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俺と幼馴染みは計算する

 人生勝ち組とは関わり合いになりたくない。

 諦観、静観、達観が俺のスタンスでモットーだとしても、どうにも譲れない一線てのがある。

 俺の行動の七割方~八割方はその信念に基づいて、行動している。俗に言う、エリートの層が余り好きではないのだ、俺は。あっ、楔は別な。あいつはエリートだけど、聖人君子だから。

 なんか、見下されてる気がするのだ。俺が関わり合いになるエリートは、そう言うのを基本しない漫画のキャラみたいな奴ばっかりだ。それらも含めて、現実は非常に非情で、残酷だ。


「だから、俺はこの班決めをなかったことにしてほしいんですが?」


 班決めの日の放課後。俺は職員室に赴いていた。部室の鍵は、もう楔たちが持っていった。つまり、俺を客観的にみたら、学校行事である遠足の、自分達で決めた班分けに、駄々をこねている餓鬼と言ったところだろうか。うわ、俺だっさー。


「はっはっは。面白いことを言うね、簪は。一度決定されたことを覆すのは面倒臭いんだぞ?だから却下だ」


 いい笑顔で、俺の申し出を断る、我らがクラス担任の綴世先生。こ、このっ、職務怠慢! ! って言ってやろうかと思ったが、冷静に考えたら言い方があれなだけで、職務怠慢でもなんでもなかった。一度決定していると言うのが、ポイントだ。決まっていなかったら、そりゃ、変更もある程度は認めてくれるのかもしれないが、決まっているからな。一人の生徒の頼みで他の生徒を蔑ろにしていたら、教師としては失格だろう。そう考えると、ここで引き下がるのが得策。というか、人として当然。職員室に文句言いに来ている時点でアウトな気もするが。その辺は気にしたら負けなんだよ。うなだれる俺の様子を見て、憐れに思ったのか、先生は言葉を付け加える。


「何、悪いことばかりじゃないさ。幸崎と一緒にいれば、ハーレムのおこぼれを貰えるかもしれないぞ?」

「先生。、先生のこと呆れを通り越して少し尊敬します」


 その発言は、倫理的に見てどうなのだろう。考え方が、人としてダメな気がする。おこぼれって言い方が駄目なのかもしれないな。それはともかく、別に俺は幸崎のハーレムのおこぼれなんか期待しちゃいない。考えてもみろ、あいつのおこぼれをもらうと言うことは、そいつは俺に好意を向けてくると言うことだ。

 吐き気がするね。大体、そんな直ぐ好きな人が変わる奴を俺は恋愛対象と見れない。尻軽と罵られても可笑しくなくない? うざい? ごめん自重します。


「ふっ、私のことならもっと尊敬してもいいんだぞ?」


 先生が独身な理由が分かった気がする。なるほど、こういうノリについていける人じゃないと、駄目なわけか。理解。


「はぁ……。無理言ってすいませんでした。楔と同じってだけでも我慢します。」


 先生の残念な態度はスルーして、俺は踵を返す。くるっと、綺麗な音がなりそうなほど綺麗なターン。ふっ、俺が何度榊が、告白されるシーンをこれで切り抜けたと思っている。十回目辺りからは、全く音がしなくなるほど極めたからな。これぞ、他人の告白シーンを見てしまったときに使う秘技。無音回転(サイレント・ターン)!! さっき自重すると言ったばかりだったのに、早速やってしまった。綺麗な音がしそうなくらい無音で踵を返すって矛盾してるし。脳内でエコーする、技名に恥ずかしくなってくる。なんで俺、こんなにテンション高いんだろう…。と。やってしまった感がぶっちぎっている。ま、まぁ、脳内でエコーしてるだけだから。口に出してないし。そこら辺の抑えきれなくて叫んでいる馬鹿とは違う!

