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俺と幼馴染みは説明する

「えーと、名前とクラスを教えてくれるかな?」

「は、はい!な、名前は並譜(なみふ)七瀬(ななせ)で、所属クラスは一年三組です!!」


 榊が一年生の並譜さんに尋ねるが、ガチガチに緊張してしまっているのがこちらにも分かるほど、彼女は固まっていた。ブレザーの胸のワッペンの色が赤色なので一年生であること。因みに今年の二年生は青、三年生が緑だ。今年の、とつくのは年毎にブレザーを変えたりはせず、そのまま持ち越しであるからだ。色は三年で一周するので、俺達が三年生になったとき、一年生はブレザーに緑色のワッペンをつけていることになる。それにしても、仮入部者である。このふざけたとしか思えないような部活にねぇ。榊部長がいなければ成り立っていないようなクラブに。


「ふぅ、私の方からはオッケー。神座は何か聞きたいことある?」

「あー、そうだなぁ……」


 急に話をふられて驚いたが、予想の範囲内である。つーか、お前が聞きたいのは名前とクラスだけなのか、榊。正直言って何も思い浮かばないので、俺は率直な疑問をぶつけることにした。


「どうして、このクラブに仮入部しようと思ったんだ?」

「は、はい。それは、掲示してあった、このポスターを見て……」


 そう言って彼女が取り出してきたのが、色々と書かれているポスター。俗に言うアニメ絵のタッチで書かれており、真ん中には、自転車に乗っている女子生徒のイラストが……って


「これ去年の冬ごろお前が俺に書けって言ったイラストじゃないか!?」

「ふっ、ふぇ!?」

「あ、すまない。つい取り乱した。おい、榊どういうことだ」


 つい叫ぶと、並譜さんがビクッと大きく反応してしまった。む、申し訳ない。俺は、去年の冬ごろ十二月ぐらいに榊に頼まれて幾つかイラストを書いたのだ。漫画とかの絵を書くのは好きなので、喜んで引き受けたのだが、まさかこんなところで使われているとは……。やはり、榊には抜け目がない。少なくとも去年の冬ごろからは部員を増やすことを考えていたわけだ。その行動力には呆れるばかりである。


「別に?神座の無駄な才能を生かしてあげただけだよー?」

「……ハァ。ま、いっか。じゃあ楔、なんか聞きたいことあるか?」

「うん、僕からは特にないかな。それより並譜さんは僕たちに何か聞きたいことある?」

「あっ、はいそれじゃあ1つ!」


 彼女は、可愛らしい顔を一度傾げ思い付いたように、右の掌に、左手で作った拳をポンッとおき、あたかも閃いたような仕草をとる。


「皆様の名前が知りたいです」

「そう言えば、自己紹介がまだだったね。私が部長の杯榊で、こっちの目が鈍く光ってるのが副部長の簪神座、それであの可愛らしいのが草撫楔くん」

「よっ、よろしくお願いします」


 今更ながらに自己紹介した俺たちに、改めて頭を下げてくる並譜さん。礼儀正しい子だ。昨今の礼儀のなってない同年代の奴等に爪の垢煎じて飲ませてやりてぇよ。


「じゃ、じゃあもう1つお尋ねしてもいいですか?」

「いいよ、構わないよ、オッケーだよ」

「えーとでは……簪先輩、杯先輩」


 と、そこで彼女は言葉を区切り、数回深呼吸して息を整える。なんだろう、心の準備が必要なことでも聞くのか?だが、俺には思い当たる節がない。


「お二人は、付き合っているんですか?」


 暫しの沈黙。

 脳が彼女の言ったことを理解するまでに、優秀な榊の脳でさえ、それほどの時間を要したのだ。俺が案外早く立ち直れたのは、動揺する理由が一切なかったからかもしれない。


「そんな分けないだろ?」

「そ、そんなことあるはずがないよ!」

「落ち着け榊。動揺しているのは分かるが、必死に否定すればするほど説得力が落ちるぞ」

「そ、そうだったね。うん、大丈夫。並譜ちゃん、別に私と神座は付き合ってないよ。大丈夫、天と地がひっくり返ってもあり得ないから」

「確かに、それだけ力説すれば説得力はあるだろうが、流石に俺でも傷つくぞ……」

「えぇ!?あ!ごめんね」


 謝って済むなら警察要らない。まさか、付き合っていることを否定するだけでここまでダメージを負うとは思わなかった。楔は、苦笑を浮かべるだけで、全然助けてくれないし。もう、皆酷いっ!


