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佐野由佳は仲良くなりたい ②

 ある休み時間、由佳は白木綾乃が誰かと歩いているところに遭遇する。

 あれは誰だろう? 由佳は思う。杏奈が言っていた新しい友達だろうか?

 綾乃はその誰かと仲が良さそうに話している。相手はメガネをかけた長身で黒髪のクールな美人だった。由佳はその生徒のことをなぜか目で追ってしまう。

 次の昼休み、由佳は綾乃のクラスに行ってみる。綾乃は例の美人と一緒に昼ごはんを食べている。綾乃と目が合った由佳は思い切って話しかけにいく。

「綾乃、おはよう。そして初めまして」由佳は例の美人に頭を下げる。

「初めまして、朝野恵といいます。綾乃の友達ですか? わたしもそうです」

「ど、どうも。佐野由佳っていいます。綾乃とは中学校からの同級生です。綺麗な人がいるなと思って、朝野さんのことが気になっていました」

「それはありがとう。わたしのことは恵って呼んでいいよ。綾乃の友達なら、由佳もわたしの友達だ」

「ありがとう。綾乃、わたしもごはんに混ざって良いかな?」

「も、もちろん。恵はいいか?」

「当たり前だよ。わたしも由佳と仲良くなりたい」

「じゃあお弁当を取ってくるから、ちょっと待っていて」

 そう言って由佳は駆け足で弁当を取りに行く。戻ると二人は何かを話している。

「ありがとう、お待たせ。二人は何を話していたの?」と由佳が訊く。

「由佳のことだ。中学生の頃のことを話していた」と綾乃が言う。

「由佳はとっても優しくて良いやつだって話していたんだ」と恵が付け加える。

「わたしは別に優しくなんかないよ」

「や、優しい人ほど自分ではそう言うんだ。わたしと仲良くしてくれた」

「それは、綾乃がわたしに優しかったからだよ。どん底にいたわたしを、綾乃と杏奈が助けてくれた。だから、わたしは綾乃たちと一緒にいたんだよ」

「何があったのかは知らないが、由佳は綾乃に助けられたんだな。それは良い話だ」

「そうなの。だからわたしは、綾乃に新しく友達ができたって杏奈から聞いて、とっても嬉しかったんだよ」

「そ、そうか。わたしも恵が友達になってくれて嬉しい。おかげで前よりさらに学校が楽しくなった。恵のおかげだ」

「そう言われるとなんだか照れちゃうな。わたしも、綾乃がいるおかげで学校がもっと楽しくなったよ」

「ふふ。二人を見ているとわたしも楽しい」そう言って由佳は笑顔を見せた。

 そして「わたし、恵のことが知りたい」と由佳は言う。

「わたしのこと? そうだな。綾乃のクラスで学級委員長をしている朝野恵だ。綾乃とは同じクラスで友達になって、石黒とも同じバスケ部の友達だ。そして由佳も今日からわたしの友達だ。よろしくな」

 そう言って恵は手を差し出す。由佳は少しだけ緊張しながら恵の手を握る。

 どうしてこんなにドキドキするのだろう? 由佳は顔が赤くなるのを感じる。

 それから三人はたわいもない話で盛り上がる。

 昼休みが終わりに近づいて、由佳は恵に言う。

「ねぇ、今日もし良ければ駅まで一緒に帰らない?」

「いいよ。わたしの部活が終わってからだけど、それでも良ければ」

「やった! ありがとう」と由佳は言った。

 放課後、由佳は恵の部活動が終わるまで図書室で待つことにする。

 図書室に行くと、綾乃が席で大きな本を開いていた。

「何を読んでいるの?」と由佳は小声で話しかける。

「ず、図鑑だ。なんとなく植物の図鑑が目についたから」

「へぇ、面白そう。綺麗な花がいろいろあるねぇ」

「そ、そうだな。花言葉も書いてあって、誰にどの花が似合うのか考えていた」

「似合いそうな花はあった?」

「いろんな花があって迷う。でも、このアマリリスは杏奈に似合いそうだと思った。花言葉は誇り、おしゃべり、輝くばかりの美しさ。明るくて綺麗な杏奈にはぴったりな花だ」

「確かに、杏奈にはぴったりかもしれない。他にはどんな花があった?」

「コムラサキとか、恵にどうかな? 気品、知識、聡明が花言葉だ。頭が良くて美人な恵にはぴったりだと思う」

「確かに。恵、とっても美人だもんね。今日一緒に帰るっていう約束をしたから楽しみなの」

「よかったな。二人きりの時間を楽しんでくれ。ちょうど由佳をどの花にするか考えていた。シャクヤクはどうだ? 恥じらい、はにかみ、謙遜が花言葉だけど、美人の代名詞だそうだ」

「わたしは別に美人じゃないよ。でも、ありがとう。わたしに素敵な花を選んでくれて。綾乃の花も選んでいい?」

「い、いいぞ。でもなんだか照れるな」

「じゃあね……キンモクセイはどうかな? 謙虚、気高い人、真実が花言葉だって」

「わ、わたしとは全然違う。そんな立派な人間じゃない」

「そうかな? わたしにとってはぴったりなんだけどな。あの時わたしを助けてくれた綾乃にふさわしい花だと思う」

「そ、そうか。わたしは杏奈と違って、大したことは何もしていないけど、そう言ってくれるとわたしも嬉しい。ありがとう」

「こちらこそ、ありがとうだよ」由佳は笑顔でそう言った。

 そこで由佳はいくつかの視線に気がつく。

 図書室で話している二人を責めるような視線だった。

 由佳は申し訳なくなって綾乃に言う。

「図書室なのに話しかけてごめんね」

「そんなことはない。でも、せっかくだからちょっと移動しようか」

 そうして荷物を整理すると、二人は綾乃の教室に移動した。

「ねぇ、恵のことを聞かせてほしいな。恵ってどんな人?」

「とてもいいやつだ。クラスでひとりぼっちだったわたしに話しかけてくれた。その上わたしなんかと友達になってくれた。そのおかげで、学校に通うのが今までよりも楽しくなった。恵には感謝の気持ちでいっぱいだ」

「そっか。やっぱり素敵な人なんだね、恵って。恵ともっと仲良くなりたい」

「恵となら心配はいらない。きっと由佳ともいい友達になると思う」

「綾乃が言うならきっとそうなんだろうね。よかった!」

「由佳は恵のどんなところが気になるんだ?」

「なんというか、すごく綺麗な人だなと思って。それにとっても優しそうな雰囲気もあって。この人と仲良くなりたいって直感したんだ」

「それはわたしも同感だ。恵は優しくて綺麗な人だ」

 二人は教室でしばらく時間を過ごす。二人はそれぞれに宿題を開く。

「わたし物理が苦手なんだ」と由佳が言う。「高校が始まったばかりだけど、さっそくちんぷんかんぷんなんだ」

「わたしも物理はそれほど得意な訳じゃない。確かに物理は難しい」

「ねえ、どうすればいいと思う?」

「それこそ恵に教えてもらったらどうだ? 確か、恵はわたしとは逆に理系科目が得意だったはずだ。中学生の時は数学で学年一位だったらしいぞ」

「そうなんだ! 今度さっそく恵に教えてもらおうかな」

「それがいい。わたしは物理のことは教えてあげられないからな」

「意外だね。綾乃にも苦手な勉強があるんだ。何でもできると思っていた」

「そんなことはない。わたしにも苦手はある」綾乃は照れるように顔を赤らめた。

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