 脳内で恥ずかしい理論を繰り広げていると、いつのまにか部室の前に来ていた。考え事していると、無意識のうちに行動してるみたいな状態。

 俺が部室に入ると、そこには、榊、楔、須佐原、一年の並譜さん。そして、誰か分からん少年がいた。てか髪の毛長すぎるだろ。腰まであるぞ。その少年はこちらを振り向く。


「あっ、簪先輩っすね!!よろしくお願いしますっす」


 そう言って、俺に礼をする少年。前髪がかなり短いようで、後ろ髪とのアンバランス感が凄い。違和感、ニートしろ。


「えと……?誰?」

「あっ!申し遅れましたっす。お……僕の名前は古幡(ふるはた)吹雪(ふぶき)っす」

「新入部員なんだよー」

「お、須佐原、今日は来てたのか」

「僕が引っ張って来たんだけどね……!!」


 それはお疲れ、楔さん。

 それにしても、二人目まで来るとはね。並譜さんの時点で驚きなのに、もう一人入りそうなんてな。だが、言葉とは裏腹に、古幡後輩は俺のことを警戒しているように見える。人間観察能力の低い俺だ。どうせ、勘違いだろうけど。


「それで?古幡後輩はなんで、このクラブ入りたいんだ?」

「それは、このポスターを見て……」


 お前もかよ!?心の中で突っ込んだ俺はきっと悪くない。ポスターを見て感じたことを、口に出して説明する。その様子を見るに、俺を警戒していたのは勘違いのようだ。だから、彼が俺に説明する前にちらっと、並譜さんの方を見たのも気のせいだろう。うん。


「えーと、じゃああれ、しよっか」

「え?あれすんの?」


 榊が唐突に活動始める宣言。何度も言うが、このクラブは普段はダラダラしているが、やるときはやるクラブなのだ。早起きとか。榊が言ったあれとは、このクラブの活動の一つで、俺と楔と須佐原が尤も楽できて、榊がしんどいあれだろう。


「よし!じゃあ、並譜ちゃん住所教えてもらってもいい?」

「え?な、何ですか?突然」

「いいから、いいから」


 勢いの押されるがまま、並譜さんは自分の住所を述べていく。割りと家から学校までの距離が近いんだなと思いながら、俺はガラステーブルの上に地図を広げる。そこにはここら一帯の模様がかかれており、信号の待ち時間、人数の混み具合など、現場で見た人じゃないと分からないデータが書き込まれている。榊は、教えてもらった住所と、地図に書かれている様々なデータを読み取り、答えを導き出す。並譜さんと古幡後輩は、榊が何をやっているのかさっぱり分からないようだ。こんなことできるのは、榊ぐらいだろうしな。


「並譜ちゃんの動きからして……、出発時刻は……、到着時刻は……。うん。出来た」


 にっこりと微笑み、榊は、何処に隠し持っていたのかと問いたくなるような、真新しい地図を懐から取りだし、並譜さんの家から、この高校までを赤線で結ぶ。


「これが、並譜ちゃんの家から、ここまで最短時間でつくルート」


 榊のことをよく知らない彼女達一年生はまさに絶句と言った表情で、榊を見ている。まぁ、そりゃ驚くわな。正直、家から学校までの最短時間ルートとか言われてもピンと来ないし、そんなはっきり行ってしまえば家を何時もより早く出ればいいだけの話に、榊は労力を支払っているのだから。けど、これ以外と人気なんだぜ?去年は人が殺到したしな。生徒会には、この働きが認められて、クラブが残っているわけだし。そう考えると、やはりこのクラブは榊を中心に成り立っていると言わざるおえないだろう。実際、彼女がいなければ、この活動は出来ない訳で、そう言った点で、俺は大きく彼女に感謝している。居場所を作ってくれた訳だしな。


「信じられないなら、明日、試してみて」

「……はい、分かりました」


 その後、榊は古幡後輩にも最短ルートを教えてあげていた。お疲れ様だな。帰りにジュースでも奢ってやろうか。紙パックの奴だけどな。いきなり渡すと流石に幼馴染みでも今日はなんか優しくて気持ち悪いとか逆に言われそうだし、建前も考えておくとするか。別に、榊に気持ち悪いって言われたら、俺のハートが粉々になるからとか、そんな理由じゃ全然ないんだからな。

第六話。

ついに来た榊さん活躍(?)場面。

実際、あんなこと出来るもんなんですかね……?

簡単に出来てしまったら榊さんの立場がないので、真似しないでね。

微妙に噛み合わないタイトルとサブタイトルは置いといて、次回こそ!次回こそ遠足(笑)編に行くぞー!!

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