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第15話【テラ編】歌姫救って、大臣ご破産?!聖剣シールド大爆走!

第15話【テラ編】歌姫救って、大臣ご破産?!聖剣シールド大爆走!



「……この街、入った時からずっと同じ不景気な歌が流れてるな」


テラが豪華な馬車の窓から不機嫌そうに身を乗り出す。そこは政府直轄の特別居住区〝ムーンライト・タワー〟。

本来、ここは〝音楽の聖地〟と呼ばれ、酒場街で夜通しどんちゃん騒ぎができる場所のはずだった。ところが……


「……酒場街だってのに客が一人も喋らねえで、泥水をすするみたいに酒を飲んでやがる。注文しても返事すらない……。教会の方がまだ賑やかだぜ」


窓の外に広がるのは、まるでお通夜のような光景だ。

街の人々の〝感情〟は失われ、虚ろな目で歌を聴いている。〝音楽の聖地〟は、誰も笑わない〝沈黙の街〟へと変貌していた。


「……原因はこの歌ですね」


一瞬で夜空を七色に塗り替えると言われる歌姫リィラ。

彼女の歌声が、政府が秘密裏に開発した〝音波式魔力増幅炉〟の触媒として利用されていた。

歌姫リィラが悲しいバラードを歌えば歌うほど、電波に乗って街中に拡散され、人々の戦意は奪われ、政府に従順な〝人形〟に変えられてしまう。


「どうやら政府の軍事顧問官たちが、歌姫リィラの声を触媒にして、国民を洗脳する音波を放射しているようです」


『おかげで馬車の馬までやる気をなくして、居眠りしそうになっているな』


「副作用として、この街の人々は〝感動〟する力を奪われているようです」


セレネが冷静に分析を伝えると、テラの赤い瞳に鋭い怒りが宿った。


「おいセレネ、聞こえるか?この声は……歌ってるんじゃねえ。……助けてくれって叫んでやがる」


リィラの歌は、彼女自身の意思に反して魔力を吸い上げられ、増幅炉によって「悲しみ」だけを抽出されている。

テラは、モニターに映る彼女の姿を凝視した。

緩やかなウェーブを描く桜の花びらのような淡く優しい髪と瞳――。虹色のドレス姿をした彼女の美しい瞳から桜色の涙が一滴こぼれ落ちるたびに、街の生気が消えていくのが感じられた。


「その通りです。このままでは彼女の精神も喉も焼き切れるのは時間の問題でしょう……」


「歌ってのは、恋バナしたり、不味い飯に文句言ったりするためにあるもんだ!国を操るための道具じゃねえんだよ!……おいセレネ、この街の〝解体工事〟始めるぞ!」


馬車が歌を流している中央要塞に目掛けて猛スピードで加速する。


「どけえッ!葬式はおしまいだ!」


――ドゴォォォォォォンッ!!


検問所に激突させ粉砕し、テラは物理的に〝入場〟した。


「不法侵入者を確認!排除せよ!」


タワーの防衛システムが起動し、無数の兵器が襲いかかる。しかし、テラは聖剣を盾に一直線に要塞の電波塔へと突き進んだ。


『おいテラ!くるぞ!避けろって!』


「お前は黙って前を向いてろ!」


テラは飛来する砲弾に対して、聖剣を横向きに〝盾〟として構えた。


『ちょっ、待て!私を盾にする気か!?私は世界の意志を宿す究極の攻撃兵器で――』


――ギィィィィィィンッ!!!


直撃した魔力砲弾を、ガイアセイバーが火花を散らしながら完璧に弾き返す。


『ぎゃあああ!響く!魂に響く!塗装がハゲるだろ!誰が聖剣を物理シールドに使えと言ったぁぁぁ!』


「伝説の聖剣だろうが!少々の傷でガタガタ抜かすな。……ほら、もう一発くるぞ、歯を食いしばれ!」


『歯なんてないわ!お前、あとで絶対に磨けよ!最高級の油で隅々まで磨き上げろよ!!』


テラは聖剣の絶叫を無視し、弾いた勢いそのままに上の階へと突進した。

電波塔の頂上。数千の歯車が噛み合う巨大なオルゴール装置の中で、リィラは涙を流しながら歌い続けていた。


「……私の声が……誰かを縛る鎖になっている……誰か……私を止めて……」


「おい!泣きながら歌うのは、失恋した時だけで十分だ!」


「……!!」


「そんな巨大なブリキのおもちゃ、私が粉々に叩き割ってやるよ!テラ・クラァァァッシュ!!」


聖剣を高く掲げ、一気に振り下ろした。


――ズドォォォォォォンッ!!!


放たれた閃光によって、オルゴールの歯車が火花を散らして凄まじい速度で逆回転し、耐えきれず停止した。

それと同時に、感情を吸い取っていたクリスタルが粉々に砕け散る。


不気味なメロディが止まった瞬間、人形のようだった国民たちが目を覚まし、その胸に失われていた熱い感情が流れ込んだ。


「……あ、声が……軽くなった……。もう、悲しい歌を歌わなくていいの?」


「ああ。これからはお前の好きなように、宇宙まで届くような景気のいい歌を歌え!」


リィラがそっと両手を胸に当てて口を開く。


「……ン〜……ラララ〜♪……」


その声は、魂から震える本物の歌声。まさに一瞬で夜空を塗り替える美しさだった。


「……へっ、いい声じゃねえか。兵器にするには勿体なすぎる。……おい、リィラ。これからは自分のために歌えよ」


「……自分の、ため……。はい、私の〝心〟を込めて……歌います!」




街にリィラの清らかな歌声が響き渡り、人々は笑顔を取り戻していった。


「おいセレネ、この要塞の解体費用を〝騒音被害の賠償金〟としてあの大臣に送りつけろ。〝歌の著作権料〟として金貨一万枚もな」


「では、こう記しておきます――」



※※※



翌日。ネプチューン大臣の机には、テラからの巨額の請求書が届いていた。


〝要塞解体費用および歌姫リィラの精神的慰謝料。払わないなら次は議事堂をオルゴールにする。〟


「……テラァァァ!!せっかく国民をおとなしくさせていたのに、あいつのせいで街中が抗議デモの合唱コーラスだらけじゃないかぁぁぁッ!!」



※※※



一方、テラは馬車の窓から、自由になったリィラが街の子供たちの前で高らかに歌う希望の歌を聴いていた。


「……ン〜……ラララ〜♪……」


「セレネ、あいつの歌、今度はレコードに焼かせろ。……もちろん、大臣の自腹でな」


「了解しました。記録:〝勇者、音響兵器を破壊し、音楽の自由化を強行。副作用として大臣の貯金残高が更地化〟になりました」


セレネが淡々と報告を締めくくると、テラはボロボロになった聖剣を無造作に座席へ放り込んだ。


「いい働きだったぜ、〝伝説の盾〟」


『剣だと言っているだろぉぉぉッ!!』


聖剣の絶叫をBGMに、馬車は次の街へと軽快に走り出す。

背後には、二度と止まることのない自由な歌声が、どこまでも高く響き渡っていた。





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