014
「いっけえええええええええええええええ!!!!」
「っしゃああああああああああああああああああ!!」
普通に試合をやっていては絶対にとることのできないシャトル。
いくらオリンピックの選手とは言えこんな戦法をされてしまっては取れはしないだろう。
しかし
コートの一番後ろのラインから、床の上を滑るようにして山下は飛んだ。
まるでハヤブサのように、ラケットを嘴の如く突き出して落ちてくるシャトルめがけて急加速。
右肩部分のナイロン製のユニフォームが焼けるように熱い。
でもそのユニフォームの素材でなければ床を滑ることはできない。
野球の滑り込みホームインにも見えるその光景は杉山の目にも焼きついていた。
そして…
パシィンッ
と、渇いた弾けるような音とコンマ数秒遅れ、机や椅子が倒れるような大きな音が体育館内に響いた。
ガシャァン
ガラガラガラ
ガンッ ガンッ ガシャアァンッ
コォンッ…
山下は、コート脇に座っている点数版と審判の場所へと突っ込んで行った。
審判は危険を察知して椅子から飛び降り、その椅子や机が滑り込んで行った山下の上に襲いかかった。
「山下ァッ!!!!!」
「キャアアアアア!!」
悲鳴と叫び声が体育館に木霊する。
しかし…
「…げ、激痛が…ッ」
奇跡的にも、山下は生きていた。
…死ぬわけも無いが。
しかし右肩は真っ赤に腫れ、顔中傷だらけ、ラケットのガットは切れている。
そこで正気に戻り、コートを見て叫ぶ山下。
「シャトルは!?」
小さな羽根がくっついたコルクは
相手のネット際コートの線の…
ギリギリ外に、落ちていた。
21vs19!!ゲームセット!!
俺の中学校生活のバドミントンは、
ここで幕を閉じた。