009
ピピピピ ピピピピ ピピピピ
「…うるさぁい」
バゴォッ!
…ピッ…ピッ…ガガ…
「…んぁ…眠いっつーの…」
眠気に耐えられなかった山下が殴り倒した目覚まし時計が虫の息でまだ起こそうと努力している最中
山下はとある異変に気付く。
「…あ?」
時刻は午前7時半。
今日は春季大会の3年生最後の試合。
「七時…半… うおおおおお!!??」
大遅刻である。
「6時半と間違えたぁぁああああああ!!!!」
超即行で顔を洗い、超即行で身支度をし、超即行でバスへ乗車。
超即行でバスが到着…するわけもなく、みんながランニングなどを終えて大会の準備をしている最中に
山下は皆の元へ着いたのだった。
「…ごめんなさいは?」
「…ごめんなさい。」
「…つまんない。素直すぎて。」
「…え?」
朝比奈は俺に説教をするかと思いきや、すぐにコートの方へと戻って行ってしまった。
あいつなりの心遣いなのだろう…。
そして、前を向きながら俺に喋りかけた。
「…ラスト、頑張るよ。アンタも頑張んないと承知しないから。」
「…おう!」
そしてこの後、何故か奇跡体質の山下さんはまたひとつ、鍵穴を手に入れてしまうのだった。
それは開催式の時のことであった。
中学校が1列に入り口からどんどん入っていくのである。
そして、体育館に整列をして座っていく。
男女各一列で並んで入っていくので、必然的に男子列は隣の別の中学の女子列と隣になる。
しかし。
しかしだ。
またしても奇跡は起こる。
「…あ。」
「…え?」
隣という山下には縁も所縁もある場所に、杉山が来たのだった。
「(…嘘ぉ…)」
「(…何パーセントの確率なんでしょうか神様)」
「(分かんないよそんなの…でも、すごいね!)」
「(俺らも、腐れ縁…ってか?)」
「(そうみたいだね…ww)」
小声で話し合う二人。
まさかまさか、最後の試合でしかも隣同士でまた会えるなんて。
「(ねぇ、山下の試合はいつ?)」
「(俺は一回戦シードで、11時ごろの2回線目。)」
「(見に行くからね!)」
「(…いや、お前の中学の奴と対戦なんだけど…)」
「(えっ)」
ここで、開会式が終わる。
開催委員長の合図で全員が起立して、退場に移る。
「…じゃ、またあとでな!」
「うんっ。頑張ってよ!」
「そっちもな!」
そして、中学校ごと、荷物置き場が決まっているのでそこに集まる。
やんちゃな中学生たちは先ほどの山下の行動を見逃してはいなかったようだ。
「おいどういうことだってばよ」
「裏切り者だぁぁぁコロセエエエエ」
「彼女持ちですか兄貴…しかも別の中学校…」
「あああうっせえうっせえ!!そんなんじゃねぇっての!!」
「そんなんじゃない…?でも、お前最近になってから物凄くランニングのタイムが上がってたような…」
「うっ。それは…ほら、高校生になるにつれて体力だって大人になるじゃん…?」
「そんな言葉が通じるとでも」
「思ってるんですかぁ!?」
「…勘弁してくれ…」
その後山下は、試合までネチネチと色々言われ続けたのであった。