第6話~アグリッパ~
どうも、白髪大魔王です。更新が遅くなりました。謝辞は後書きで述べますので、最後までお付き合いお願いします。
放課後
「えー、それでは実行委員の皆さんは今日は残ってくださ
い。他の人たちは解散です」
学級委員長、兼実行委員長の神凪美香の号令により、ここは
一旦解散になった。
俺達のクラスでは、まず今日決まった実行委員会の人達がク
ラスの出し物の候補をいくつか挙げておき、次にクラス全員
で民主的に出し物を決める、というやり方だ。
俺も雅も委員会はやらなかったが、銀だけは自分から立候補
した。昔から―と言っても、知り合ったのは高校からだが―
から銀はこういうのが好きなのだ。
いつもとは違い、銀がいないことに多少の違和感を覚えなが
ら俺と雅は歩いている。
なんだろう、普段の雅は馬鹿みたいな会話をしながら歩くの
に今回は押し黙ったままだ。
なにか、悪いことしたっけ?
「なあ、雅」
「ふぇ?あっ、はい!」
急な話に驚いたのか、雅は声を裏返しながら(敬語で)返事
をした。
「あのさぁ、さっきっからずっと黙ったままだけどどうし
た?熱でもあるのか?」
「何でも無いって、本当本当」
「……そうか」
まさか、セツナをダンス祭にどう誘うかを悩んでいたとは言
えない雅である。
「まあ、無理はするなよ」
そう言ってセツナが笑い掛けたそのときだった。
「お迎えに上がりました、阿部雅様」
俺達の目の前にスッと現れたのは、見慣れない一人の男だっ
た。
動き易そうなラフな格好、それが男の逞しさを強調してい
る。身長は俺より高い、180㎝くらい。何よりも特徴的なの
はその刃物より鋭い眼光だ。もし本当に睨むだけで人を殺せ
るなら、この男は幾人もの人を殺してきただろう。
俺は意を決して尋ねた。
「あの、…どちら様でしょうか?」
「貴様に用事は無い」
鋭く放たれた言葉は、俺達を萎縮させるのに充分だった。
「すいません、もしかして人違いでは…」
今度は雅が恐る恐る尋ねると、しかし男は首を横にふった。
「いいえ、貴女様で間違いありません。安倍晴明の血を最も
色濃く受けついている人は雅様しかいません。それを間違え
ることなどありません」
安倍晴明!!
偶然なはずが無い、まさかこいつは…
「申し遅れました。私、『熾天滅欲自然信仰社』のメンバー
の一人、ハインリヒ・コルネリウスアグリッパと申します。
名乗り遅れた無礼をお許し願います」
やはりそうだ、こいつは昨日電波ジャックをした奴らの一人
だったのだ。
だが、
「お前、嘘をつくんじゃない。アグリッパというのは嘘なん
だろ!!」
そう、アグリッパなどいるはずが無いのだ。
アグリッパ、16世紀ドイツの錬金術師であり悪魔召喚師
また、それだけでな
く医師、軍人としても名を馳せた歴史上の人物だ。
16世紀の人間が今の時代にいるはずが無い。
「確かに、私は本物のアグリッパではない。本物が生きてい
るはずが無い。しかし、そのアグリッパと同等の実力を持つ
が故にこの名をいただいたのだ。もっとも、私の使う魔術は
それと少し違うが」
信じられない話ではあるが、この男の口調には自信が溢れて
いる。一概に嘘とは言えないのかもしれない。
「無駄話は終わりだ。雅様、私達と一緒に行きましょう」
雅は大きく息を吸って、少し溜め、はっきりと言った。
「断ります」
最後まで読んでいただき、有り難うございます。諸々の事情で遅れました。今後も少し遅くなりますが完結まで書くつもりです。宜しくお願いします。