012
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「…くっ」
3ゲーム目の18vs17。
お互いの体力はもう既に限界だった。
先ほど先取したのは山下だったので山下のサーブ。
「1本ーッッ!!!」
後輩や仲間たちの熱い声援が山下に届いた。
「…絶対…勝つ!」
パンッ
渇いたきれいな音が会場に響く。
「ガンバーッ!!」
「はいよ!!」
しばらくラリーが続き、2回戦とは思えないような激しい戦い。
しかし、そこで山下が足を痛めてしまった。
「…ッ!」
どうやら足を捻ったらしい。
「(…まずい…次にネット際に落とされたら…)」
案の定、山下が遠くにクリアを打つと、白馬は軽くシャトルに触れ、ネット際に落としてきた。
「あっ…」
と、そこで杉山が立って山下の方を見た。
周りは全部杉山と同じ中学の奴たち。まさに四面楚歌…。
「あいつ…アホか」
山下は少しだけ照れながらも試合を続ける。
どうやら試合に熱中しているようで、周りの奴らは気づいてはいなかったようだ。
そして、試合は19vs18まで続き、山下が残り2点で負けてしまうところまで追いつめられた。
「絶対ストップーーッ!!!!」
ストップ…というのは点を取られた場合、もう点を取られないようにという意味だ。
「くっ」
コォンッ
と、金属音が静かなコートに響く。
相手のサーブがミスった瞬間だ。
たとえ強豪の相手と言えど、30分以上も続いているこの試合でも体力の消費は言わずもがな。
しかし、そのような事は把握できるわけも無く山下は後ろのめりになってしまう。
「嘘だろ…ここでかよ」
そんなことを口走ったその時。
コート脇から黄色い声援が聞こえてきた。
「山下ぁ!!諦めんなぁ!!」
何を隠そう、おとなしいはずだった朝比奈の声。
クールにキメてそうな朝比奈からの声援に、俺は応える。
「…っしゃああああああ!!」
しかし。
足を痛めた山下が方向転換をすると、アキレス腱に激痛が走った。
「…うぁッ!!」
そのまま、シャトルに触れることも無く山下はコートに倒れ込む。
シャトルは重力にそってコート内に落ちる。
20vs18
残り一点で、負ける。