俺は幼馴染みにフォローされない
「ひ、酷いっす!簪先輩の鬼!鬼畜!」
鼻の頭をさすりながら、俺を恨みがましい目で睨んでくる古幡後輩。とんだとばっちりである。というか、鬼と鬼畜って微妙に意味被ってる気がしないでもない。まぁ、なんか恨み言言ってるが、恐らく自業自得だろう。そう、俺には全くもって関係ないはずだ。
「先輩なら、僕を受け止めてくれるって信じてたのに!!」
「黙れ古幡後輩。俺がそんな優しい先輩に見えるか?」
「見えないっす!」
……流石に即答されるとは思っていなかったので、ちょっとショックだった。見えないんだったら飛び込むなよと思うが。俺にも非が一%はあるかもしれないと思った、慈悲深き俺に謝れ。俺がそう思っていると、隣にいる榊がおもむろに口を開く。
「まっ、神座が優しい人間に見えたら人として終わりだよね」
「……それ以上言ったら泣くからな?」
何故か俺が言葉で叩かれている。何でこんな炎上してんの?なんか俺失言したっけ……?記憶を掘り返してみても思い当たる節がない。ふむ、俺は生来の嫌われ体質なのかもしれない。……なにそれ、人生ハードモードどころじゃすまない。俺がそんな体質ではないことを切に祈ろう。
「先輩、風紀委員のこと知ってたんすよね?」
「え?何のことかな?」
「神座のしれっと素知らぬふりしているその様子が、知っていることを言外に伝えているんだけど」
「おい馬鹿、榊。俺が知ってたってバレるじゃねぇか!」
「それを大声でいう先輩もどうかと思うんすけど」
「……そうか、悪かった。ごめんな、並譜さん」
「えぇ、あ、はい」
「僕に対しての謝罪は!?」
古幡後輩の言葉で、俺の脳内会議が開始される。論題は、古幡後輩に謝罪するか否か。正直、彼に謝ってもなぁ。自分で調べて来ない古幡後輩が悪い。並譜さんに謝ったし良くね?
……満場一致で、謝罪拒否だった。どうでもいいが俺の脳内でも呼び名は古幡後輩は古幡後輩だった。とりあえず、古幡後輩には結論だけでも伝えておく必要があるだろう。無視したと思われるのは嫌だし。
「拒否で」
「ぞんざいな扱い!!」
「並譜さんからもこの駄々っ子に言ってやってくれないか?」
「……駄目だよ吹雪くん。現実は認めなきゃ」
「……並譜さんもそっち側なんすか!?」
――並譜さんがいつからお前の味方だと錯覚していた?
使命感に借られて、言おうか迷ったが、これ以上いうと本当に泣いてしまいそうなのでやめた。俺の慈悲深さに感謝するんだな!
ふと隣の神座を見ると、俺から距離をとっていて楔の横にいる。この距離は俺と榊の心の距離を指し示す。つまるところ、結論を述べると、ボクはいま榊サンにとても引かれています。
「なんか、神座ちょっと暴走してるね」
「楔くん、彼はきっと、後輩に鬼や鬼畜と言われて、きずついているのです。察して上げて下さい」
幼馴染みに敬語で状況を述べられるとグッと来るものがある。榊がとてもよそよそしいです。これが本物の他人行儀かと思うレベル。もはや、幼馴染みが行う対応ではない。全国探しても、こんな対応されるのはごくわずかである。よく言えば凄くレア。こんなレア全然嬉しくない。ついでに、彼女の慈愛に満ちた目が、俺の羞恥をくすぐるというか、生暖かい目など目ではないというか。とにかく、弱いものいじめしている気分である。
「…………」
「おい、古幡後輩、なんだその何か言いたげな目は」
「……俺が悪かったっす……」
「憐れむなよ!?俺が惨めになっちゃうだろうが!」
結局、楔クンと榊サンの余計な一言で、俺が憐れまれてしまうのでした。めでたくなし、めでたくなし。
「さて、神座が弄っているように見せかけて、逆にいじり返すという、逆ドッキリのような事もすんだことだし、本題に入ろうか?」
「事前打ち合わせなしで、あれだけの連係プレーを見せてくれるとはな……」
もう、お前らアイコンタクトだけで会話できるんじゃねぇの。ひとりぼっちになった俺はきっと隅っこで携帯でも弄っておくから。どうせ、俺が弄れるのは携帯ぐらいですよ。
「ほらほら、拗ねないの神座。神座にも非があったでしょ?」
「……っち!」
「うわぁ、全く反省の色が見えない全力の舌打ち。もう、私たちが悪かったってば」
「で、簪先輩。あれは何なんですか?」
古幡後輩がこちらを見て、訪ねてくる。あれってのは、きっと朝の風紀委員の風紀取り締まりキャンペーン(仮)のことを言っているんだろう。説明しろと言われると、その言葉の通りであるというか、説明しにくいというか。例えるなら、左とは何か、辞書風に説明しろと言われているようなもので、とても説明がしにくい。これは、決して俺の語彙力がショボいからとかではなく、純粋に言葉で説明するのが難しいからである。しばらく考えて、やはりシンプル・イズ・ザ・ベストという言葉もあることだし、出来るだけ率直に事実だけを告げることにした。
「あれは……そうだな。リア充撲滅活動+αってところか」
「う、うわー……」
「間違っていないけど、出来るだけ悪質な選び、特に+αのところに風紀委員の良いところを含める辺りが神座だよね! 」
事実だけを告げた筈なのに、何故か引かれていた(二度目)。正直、俺が発言するたびに引かれている気がしてしょうがない。俺を誉めたのは榊だけである。俺は何か間違ったことをいったのだろうか。
「ま、それで間違ってはいないんだけどね」
「……回避する方法は無いんですか」
俺に引いていた古幡後輩もなんとか持ち直したようで、テンションの低いまま俺に訪ねてくる。知るか、と言いたいところだが、ここで彼らに回避方法を教えておけば、俺の下がった株を上昇させることができる、つまりプラスマイマスゼロに持っていけるのではないのだろうか。流石に、クラブの仲間に嫌われたままで入れるほど、俺のメンタルは鉄壁ではないので、ここらで汚名返上しておく必要があると見た。
「回避する方法を教えてやろうか?」
「知ってるんすか!?」
俺が知っている風なことを言うと、古幡後輩は目を輝かせて、食いついた。
「あぁ、知っている。……適当な方向を呼び指して、『あ!幸崎先輩!』って言えば回避できるぞ」
「……先輩を信じた僕が馬鹿でした」
二度あることは三度ある。俺の他人を犠牲に自分は生き残る処世術は理解されず、三度引かれてしまいましたとさ。俺には、汚名返上という言葉は似合わないのかもしれない。榊の方に視線を向けると、顔を剃らされる。
「流石の私もフォロー出来ないゲスさ」
「……マジか」
第34話。
いつもよりゲスく見えるのはきっと気のせい。
次回こそは一ヶ月以内の投稿が目標。




