005
「お、おい、冗談だろ…?」
いくらこの世界が狭いっつったってそんなことありえるのかよ…
この間知り合ったばかりの友人が、今現在部活動仲間としてよろしくやっている奴と幼馴染…?
そしてそいつとこの杉山は、なんということでしょう…
共通して俺の隣の席だ…
いやそれはどうでもいいんですけど、この世界狭過ぎ。
もうちょっと広く作ろうぜ?神様。
「…まさか私も愛と山下が友人だったなんて…そして部活動も一緒なの?信じられない…」
と、いいつつも何故か杉山の瞳は輝きに満ち溢れていた。
もうキラキラキラリン。
レボリューション。
…あぁ、女の子ってこういう運命的な何かを信じちゃったりしますよね。うん。
「…どうやって知りあっていたんだ?お前ら。」
「私達は、幼稚園から通ってた同じ体操のクラブに所属していたんだよ。そこで知り合ったの。」
「へー?じゃあ二人は体柔らかいんだ?」
「山下硬そうだよねーww」
「マット運動は得意なんだけどなぁ。体はガッチガチだけど。」
嘘ではない。
マット運動においてはクラス一の成績を取ったことがある。
しかし、体操部がこの学校には存在しなかったため、そこに入るのは諦めていた。
…でも、もし仮に俺と杉山の通う中学校に体操部があったとしたら、そこでも出会ってたかもしれないんだよな…。
やっぱこの世界狭いわ。
「あっ、じゃあ私そこの交差点渡ったとこだからここで良いよ!山下は遠回りになっちゃうし。」
「ん?そうか?じゃあ、また今度な!」
「うん!今度、愛にお手紙書くから郵便屋さんお願いね!」
「…俺はフクロウ便か何かかよ?」
「ww バイバイ、山下!」
「おう。」
まるで小学生のようなスキップ調で交差点を渡って行き、杉山は視界から消えた。
【夏休み明け初日の部活動】
「おい笠島!手紙だ。受け取れ。」
「あらやだラブレター?それならすぐに羽の折れたシャトルと一緒に捨ててきてね。」
「違うわアホか。…杉山柚って知ってるか?」
と、杉山の名前を出した途端に笠島の目の色が変わった。
…いや、悪い方ではない。
爛々とラメの入ったように輝きだしたのだから。
「ユズ!?うっそぉ!!何あんた柚の彼氏!?えぇええ!?ユズ、見る目なさすぎ!!」
「少し黙れバド部のスピーカー女。彼氏じゃねぇしあいつは俺の彼女でもねーよ。」
「じゃあ他に彼氏いるの!?」
「そこまで知らないわ!!!とにかく受け取れ!!」
…そういえば、あいつ、彼氏いるのか?
そんな素振りは見せてないしなぁ。俺と一緒に帰ったくらいだし。
「わー!わー!何年振りだろうなぁお手紙交換なんて!」
「…パーっと目を通したらランニング行くぞスピーカー。今体育館に居るの俺とお前だけだぞ。」
「えぇっ!! 急がなきゃ!!」
その日の部活動は、何故だか杉山の彼氏の有無のことで頭が一杯だった。