000
体育館で反響する、乾いた音。
真剣にシャトルを打ち合っているようだが、それに加えて燃えるような声援も聞こえる。
「「ナイスショット!いいぞ!もう一本!!」」
「タカシ先輩頑張れぇ!!」
中学生バドミントンの春季大会の試合会場。
そこで白熱した試合を繰り広げている男子が一人。
山下隆。白雪中学3年の男子。
「くっそぉ、ようやく1点取ったけど勝てるのかぁ―?」
点数は19対20でこちらが不利な状況。あと一点でデュースには持ち込める。
だが、体力はもう残っていなかった。このゲームは3セット目。両者互角の勝負だった。
「おい山下ぁ!!諦めたら次はねーぞ!!」
「わぁってるよ!!…ったく、俺の体力考えてくれ…。」
サーブ権は俺だ。短く落とすか、長めにプレシャー掛けるか…。
…よし、短く落とす!!
と、隆がシャトルを打ったその時、相手が大きくクリアを上げてきた。
「あぁっ!!!上げられたッ!!」
応援していた仲間たちも息を呑んでただ見守るしかない。
「クソぉ!!」
パシィッ
と、バックハンドで相手に返す。
「おぉぉ!!!」
その瞬間に声援が湧き上がるが、相手はネット間際にシャトルを落とし、ニヤリと笑った。
声援も一喜一憂と声色が変わる。
俺も、ここで諦めるわけにはいかない。
その場で方向転換をシューズに託し、足を浮かせる。
一か八かで運命にかける。
滑り込みでシャトルを返そうと、体が機転を働かせたのだ。
「いっけぇぇぇぇ!!!!」
パシィンッ
と、渇いた弾けるような音とコンマ数秒遅れ、机や椅子が倒れるような大きな音が体育館内に響いた。
そこで、俺は意識を失った。