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俺と幼馴染みは併合する

 観察眼とは対人戦における数少ない武器であると、俺はここに明記する。

 何故か。それは、センスが多少は伴うとはいえ、修得には簡単な努力しか必要としないからだ。筋肉でごり押し?ロマンがないな。そんなもの、重心をずらされたらこけてマウントポジとられて終了。飛び道具?ロマンだな。だが、その動作を見せた瞬間詰め寄られるんじゃ意味がない。観察眼を極め易いのは、人間を観察するほどの暇がある、つまり日夜、人との会話に迫られ、言葉を選ぶことに脳を回転させているリア充達よりも、一人でいる何もしていないボッチの方が修得しやすい。以上のことより結論。結局は権力持ってるやつが一番強い。え?俺、なんか間違えたこと言った?

 まぁ、そんな戯れ言を抜きにしても、人を観察する能力は、対人戦においては大事。そして、対人戦でなくとも大事。例えば、隣で普段は冷静な美少女が新しい玩具を見つけたときのような目をしながら友人を見ていたとしても、それをクールに観察することが出来る。あぁ、素晴らしきかな、観察眼。まぁ、俺のは信頼性に欠けるが。


「あ、神座、神座。切符買ったよ」

「見たら分かるわ」

「神座、神座。電車乗ったよ」

「俺達も乗ってるけどな」


 楔と須佐原が仲良さげに二人で電車に乗るのを見て、好奇心が刺激されて、その感情を俺と共有したいのか、榊は択一俺に報告してくる。感情を共有するのは大事だと思うが。択一報告される俺の心情としては、いや、見えとるがな。って感じだ。


「もー、何でそんなに興味無さそうなのさー」

「だって、楔だぞ?男女の幼馴染みって大抵は関係をこじらせなかったら、仲良いだろうし。俺と、お前みたいに」

「えぇ!?もう、真顔で言わないでよ、そういうこと!!」


 もはや、俺の表情筋は動かないで定着してきてるな。中途半端なハイライトに、動かない表情筋。ヤバイな……友達が出きる要素が皆無だ。何を今さらって感じだけど。それにしても。


「おい、榊。少し静かにしろ。注目浴びまくってんぞ」

「……え?」


 ちょっと、呆れた風に言ってやれば、彼女は回りをキョロキョロ見渡し、顔を赤らめる。あら、情緒豊かなことで。その動く表情筋、俺に少し分けてくれ。まぁ、榊の場合は煩くなくても、その容姿、発せられるオーラから注目を浴びるのは必然だが。目の前で純愛ラブコメもどきを見て、彼女らしくもなく興奮したのだろう。ああいう、誰にも迷惑をかけないような、幼馴染みの恋愛ものというのは見ていて微笑ましい気持ちになるし、首を突っ込みたくなる気持ちも分かるが。だが、俺は見るだけだ。諦観、静観、達観がモットーの俺としてはな。


「うぅぅうぅ。恥ずかしいよぅ」

「自業自得だ」


 頭を手で押さえて、回りに迷惑にならない程度に可愛らしくうずくまる榊。俺が美形耐性A+++を持っていなければ、場所を考えず、立場を省みず襲っていたところだ。それほどに、俺の幼馴染みは可愛らしい。周りの暖かい目感が凄い。どれくらい凄いのかは、想像にお任せする。というか、これだけ騒いでいて気が付かない楔と須佐原がすごい。これが、リア充(仮)以上の存在が作り出す甘々空間(カップルオーラ)! !


「……何考えてんだ俺」


 つい、自分の妄想に入り浸っている自分を殴り殺したくなる。恥ずかしい。これが後に俺の黒歴史となっていくのか……。いや、何度も言っているが、俺は口には出していない。つまり、俺の中で折り合いをつければいいだけの話。そんな簡単なことにも気が付かないなんて、俺ってほんと馬鹿。須佐原と楔が気付かないのは列車が違うだけだから。俺。あいつらそんな特殊能力持ってないから。


