第8話~悪魔と人間~
どうも白髪大魔王です。あまりいい作品では無いかもしれませんが、最後までおつきあいお願いいたします。
「ベルゼブブ!!」
アグリッパの声に呼応して、明かに変化が起きた。
空気が肌を刺すほど冷え、本来は明るいはずなのにまるで周りは光という光を奪い去ったかのような空間になった。ここだけが異世界になってしまったようだ。
そして上空には、墨で塗り潰したような漆黒が点在している。
「嘘…でしよ?」
雅が目の前の現象に追い付いていけず、唖然としている。俺だって信じられ無い。
すると突然、その漆黒が少しずつ形を作り始めた。
まず最初に足と思われる細い棒状のものが生まれ始めた。全部で六本。次は羽のようなものが一対でき始めた。しかし、その羽は鳥の翼のようには美しくなく、汚い虫の羽に似ていた。
そう、この姿は…
「蠅…?」
「初めて見るであろう、これが蠅の王ベルゼブブだ!!」
蠅の王、そんなことは知らない。しかし、そんな俺でも分かることがある。まともに戦うとしたらこの蠅には勝てない。
大きさだけでも常人の2倍もの大きさがある。更には得体の知れない存在への恐怖もある。こんなの、勝てるはずが無い。
一体、どうすれば…。
「セツナ…、どうしよう…」
雅が漏らした不安げな声で気付いた。これは勝たなくてもいいんだ。勝つのは目標じゃない、雅を守ることだ。ならば無理に勝たなくてもいい、逃げればいいんだ。
殴られ、地面に突っ伏した自分の体に鞭打って起き上がった。
「雅、逃げるぞ」
「えっ?ちょっ!」
雅の腕をとり、悲鳴を上げる体を引きづるようにして走った。一刻も早くここから逃げる。雅を連れて逃げる。
俺が出来るのは、ただそれだけだった。
「敵わないとみて逃げるか。中々いい判断だ。しかし、敵に背を向けるのは失敗だな」
後ろからアグリッパのそんな声が聞こえた瞬間だった。
グバァッ!!
「セツナ!!」
肉を無理矢理引き裂く音と、雅の悲鳴。この二つが俺の鼓膜を揺らす。
そして俺は自分の意思とは無関係にまたも倒れた。
引き裂かれたのは俺の脇腹だった。
「ベルゼブブは蠅の王。人間ごときが逃げれると思うな」
そうだった、ベルゼブブは蠅だったのだ。大抵の生き物は体が大きい程に動きが遅くなるのが常識だが相手は悪魔。しかも蠅。それに人間の足が敵うはずがなかったのだ。
どんなに悔やんでも後の祭り、幸いなのは傷は思ったよりは浅かったことだがそれも意味は無い。どちらにしろここで俺達はやられる。
いや、殺される。
「去らばだ、若造」
最後に、雅だけは…守りたかった。
最後まで読んで頂き、有り難うございます。これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします。