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みんなで集まる ①

 石黒杏奈は部活動が終わって、ロッカールームで着替えている。

 新しいスポーツブラの上から制服を着る。そこに朝野恵が話しかける。

「よう、お疲れ! 今日も石黒は大活躍だったな。得点しまくっていたね」

「ありがとう。でも、それを言うなら朝野こそ活躍していたよ。チームメイトのケアもきちんとできていた。わたしは自分ばっかりで精一杯だったのに」

「大丈夫だよ。石黒もちゃんとできていた。それはわたしが保証する」

「そうかなぁ。少なくとも朝野のようには出来ていなかった。そこが反省だよ」

「まぁ、人にはそれぞれ得意分野があるからね。それを言うなら、わたしこそ石黒ほど試合で活躍できていなかったよ」

「そんなことない。朝野は名アシストが光る場面がいくつもあった」

「石黒にそう言われると嬉しいよ。ありがとう」

 着替えが終わると、二人はロッカールームを出る。

 そこでは白木綾乃と佐野由佳が話をしながら二人を待っている。

「お待たせ!」と杏奈が綾乃に言う。

「ま、待っていない。いま来たところだ。それに由佳とずっと話していたから大丈夫だ。杏奈の話で盛り上がっていた」と綾乃が言う。

「杏奈のことになると話が止まらないもんね、綾乃は」由佳が意地悪そうに言う。

「ま、まぁな。杏奈のことはいくらでも話せる」綾乃は気づいた様子がない。

 一方で、杏奈が顔を赤くしている。

 綾乃が自分の話をたくさんしていたことで、嬉しさと恥ずかしさが同時にあった。

「顔が赤いぞ。大丈夫か」と恵が言う。

「大丈夫。気にしないで」と杏奈は答える。「ところで、せっかく四人で集まった訳だし、今日はみんなで一緒に帰る? 綾乃さえ良ければ」

「わ、わたしは構わないぞ。むしろ、その方が楽しそうだ」と綾乃が言う。

「やった! みんなで帰るの楽しそう」と由佳が言う。

「わたしもいいぞ。みんなで帰ろう」と恵が言う。

 そして四人は夙川沿いの並木道を歩いていく。

「桜はもうすっかり見えないね」と杏奈が言う。

「そうだな。時間が過ぎるのは早いな」と恵が言う。

「何だか寂しくなっちゃうね」と由佳が言う。一方で綾乃が言う。

「しょうがない。時間は流れていく。そしてわたしたちもどこかに運ばれていく」

「どこに運ばれていくんだろうね、わたしたち」と杏奈が言う。

「分からない。どこかに着いた時にはじめて分かる」と綾乃が言う。

「なんだか哲学的だね」と由佳が言う。「でも、不安になっちゃうな。もし、運ばれた先が大変な場所だったらどうしよう。わたしはやっていけるのかな」

「もし、しんどくなったらわたしに声をかけろ。いつでも由佳のことを助けてやる」恵が由佳の肩を叩いて言う。

「ありがとう」由佳は目を潤ませながら言う。

「頼もしいじゃん、朝野」と杏奈が言う。

「か、かっこいい」と綾乃も言う。

「まぁ、あんたたちにも手伝ってもらうかもしれないけど」恵は頭をかきながら付け加える。

「その時はいつでもわたしたちに言って。わたしたちこの先、何があっても支え合おうね」と杏奈が言う。

「さ、支え合う。何があっても」と綾乃が言う。

「ありがとう。わたしもみんなのことを支えるね。何ができるかは分からないけど」と由佳が言う。そして四人は嬉しそうに笑い合う。

「そ、それで、いつの間にか四人がバラバラになっていたら笑えないけど」そこで綾乃が水を差すように言う。

「ネガティブなことを言わないの」と恵が言う。

「そうだよ。それに、わたしたちはたぶん大丈夫だと思う」と杏奈が言う。「わたしの勘がそう言っている。わたしの勘はわりと当たるんだよ」

「たしかに。杏奈の勘は当てになる」と綾乃が言う。「分かった。いまはこの四人を信じることにする」

「そう来なくっちゃ!」と杏奈が言う。

「わたし、みんなにどこまでも着いていくよ」と由佳が言う。

 そして四人は改めてお互いに笑い合う。新しい絆を確かめるように。

「ねぇ、どこかに寄って行かない?」と杏奈が言う。

「いいね。どこがいいかな」と恵が言う。

「ファミレスでゆっくりしたい」と綾乃が言う。

「わたしも美味しいものが食べたいな」と由佳が言う。

「じゃあ、わたしと綾乃がよく行くファミレスに行こう。隣の西宮北口だよ」と杏奈が言う。

「お、いいね。そうしよう」と恵が言う。

「わたしもこの前、杏奈と行ったところだよね」と由佳が言う。

 そして四人は電車に乗って、西宮北口のファミレスに移動する。

「ここだと他の生徒と鉢合わせしないかもね」と由佳が言う。

「そ、そうだな。ここでは同じ学校の生徒を見かけたことはない」と綾乃が言う。

「いいねぇ、ゆっくりできるじゃん」と恵が言う。

 四人は奥のソファ席に座る。窓側には杏奈と由佳が座り、通路側には綾乃と恵が座ることになる。杏奈と綾乃、由佳と恵がそれぞれ隣同士になっている。

「何がいいかなぁ」と杏奈がメニュー表を開いて言う。

「たくさん美味しそうなものがあるよね」と由佳が言う。

「わ、わたしはいつも決まっている」と綾乃が言う。「ポテトフライとドリンクバー」

「わたしはドリンクバーだけでいいかな。綾乃のポテトフライを分けて欲しい」と恵が言う。

「いいぞ、分けよう。いつもは杏奈に半分、食べてもらっている」と綾乃が言う。

「チョコバナナパフェはやっぱり食べたいな」と杏奈が言う。「でも運動した後でお腹が空いているからな。何かごはんが食べたい気分」

「晩ごはんが食べられなくなるぞ」と綾乃が言う。

「大丈夫だって! 杏奈さんの食欲をなめてはいけない」と杏奈が言う。「じゃあハンバーグとライスとチョコバナナパフェで! もちろんドリンクバーもセットにして」

「たくさん食べるねぇ」と由佳が言う。「わたしはパンとドリンクバーにするよ。このフランスパンが美味しそうだなって思って」

「確かに。ライスじゃなくてパンにするのもありだったかな」と杏奈が言う。「ライスとパンの両方とも食べるのもありだけど」

「あんまり食べ過ぎるなよ。いくら運動していると言っても、さすがに太るぞ」と恵が言う。

 それに対して杏奈は言う。

「大丈夫だよ。今までもたくさん食べてきたけど、太ったことないもん」

「うらやましいな」と由佳が言う。「わたしは逆にすぐ太っちゃうから節制しないとダメなの」

「そ、そうなのか? 由佳が太っているところ見たことないぞ」と綾乃が言う。

「そりゃ、そうだもん。今までずっとダイエットを頑張ってきたんだから。そういえば綾乃もいつも痩せているよね」と由佳が言う。

「わたしはもともと少食だから。運動しないからというのもあるかもしれないけど、あんまりお腹が空くことはない」と綾乃が言う。

「いいなぁ、綾乃は」と由佳が言う。そして楽しい時間は続いていく。

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