなやり取りの後、俺と榊は東大寺に向かうまでの道をぶらぶらしながら、適当に、屋台を冷やかしながら、歩いていく。どんなにゆっくり行っても、東大寺に間に合う気しかしない。そもそも、最初に集合していた場所から、四百メートル程度のところにあるのだ。どれぐらい遠いかというと、人が一時間で歩き続けた時に進む距離の十分の一。だから、単純計算、六分でつく。集まる場所、近すぎるだろ。


「お、神座!神座!見えるよ、東大寺」

「だから見えてるって」


 いつになく、はしゃいでいる榊。どこにそんなはしゃぐ要素があるのか分からないが、楽しそうで何よりです。美形耐性A+++を持っている俺でも、見飽きることのないその表情は、普段はなかなか見れない笑顔。こういう、はしゃいでいる時の笑顔というのは、本当にレアである。何とかして、写真に納めたいものだが……。


「なぁ、ちょっと、そこに立ってくれない?」

「え?ここ?オッケー」


 俺は榊に場所を指定してその場所に立ってもらう。ふむ、ばっくの東大寺となんら遜色のない存在感。これが、学年一の美少女の存在感か。俺の存在が薄れるのも無理はない。なんせ、俺は色々と中途半端だからな。仕方ないことだ。


「はい、チーズ」

「え?えぇ?」


 俺が合図を出すと、戸惑いながらもピースをしてくれる榊。後ろを振り返ると、何人かが、腹を抱えてよろめいている。うんうん分かるよその気持ち。俺も、小学生ぐらいの時は、よく貧血起こしてたから。え?何で血が足りなくなるのか? 察せ。


「よし、バッチリだな」

「よし、じゃないよ馬鹿!どうして許可なく取ったのさ」

「許可、くれないだろ?それに、お前なら写真も映えるからな」

「むー。私ばっかりじゃ不公平だよ!!」


 そう行って榊は俺の手を取り、そしてググイと体を引き寄せる。くっ、顔が近い。何度も言うが、俺が美形耐性A+++(そろそろSに成りそう)を持っていなければやられているところだ。彼女は、自分のケータイを取りだし、写メを撮る。俺と榊のツーショットだ。数分のあいだ彼女は撮った写真を眺めていたが、それで彼女は満足したのか、フンフンと気分よさげに何度か頷き、ケータイを懐に納める。いつも思うのだが、あいつの懐にはどれだけの物が入るのだろうか。明らかに特注だと思われるのだが違うのだろうか。


「さてと、神座の写真も手に入れたことだし、目前に迫っている東大寺に行きますか!!」


 俺の写真を手に入れることが目的だったのか?いや、やり返したことに満足して言ったのだろう。一方的に撮られるばかりじゃ、ちょっと理不尽感じるもんな。俺だけかもだが。いやいや、そんなはずはない。……ないよね?


「先生が東大寺の中にいるんだっけか?」

「そう、その通り!時間ないだったらいつ行ってもいいらしいけど、ここまで来ちゃったし、このままレッツゴー!」


 今日はやけにテンション高いなぁ、榊。どうしたのだろうか。今日の星座占い一位でもだったのか?なんかいいことでも起こりそうとか言われたのか?まぁ、俺は一位のときだけ信じるけど。十二位とかあり得ないと思って無視するし。


「どうしたの神座?」

「何でもない」


 余計なことを考えていたら走り出した榊に出遅れてしまい、心配されてしまった。情けない俺。ま、そんなことは分かりきっているのだが。あのときから、俺はずっと情けない。それは榊だって知っているから心配するのだろう。先に進んでいた彼女は、歩みの遅い俺のところまで戻ってきて、俺の手をとる。……ふぅ。別に、動揺してない。こうやって、彼女に手を握られるとなぜか安心してしまう。多分、五年前のあのときからそうだと思う。本当に、我ながら情けない。


「さぁ、行くよ、神座!」

「あぁ、分かった」


 俺と彼女は東大寺までそのまま走り出した。

 ……俺より榊の方が早いのは何故だろう。

第九話。

実際にある場所って出していいものなんでしょうか……。

分かりませんでしたが、空想の場所とか考えられないですよ僕。

第十話って、もう学校始まってる!?状態の僕。おおう、出来るかな……。

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