俺と幼馴染みの草案
「……神座、大丈夫?」
俺の超絶外道発言カッコカリ、により、俺がクラブの同級生と後輩にテラ引かれてしまったことにより、御開きとなった。どれ程引かれたのかをざっくり説明すると、あの凄いという言葉を体現したような、おおよそ並の人間の出来ることならば出来てしまう榊にでさえフォローが出来ないと言われてしまうレベルであった。あのときは、全俺が泣いた。
「正直、お前らのゴミを見るような目がとても堪えた」
「あー……うん、ごめんね」
「別に謝る事じゃないだろ……。どうやら俺の台詞がゲス過ぎたようですし?」
榊の普段と違ったマトモな対応に少々面食らうものの、そんなマジで対応するのなら最初からやるなよという意味も込めて、疑問符と共に語尾の音をあげることで、皮肉る。皮肉るという言葉が有るかは分からないが、文字で何となく察してくれればそれでいい。おおよそ、意味が大きく食い違うということはないだろう。
俺の言葉に、俺が拗ねていると思ったのか、榊は少しだけペースを上げて、俺の前に立ちはだかる。短くなった髪がフワリと揺れて、手を後ろに組んで鞄を持ち、こちらを振り向くその姿は、まるで青春映画のワンシーンのようだ。そんな彼女の口から出てきた言葉は。
「……はぁー、これだから神座は、いつまでたっても神座なんだよ」
「それはあれか?俺の名前が劣等の例として使われてると考えてもいいのか?」
「うん!」
大きく。
それはもう大きく頷く榊。
……こいつの方が俺よりよっぽど性格悪いんじゃないか?いったら、こてんぱんにされるから言わないけど。榊のファンっぽい人たちに。
「ま、神座が雑魚で、ヘタレで、劣等なんて今に始まった事じゃないけどね」
俺に対する酷評が酷い。
言葉を誤用しちゃうぐらい衝撃である。俺、何か悪いことしただろうか……。自分の心に聞いてみると、ざっと三桁は越えそうなのでやめておいた。三桁越えそうなことよりも、三桁もの心当りを覚えていることの方が気持ち悪くなりそうだった。俺の記憶力の無駄遣いが半端ない。記憶って、当然のことながら上限の決まってる脳の容量使うんだぜ。それにしても辛辣である。榊もまた、俺と同様に風紀委員ちゃんに腹を立てているに違いない。そうだ!きっと、そのはずだ!
決して、俺の責任転嫁のゲス発言に腹を立てているのではないはず。これも全て、女子にモテる幸崎が悪い!
……いや、流石にそれは言い過ぎかもしれん。冷静になってみると、結構酷いこと言ってるな、俺。
「……ざ!神座!聞いてる!?」
「あ、悪い聞いてなかった」
「はぁ、そんなことだろうと思ったよ」
「榊、今日はため息が多いな」
誰のせいだと思っているのかな?と榊は俺に問いかける。榊の心労になっている奴がいる…だと!?
俺が見つけたら、絶対そいつを論破してやると考えていると、榊は何かを悟ったのか、もう一度だけ溜め息をつく。
「明日から、どうしようっか。今日みたいな嘘がずっと通じる訳でもないし……」
「去年みたいに、バラバラで行くしかないか」
「うーん、それはねぇ、ちょっと嫌だなーって」
「ん?なんか理由でもあんのか?……いや、やっぱりいいや」
俺が、去年と同じ方法を提案すると、眉を潜め難色を示す榊。
まぁ、確かに最近は下校時間だけでなく、登校時間も物騒だしな。やっぱり、二人で一緒に登校した方が安全か。俺は、そこまで考えて先程の提案を取り消すことにした。この間、0.5秒。
「べ、別に、一緒に行きたくない訳じゃないからな」
「……照れればいいのか、ネタとして扱えばいいのか微妙なラインだね」
質問をしたときに、その質問を打ち消すのに最も有効な方法は、それを取り消すような言葉を話せば言い訳だが、それだとたまに、いや聞きたいことがあったんだろ?と言ってグイグイ来る奴がいる。そんなときに使うといいのが、こういうネタっぽい反応である。……おい、今、お前の友達にグイグイ聞いてくる奴いないだろって言った奴! 確かに居ねぇよ! 自分で言ってて悲しくなるわ!
「まぁ、神座が私を労って、心配してくれてることは伝わったよ。ありがとう」
「……どう考えても、そんな流れじゃなかっただろうに」
「ん?何か言った?」
唐突に榊が発した感謝の言葉と笑顔に戸惑った俺は、右手の人差し指で頬を描きながら、照れた風に小声で呟く。いつの間にか数歩俺の前に進んでいた榊は、振り替えって俺に何と言ったか問うが、俺がそれに答えることはない。随分と急な難聴である。何時もならば聞こえてたのにな。
「でも、問題が解決した訳じゃないんだよねー」
そうなのである。
やはり、俺の数歩先で首を上に向けていた榊はくるりと回転してこちらを向き(見ようによっては立ちはだかったのかのように見えなくもない)そして、議論をリセットする。何か、いい案は無いものだろうか……。何せ相手は、あの聖人君子である、楔ですら呼び止めてしまうほどの強敵。一筋縄ではいかないのは確かだろう。ある程度の苦労を背負わなければ、突破できないに違いない。つーか、校門前に並ばれたら、マジで鉄壁過ぎて破れる気がしない。流石に二日連続で今日やった技が通じるとは思えない。あ、でも今日は真になっちゃったから、俺の言葉に信憑性が出たはず。明日もいけるかもしれない。
「……神座。同じ手は二度は通用しないと思うんだけど」
そこまで思考が到達したところで、榊によるストップがかかった。この娘はいつの間に読心術を身に付けたのだろうか。それにしてもこの方法が使えないとなると、もう方法が無いぞ……。だって、校門前で皆目ぇ光らせてるしな……、特に男子が。
「風紀委員がいなければ、こんな面倒なことにはならないんだがな……」
「ははっ、それはその通りだけど、実際問題風紀委員は校門に居るわけ…で……。あっ!凄い画期的で斬新な風紀委員スルー方を思い付いちゃった!」
榊が、何か閃いたようで、笑顔を浮かべている。画期的で斬新な方法ねぇ……。
俺が他の方法を出せない以上、それを行うしかない。
かくして、俺と榊による、画期的な風紀委員スルー方が行われることになった。
……期待はしないでおこう。
第三十五話。
気がついたら、一ヶ月過ぎていたので、焦って話を書きました。
全く、余計なことは言うもんじゃないですね。




