013
「絶対にストップーーーッッ!!!!!」
白雪中学校のバドミントン部全員が一斉に声を荒げる。
そんなに強くも無い、山下がこんなにも頑張れるのは何が影響しているのだろうか。
「最悪…デュースに持ち込むしか…ッ」
パァンッ
綺麗に羽根が打ち上げられる音が静かな体育館に響いた。
「ドロップ…」
山下はドロップで沈める。しかし白馬はネット際に落とす。
これが得意な戦法というのはこの試合の中で分析をしている。
マネージャー兼部長の朝比奈が。
「ヘアピン。クリア、スマッシュ…でいける。」
朝比奈は、そう呟いた。
山下にはその呟きは聞こえてはいない。だが、何か通じ合う物があったのだろう。
「ヘアピン、そして相手がクリア…俺がスマッシュ…ッ!!!」
バシュウッ
コンッ
綺麗に、山下のスマッシュが決まった。
20vs19。
「「ナイスショット!いいぞ!もう一本!!」」
「タカシ先輩頑張れぇ!!」
点数は19対20でこちらがまだ不利な状況。あと一点でデュースには持ち込める。
だが、体力はもう残っていなかった。終始両者互角の勝負だった。
そこで、男子の部長の寺本が言った。
「…時間や状況が全く違うが、あいつ…笠島との試合と同じプレイをしている。
いや、それよりも確実にレベルアップしている…?」
「確かに…。そういえばあいつ、トレーニングでジャンプの練習をしていたよな。」
「「まさか…あいつ…」」
「おい山下ぁ!!諦めたら次はねーぞ!!」
寺本が叫ぶ。
「わぁってるよ!!…ったく、俺の体力考えてくれ…。」
サーブ権は俺だ。短く落とすか、長めにプレシャー掛けるか…。
…よし、短く落とす!!
と、隆がシャトルを打ったその時、相手が大きくクリアを上げてきた。
しかし、これは相手の得意なプレイ…だが、火事場の馬鹿力だろうか。
ラインギリギリの場所を狙ってきている。
「クソぉ!!」
パシィッ
と、バックハンドで相手に返す。
「おぉぉ!!!」
「腕を上げたな…あいつ。」
先生も静かに呟く。
その瞬間に声援が湧き上がるが、相手はネット間際にシャトルを落とし、ニヤリと笑った。
声援も一喜一憂と声色が変わる。
「ここだ。」
「えっ?」
「「いっけえええええええええええ山下ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
二人の部長が、一緒に叫んだ。