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最終話【大団円編】『地位より自由を、平和より冒険を』破天荒ガールは地平線の彼方へ

最終話【大団円編】『地位より自由を、平和より冒険を』破天荒ガールは地平線の彼方へ



「……いよいよだね」


中央都市の象徴であった政府庁舎は、今や〝自由を象徴する殿堂〟へとその姿を変えていた。広場には数えきれないほどの民衆が集まっている。

今日は、旧体制を打ち破った英雄・テラ大臣とアレス副大臣の就任式。新たな時代の幕開けを祝う、歴史的な一日になるはずだった。


「ふぅ……。鏡を見るのも緊張するよ」


副大臣の礼装に身を包んだアレスが、ネクタイを直し、隣に座るテラに振り返った。


「不運続きだった僕が、こんな大役を任されるなんて。……でも、テラさんがいれば大丈夫。これから、僕たちがこの世界を支えていかないとね!」


隣で気怠そうにソファにふんぞり返っていたテラは、窓の外を眺めながら、短く応じた。


「ン?あー……ああ。そうだな。お前ならいい大臣になれるぜ、アレス」


「何言ってるんですか、テラさんが主役ですよ!さあ、そろそろ時間です。行きましょう!」


「……悪い。ちょっと着替えてくっから、廊下で待っててくれ。この服、肩が凝って仕方ねぇんだ」


「もう、ギリギリですよ?すぐに済ませてくださいね!」


アレスは苦笑いしながら、一度廊下へと出た。

廊下で時計を気にしながら待っていると、軽快な足音と共にメルクリアがやってきた。

その顔には、いたずらっ子のような笑みが浮かんでいる。


「やあ、アレス。いよいよ就任式だね。緊張で足がもつれて転ばないようにね?」


「うん。……でも、テラさんと一緒なら不思議とやれる気がするよ」


「ふふん、そんな君にとっておきのプレゼントを用意したんだ。……おーい、入っていいよ!」


メルクリアが背後の扉を開くと、そこから懐かしい顔ぶれが次々と姿を現した。


「アレス、お久しぶりですね」


「元気してた?アレスちゃん」


「宇宙的再会です」


カペラ、ベラドンナ、ナブー……魔王の幹部やスケルトン兵たち魔物までもが、かつての勇姿そのままにそこに立っている。


そして、その列の最後尾から、圧倒的な威圧感と共に人影が歩み寄ってきた。


「……っ!魔王様!!」


「……ふっ。相変わらず腑抜けた顔をしているな、アレスよ」


「どうして……!?あなたたちは、あの時〝強制終了シャットダウン〟で消滅したはずじゃ……?」


「政府サーバーの奥底にバラバラに捨てられていたデータの破片を拾い集めて、つなぎ合わせたんだ。ボクみたいな天才が不眠不休で挑んでも、今日までかかっちゃうくらい大変だったんだからね!」


メルクリアが胸を張ると、アレスの瞳が潤んだ。


「ありがとう……!ありがとう、メルクリア!」


「……ま、新政府へのボクからの就任祝いさ!」


「……あのぅ……誰もボクに気づかない……悲しい」


あまりの影の薄さに誰もアルファルドに気づいていなかったが、アレスはすぐに思い出したように声を上げた。


「ああ、そうだ、テラさんにもこのことを伝えないと!テラさん、大変ですよ、みんなが、魔王様が来てくださいました!」


アレスは弾む心で控室のドアをノックした。しかし、中からの返事はない。


「テラさん?着替え、終わりましたか?」


『……ちょっと、アレス。嫌な予感がするわ。この静まりかえった感じ……』


腰のサタンブレイドが懸念を口にする。

アレスが嫌な汗を流しながらドアを開けると、そこには誰もいなかった。

主のいない部屋。開け放たれた窓から、心地よい自由な風が吹き込んでいる。

机の上には、就任式で着るはずだった正装が乱雑に脱ぎ捨てられ、その上に一枚のメモ書きが置かれていた。


〝やっぱ、大臣とか面倒くさそうだし、私に向いてないからパス。柄じゃねぇよ。旅に出るから、アレス、あとはよろしく。 ――テラ〟


「……は?」


思考が停止したのも束の間、アレスの絶叫が庁舎に響き渡った。


「テラさぁぁぁぁぁぁん!!行かないでくださいよ!戻ってきてぇぇぇ!!」


『光る君ぃぃぃ!!』


魔王はそれを見て、愉快そうに微笑む。


「……ふ。どこまでも風のような奴だ」


新大臣不在のまま、就任式のファンファーレが鳴り響く。

アレスの〝不運〟と〝多忙〟な日々は、どうやらまだまだ終わりそうになかった。



※※※



抜けるような青空の下、一台の馬車が荒野の街道を猛スピードで突き進んでいた。


「テラ様……本当に、大臣をほっぽりだして良かったんですか?国民のみなさん、あんなに期待してましたよ」


馬車を運転しているセレネが、呆れたような、それでいてどこか楽しそうな溜息をつく。


「あー、うるさいうるさい!私が椅子に座って書類にハンコなんて押してたら、三日で発狂して庁舎をぶっ壊しちまうよ。柄じゃねーんだ、あんなのは」


テラは窮屈な正装を脱ぎ捨て、いつもの動きやすい旅装束で豪快に笑い飛ばした。

その膝の上に置かれた相棒が、鞘の中でカチャリと笑う。


『ま、お前が国を治めたらネプチューン以上の無茶苦茶な国になるからな。国民も命拾いしたってもんさ。歴史に〝暴君テラ〟の名を刻まずに済んで良かったな!』


「んだと、この馬鹿剣!お前は余計なこと言わずに磨かれてろ!」


「ふふっ……。でも、そうですね。テラ様には、王座よりも風の吹く道の方がずっと似合っています」


セレネは柔らかな笑みを浮かべ、遠くの景色を眺めた。

かつての〝従者〟としての義務ではなく、自分の意志で、再びこの破天荒な女性と共に歩めることが、今はただ心地よかった。


「それで、テラ様。次はどこに向かいますか?」


「そうだな……。お堅い話も、神様の予知も、もうお腹いっぱいだ。――よし、海にでも行くかー!見たこともねぇデカい魚でも釣って、女の子たちと宴会だ!」


私が世界を救うなんて、これっぽっちも思っちゃいない。

私の目的はいつだってシンプルだ。

美味い酒と、女の子の笑顔。そして邪魔な男をぶん殴る自由。それだけだ。


「行くぞ!私たちの冒険はこれからだ!!」


黄金の光を反射しながら、破天荒ガールと愉快な仲間たちを乗せた馬車は、巻き上がる土煙とともに、自由な地平線の彼方へと消えていった。




ーTHE ENDー



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