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俺と幼馴染みは誤解される

 突然ですがここでクイズ!

 Q.榊によって考案された画期的な風紀委員スルー方とはなんでしょうか?


「……眠いわー」

「ふっ、そのかわり風紀委員をスルーできたでしょ?」

「画期的ではないけどな」


 A.朝早く登校する、でしたー!

 正解者には、俺特製『杯榊ブロマイド』をプレゼント!

 嘘です、すいません。アドレナリンが睡眠不足で放出され過ぎて、少しテンションがおかしいんです。大体、榊のブロマイドってなんだ。需要は、…あるだろうが、俺は榊を売ったりはしない! 多分! おそらく!


「いやー、それにしても、風紀委員って案外登校するの遅いよねー。もう七時五十分だよ」

「部活動生でもない俺たちがくるには早すぎる時間だからな」


 俺は、窓の外を眺めながら感慨深く呟く。ほんと、もう、今日の朝早くに扉を強く早く何度も殴打されたときは、強盗でも来たのかと思った。いや、テレビで見るような、こてこての借金取りをイメージした。正直、とても怖かった。


「は、早く登校する分には別に構わないでしょ!?」

「まぁな。というか、人が本格的に教室に入ってくるのはもう少し後なんだな」


 窓に向けていた顔を教室に戻し、見渡すほどの広さもない教室内部を見て言う。俺のクラスは比較的登校時間が遅い方である。

 一時間目が始まるまでに随分と時間があるので、誰もいないのは当たり前の事なのだが、それでも人のいない教室というのは、寂しく感じるものだ。尤も、人がいたらいたで喧しいという印象しか持てず、俺が教室への認識を改めることはないだろうが。そも、学校が余り好きではない俺が教室を好きとか言い出したら、榊に脳の心配をされてしまったりするのだろう。


「誰もいない教室っていうのは、こう、感慨深いものがあるね」


 榊がそんなこと言う。

 おそらく、思った通りの言葉を口にしたに違いないのだろうが、しかし、榊の過去を知っている俺としては、榊のその発言はとても本心とは思えなかった。

 榊は、既に二回、イジメにあっているのだから。

 だから、俺は彼女の発言に同意は出来ても理解はできないのだ。


「……あぁ、そうだな」


 同意は出来る。

 彼女の発言を深く追求したところで、俺の手に入る益は何もない。深く追求することによって、以前のように塞ぎこまれても困る。だから、俺がするのは同意だけ。彼女の意見に突っ込んだりはしない。


「ふふ、今なら二人きりだね」

「おい、バカ、やめろ。そういう二人きりフラグは確実に男子が無実の罪で断罪されるフラグか、勘違いされて誤解解くのが大変なフラグなんだよ!」

「はっはー、そんなご都合主義起こるはずがないよ!」


 榊がそう言った瞬間、無情にも扉が大きな音を立てて開け放たれる。扉が壁にぶつかり跳ね返った音が教室に響き渡る前に、入室者は大声で叫ぶ。


「いっえーい!一番のりぃ!」

「ふわぁ……、彗ちゃんうるさ……あ、ごめん邪魔しちゃった?」


 諏佐原が大声で叫び入ってきて後に欠伸を噛み殺しながら入ってきたのは、楔。諏佐原のことをたしなめようとしたときに俺達の姿を発見して、苦笑いを作り聞いてくる。

 その苦笑いは、諏佐原の迷惑な行動に諦めたものか、それとも俺と榊の二人きりだと言うシチュエーションを諏佐原がぶち壊したことによるものだろうか。どちらにせよ、ひとつ確かなことはとりあえず諏佐原がうるさいと言うことだ。俺は榊の方へと視線をやると、慌てた様子はなく静かに佇んでいるようだ。俺の以前のアドバイスが効いているかどうかは分からないが、少なくともテンパってはいないようだった。まぁ、邪魔したも何も始まっていなし、邪なことなど行っていないのだから平然にしているのは当然だろう。どうやら、微笑んでいるだけのようなので、俺が対応した方がいいだろう。


「……お、おはよう楔」

「やっぱり、お邪魔だった?」

「いや、そんなことはないぞ!」


 返事をしたら、声が震えてしまった。

 そんな俺の声の震えを、機敏に聞き取った楔の口から出た言葉は俺への配慮だった。少しばかり、気を使いすぎる友人を前に俺は対処法を考える。そうだ、今のは俺がなかったことにしようとしたかのように、挨拶をしたから、そんな風に対応されてしまった訳だ。つまり、きっぱりすっぱり否定してしまえばいい。


「本当に何もなかったんだ」

「うん、わかったよ……。そういう事なんだね」


 ……ど う い う こ と で す か ?

