002
「ガンバぁ!!」
「「はい!!」」
と、体育館内に威勢の良い声が響き渡る。
白雪中独特の元気を出す方法なんだとか。
一人が言うと、ネズミ算式に言う人が増えて行くので、二人で被って言ってしまい、恥をかくこともしばしば。
と。
「ガンバぁ!!」
「ガンバぁ!!」
「はい!!…って、お前ら何一緒になって言ってんだよwww」
「あ!?お前、真似すんな!!」
「そっちこそ!!」
隣のコートで基礎フットワークをしながら言い合う二人。
笠島と隆の声が一緒になってしまった。
…よくあることだが、あの席替えのせいでどうも暇な神様が俺達を使って遊んでいるようにしか思えない。
…暇を持て余した
神々の
遊び…
とはよく言った物だな…。
「よし、そこまでー!!では、次の大会は修学旅行前の春季大会だから気を引き締めて頑張れよー。
片付けしたら予定表を配るので部長は後で職員室前に集合!!解散っ!!」
「ありがとうございましたぁ!!」
と、一通りの部活が終了する。
「…っし。終了!んじゃ、俺先帰るわー。」
「あー?お前、何処行くんだよ?」
「塾だよ塾!」
と、隆はすぐに走って生徒玄関の方へと行ってしまった。
「…あいつ、最近調子いいよな…。ランニングのタイムも向上しっぱなしだし、バドも強くなってきてるし。」
「最初が平均以下ならなおさらだろ。今まで力を開放しきってなかったんじゃねーの?」
「何その厨二病ww」
「…へっ、へっくし。 …あー、風邪ひいたかな?でも俺バカだしな…。噂か。」
【春季大会から一年前の塾の夏期講習】
「今日から夏季講習か。前さん、席俺の前だぜ!」
「あー、そうか。んじゃカバン頼むわ。ちょっと飲み物買ってくる。」
と、前さん…こと、前谷秀。この塾で出来た友人だ。
前谷にカバンをほっぽられて受けとる隆。
「えー…おもっ。何入ってんだよ…。」
と、座席票を見上げる。
すると、目に覚えのない名前が一人書かれていた。俺の隣に。
「…杉山…柚?新しく入ってきた奴か。違う中学校かな?見たことない名前だし。」
そして、教室に入る。
そこには、俺の席の隣に座っていた女子の姿があった。
おさげ髪で涼しそうなワンピース。いかにもお嬢様という感じ。そんな第一印象だった。
「…新しく…来た人?」
俺はそういいながら自分の席に荷物を置く。
「…え?うぁあ、あ、はい!鏡野中の杉山です。よ、よろしくっ!」
突然話しかけられたことにびっくりしたのだろうか、戸惑いながら返事をしてくれた。
「いやいや、緊張しなくていーよ。隣なんだし、よろしくね。杉山さん。」
「う、うん!」
それが、俺と杉山の出会いだった。