006
【年が明けて、冬休みのとある日】
「…春季大会?」
「あぁ、そうだ。今度の冬季大会は、ちょっと都合により中止となってしまった。
だから、次の地区大会の予選に勝ち進むと、その春季大会がお前たちの最後の試合となる。」
「…マジすか。」
驚きを隠せない、2年生。
それもそのはず、3年生が引退してしまってある程度月日がたって、
まだ3度目の大会を目前にして引退試合の話をされてしまったのだ。
「すまないな。今年は不幸が続いててな…。前会長が亡くなったため、私が次期会長に指名されてしまったのだ。」
「えぇ!?先生がっスか!?」
「…これでも昔はオリンピックの選手の候補だったからな。
怪我で引退するまでは。」
「怪我…か。」
「まぁその話はまた暇なときにしてやる。
次の試合まで期間が空いてしまったから、また基礎から始める。部長、頼むぞ。」
「あっ、でもその前に今日やるチーム決めはどうするんです?破棄ですか?」
ちょっと先生は考え込み、椅子から立ち上がって言った。
「いい機会だ。まだチーム決めには早くなってしまったが、今日からランク決めをしよう。
しばらくは今日から決めるチームごとにメニューを片付けろ!!」
「はい!!」
ランク決めというのは、この白雪中学校のバドミントン部の中で7人程度に区切ってA・B・C…と、
団体や個人戦に出場するメンバーを強さ順に決めていくシステム。
勿論、上から順に団体戦からなにから決められていくので、友人同士でも気が引けない戦いとなる。
その中でも本当に平均的な力しかない山下はCランクだった。
「お前はCランクからの順位争いだな。Bにならなきゃ団体戦出られないぜ?ww」
「うるせぇ。俺の外周ランニングのタイム見てみろ。」
準備体操をしながら言う。
そして、友人の山上がタイムボードを見て驚いた。
「11分11秒!?お前、いつからそんなに早くなってた!?この間なんて15分台だったろ!」
「へっへー。何故か体力がいきなり上がったんだよね。俺でもびっくりだよ。」
「…まぁいいさ、俺に追いついてみろって!一緒にダブルス組もうぜ!」
「上等だ!」
「…くッ!!」
パァン
パシィッ
「せいっ!!」
バシュゥン!
トンッ
「サービスオーバー、トゥエンティーワン・エイティ。ゲームセット!」
Cランクの最後の試合は、山下が相手のロブを巧みにスマッシュで決めて、ゲームセットとなった。
「くっそ…俺の負けだ。」
「っへっへー!やりい!! さぁて、次はBランクの奴だけど誰だ?」
Cランクの上位をもぎ取った隆は、喜びに満ち溢れんばかりの顔だった。
各グループの第一位は、もうワンランク上の最下位と闘うことになっている。
その相手とは…
「…え。山下?」
「…うわ。お前かよ…冗談だろ…」
やはりというか、なんというか、笠島愛だった。