 楔が若干涙ぐんだような動きを見せながら、悟った風に言う。これは、あれだ。諦めよう。捨て駒ってやつだ。犠牲にするしかない。すまない、榊。俺には誤解は解くのは無理だったよ。あとは任せた。

 そこまで考えたとき、諏佐原達が教室に入ってから、不動を貫いていた榊が、動いた。


「…神座、諦めよう」


 俺の方へと。

 諦めを促すかのように俺の肩に置かれた榊の手は、なぜか女性とは思えないほどの怪力で俺の肩を鷲掴みにして、有無を言わせない雰囲気が漂う。また、その顔は微笑みから一切変わっておらず、ことここに至って俺は初めて気が付いた。俺でさえ、最初は否定しようとしていたのに――。


 こいつ最初から否定することを諦めてやがる!


 なるほど確かに俺は、噂や誤解といったものは必死に否定すれば否定するほど逆に信憑性が増すから落ち着いて対応しろと言った。が、榊は俺が言ったせいか曲解して受け取り、否定するぐらいなら諦めろと受け取ったのかもしれない。

 あり得ない話ではない。榊は俺の幼馴染みをやっているのだ。俺が榊の影響を受け、朝早起き出来る人間になったように、榊が俺の偏った思考に影響を受けていても不思議ではない。朱に交われば朱に染まるという言葉もあるように、人間とは互いに影響を与えあって生きているのだ。十数年間一緒に居た俺と榊が互いに影響を与えあっていてもなんら不思議ではない……のだが、しかし今更になって影響を受けるというのも不思議な話である。最近になって、意地が悪くなってきているし、これはあれだな。深く考えたら負けというやつだ。人生、諦めが大事。

 俺はため息をついた。チェックメイト。こうして、世の中の勘違いされた人々は糾弾されていくのか……。


「ま、事情は人それぞれだしね。僕は気にしないよ」


 俺が渋々諦めた様子を見て、楔は俺を慰めるように言葉を発する。違う、そうじゃないんだ……。

 俺は彼の言葉の受け取りを拒絶するように窓の外に目をやり、そこで視界に入った光景にうんざりし、再びため息をつく。そんな俺の視線に気付いたのか、榊も窓の外に目をやる。俺がため息をついた原因を知ったのか苦虫をすりつぶしたような表情を浮かべる。


「……だから、風紀委員は嫌いなんだ」


 登校したときから時間も過ぎ風紀委員も登校している。数多くの人間が風紀委員に指導されているなか、唯一の特例が悠々と校舎までの道を歩いてくる。

 俺の目に写る光景は、俺が最も嫌うもの。

 ハーレム主人公、幸崎光輝は、周りを女子に美少女達に囲まれながらもそれをもはや当然のことと享受しているようだった。やはり、俺の戯れ事に耳を傾けてもいない。所詮、俺の言葉だからと流したのだろうか。俺が、先月のサッカーの体育が終わったときのことを回想しながら、幸崎を睨み付ける。目敏くこちらに気付いた空谷は苦笑をするばかりだった。他の女子は気付きもしないというのに、やはり苦労人は違うというのだろうか。

 空谷以外、幸崎しか目に入っていない状況という理不尽を窓から客観的に眺めていた俺は、何もやる気が起きなくなり窓から離れ、榊が何かを言いたそうにしていたが、それは後にしてもらい、ひとまず自らの机でやるせない気持ちを消化するためふて寝することにした。

 空谷のわりかし友好的な視線とは全く違う、敵意剥き出しの視線を窓から離れる俺の背中に向けられているとは気づかずに。

第36話。

時間がとれたので、更新。

新キャラを考えているので、早く進みたいなぁと思いながら。

次回の更新も未定。

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