第7話~召喚~
またまた遅くなりました、白髪大魔王です。まあ、温かい目で見守って下さい。最後までお付き合いお願いします。
「断ります」
雅はそうはっきりと告げた。
男、いや、アグリッパはやれやれというふうに首を振る。
「残念です。貴女なら我々の考えに賛同してくれると思ったのですが…。仕方ありません。多少強引な手を使ってでも連れてこいとの命令でしたので、ご容赦ください」
ヤバイ!!
俺は嫌な予感がして、雅とアグリッパの間に身を滑り込ませた。その瞬間、俺の鳩尾を圧倒的な圧力が襲ってきた。
「――――――ゴハァッ!!」
「ほう、私の攻撃を読んだか」
くらってから気付いたが、これはアグリッパのボディブローだった。まともにもらって、俺の意識はチカチカし始める。
だが、ここで気を失ってはいけない。
このまま俺が気を失ったら雅は‥‥。
「ぐがぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」
全身に渇を入れて、俺は自分もろともアグリッパを地面に押し倒す…はずだった。
「フンッ!」
だが、アグリッパは倒れる寸前に俺と自分の体を入れ替えた。
「カハッ」
結局、自分だけ無様に地に伏せて、アグリッパは何事も無かったかの如く佇んでいる。
「中々だな小僧。私の拳をその身に受け、尚且つ反撃を試みるとは、見上げた根性だ。褒美に私の力の片鱗、見せてやろう」
そう言うと腕の裾をたくりあげて肌を見せてきた。
しかし、その腕は人の腕とは思えない姿だった。具体的に言うなら、恐ろしい程のタトゥーが腕いっぱいにいれられていたのだ。
「このタトゥーは悪魔召喚の術式を仕上げたもの。これで一つの魔方陣になっている。つまり、私は術式を新たに仕上げることなく悪魔召喚が可能なのだ」
「‥‥そんなこと…」
今までこの状況を見ていることしかできていなかった雅が口を開いた。
「そんなこと、できるはず無い。だって、悪魔召喚には常人以上の魔力が必要だもの。貴方からはそれを感じられない」
アグリッパはそれを聞くと静かに笑い始めた。目の前で倒れている俺を無視して。
「クククッ、そうですね、雅様は存じ上げていなかったですね、『反魂の術』のことを」
笑いを止めると、また落ち着きはらってアグリッパは語った。
「『反魂の術』、これはアストラル界の力を利用する一種の召喚術なのです」
‥‥‥意味が分からない。
アストラル界とは、この世とあの世とは別にあり、しかしどちらにも同時に重なっている世界のこと。
生命力、魔力、神秘、全てが溢れんばかりに満ちている世界。魔術体系で呼び方は様々で一貫性が無いが、常に同じものを指している。妖怪や悪魔、妖精もここにいるとされている。
しかし、そこは特定の人物しか行けず、現世での利用は困難とされている。
「まあ、信じられ無いのも分かります。ですから、御覧に差し上げましょう!!」
アグリッパはたくりあげた右腕を水平になるまで持ち上げ、言葉を放ち始めた。
「異なる世界より、神聖なる世界へ命を送る。刻まれし証にて、その理に従い現世にその身をやつせ。その名は」
アグリッパは一呼吸於いて、一際威厳のある声でその名を言った。
「ベルゼブブ!!」
最後までお付き合い頂き、有り難うございます。これからもボチボチ書いていきます。