「まぁ、神座のは若干自爆感があったし、仕方ない気はするけどね」


 フォローに入ってくれるのかと思いきや、榊の援護射撃をしてくる楔。よってたかって俺を苛めやがって。もうやめて、神座のライフはもうゼロよ!


「つーか、楔は諏佐原を待っていたんじゃないのか?」

「うん。そうなんだけどね。先に行っといてって言われて。何でも、彗ちゃん宿題やって来てなかったそうで」

「あぁ、確かにあいつはあんま頭よくないからなぁ……」

「あの、簪先輩。楔先輩。そのすさはらって人は一体?」

「あぁ、そう言えば知るはずもないな。諏佐原はこのクラブの四人目の部員だよ」


 諏佐原彗。

 楔の幼馴染みであり、外見で言えば全く飾り気がないにも拘わらず、多くの女子生徒(・・・・)に告白されるほどのイケメン少女。ボーイッシュな顔立ちをしており、その外見に比例するように運動神経は高く、明るく親しみやすい性格も手伝って、友達は多い。同じ部活に所属しているが、彼女が何故帰宅部にいるのか、不思議でならない。一度、理由を榊に聞いてみて、鳩尾を目の据わった笑顔で榊にストレートを入れられて以来、考えないようにしている。そんな諏佐原だが、勉強面はどうかと言われれば、俺は口を閉じざるを終えない。運動が出来る代わりに、勉強が出来ない。天は二物を与えずを体言したような少女だ。


「あー確かに彗ちゃん頭よくないもんね?」

「いや、彗ちゃんは頭悪いよ。この前の学年始めの課題テストなんて、課題やらずに挑戦して、涙目になってたんだから。追加課題手伝うの本当に大変なのに」


 そう言って、普段の聖人君子の楔からは考えられない言葉が彼の口からつらつらと流れ出る。その姿は、ついうっかり、ストレス溜まってるのか……?と聞きたくなるほどだ。とうとう、幸崎のハーレムに付き合い過ぎて、疲れ果ててしまったのか、それともその追加課題の量が異常なぐらい多くて疲れたのだろうか。遠い目をしている楔には超聞きづらい。


「楔くん、彗ちゃんの追加課題そんなに多かったの?」

「うん。一日に問題集を一冊終わらせるのを一週間ぐらい。」


 さらっと言ってのける、楔。そこに痺れる、憧れるぅ!

 それにしても一日に一冊とは恐れ入った。なるほど、そんなはた迷惑な幼馴染みに課題を付き合わされ続けたら、今の聖人君子な楔が出来上がるのか。うわ、大変だな。少なくとも、榊も俺もそんな風に勉強面で頼ったことはない。榊なんて、むしろ頼られるぐらいだからな。他の生徒に。俺?頼らないし、頼られない。俺、オンリーワン。勉強面では誰にも迷惑をかけず、かけられず。居ても居なくても、ほとんど変わらない。非諸行無常にして非盛者必衰、それが俺。


「それで?間に合ったのか?」

「うん、ギリギリね。あれだけ寝なかったのは久しぶりで、地獄を見た気がするよ……」


 体験者の言葉は重い。そうか、楔も苦労しているんだな。そんな性格だから、幸崎とも友達になれるのかもしれないな。楔をもう少し労ってやろうと思ったのは当然だった。

第四話です。

筆が遅いのでストックは消えました。

だ、誰か、ネタを作る方法を教えてください……。


感想でいただきましたが、主人公の名前のルビが出てないですね。

不備をここで言うのも心苦しいですが、『簪』って書いて、『かんざし』と読みます。一応、二話の先生が話すところに上の名前だけルビ降っておきました。下の『神座』はそのまま『かんざ』って読んでください。

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