「うわ、お茶が甘く感じる」


 喉が乾いてきたので、マナー違反だとは知りながらもお茶を飲むと、その味がとても甘く感じる。絶望。これは、俺が求めてるような砂糖的甘さじゃない。俺はもっとこう、コーヒーに、牛乳とシロップを足して、そこに砂糖を大量に投入したような甘い甘い飲み物が飲みたい。何で、お茶など持ってみたのだろう、俺は。待ち合わせの時にコーヒー牛乳買っとけば良かった。もしくはココアでも可。辛いもの頼む奴とかマジ意味わからん。人生はハードモードが標準設定なのに、さらに辛さを求めますか。うん。俺には全く理解できない。(から)いと(つら)いは同じ漢字。だから、(から)いもの好きは(つら)いもの好き……流石にこれは暴論過ぎるか。まぁ、どうせ、誰にも伝わらないし。共感も得られないだろうしな。


「あ、ついたよ神座。降りよう」


 彼女は、俺の腕を引っ張って、電車から降りる。奈良駅到着。時刻は……八時五分。学年全体の待ち合わせ時刻は八時三十分だから余裕だな。それに、辺りにもちらほら、同じ高校の人が見えてるし。

 そして、今回の目的地は……。


「最終的には東大寺で終わるのに、何で別の場所で集まるんだよ……」

「皆にとってこの遠足が得難い体験になるように、願っています」


 この年齢になって遠足なんて、やる意味あんのか。甚だ疑問だ。もう、さっさと終わらせようぜ。何が、普通の生活じゃ得難い経験だ。そんなもの、普通の生活じゃ必要としていないから、得難いんだろうが。普通で生活していないものを必要とする理由が分からない。産まれたばかりの赤子だってその事を知っている。赤子は産まれたときは皆、絶対音感を持ってるらしい。それが、成長の上で必要なくなって切り捨てられていく。言葉だってそうだ。実は赤子の方が言葉は聞き取れていたりするそうだ。つまり、必要の無いものを一々、得る必要性を俺は全くもって、ちっとも、これっぽっちも理解できないわけだ。ましてや、メンバーにハーレム引き連れて煩いような奴と一緒だとな。あぁ、面倒くさい。どうして、神は俺に試練をお与えになさるのですか。


「神座ー、一緒に行かない?」

「はぁ、俺とお前じゃ、班が違うだろう?」


 先生の話も終わり、各班観光が終わり次第、東大寺へと向かう。それなれなのに、()と一緒に行こうだと?無理に決まっているだろうが。


「いや、だってあれ……」


 榊が呟いて指差したのは、幸崎及び、そのハーレム勢。幸崎は既にハーレム達に取り巻かれている。……まだ、解散から五分と経っていないんだけど。何あれ。楔は苦笑するばかりで、納めようともしないし。


「え、ちょ、待って皆……!」

「神座、僕も彼らに着いていくね」

「楔まで!?」


 あれよあれよという間に、幸崎はハーレム陣に連れていかれてしまった。最後にこちら――榊を見た気がするが、その真相は俺には分からない。分かりたいとも思わない。同じ、モテる者として、榊にアドバイスでも貰いたかったのか?でも、あいつは根っからの天然。それ以外の理由が有るのだろう。でも、俺には関係のない話だ。だから、俺が気にするような義理はない。あいつを助ける義理もない。だって、班が崩壊したのは、あいつを連れていった、女性陣が悪いのだし。

 俺は、先生の元へと行き、班構成の変更を伝える。榊の班の人は、須佐原と、ハーレム陣に入っている人なので、ここにはいない。楔は幸崎についていっちゃったからね。


「先生、許可を頂けますよね」

「……はぁ、仕方ない。余りこういうことは良くないのだがな、認めよう」


 認めて貰えて良かった良かった。もし、無理だったら、あいつらを追いかけなきゃ行けないからな。あのスピードに追い付ける気がしない。ゆっくり観光も出来ないだろう。得難い体験や経験は要らないが、観光はしておきたい。露店で美味しいものが売ってたりもするしな。


「じゃあ、行くか、榊」

「うんっ!」


 彼女の満面の笑みに、俺は苦笑いをただ返すばかりだった。

第八話。

次からは暫く更新できなさそうです。

九までいけるかいけないかってところです。

そして、早々に幸崎と別れる神座くん。いや、今回彼悪くないんですけどね……。

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