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交際ゼロ日からの、契約結婚 ~夫が抱える25の嘘~  作者: 当麻月菜
嘘が速くとも、真実はこれを追い抜く

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7

 菜穂子は、真澄の詳しい過去は知らない。色々あったらしいが、きっと辛く苦しい日々だったのだろう。菜穂子が想像するより何倍も。


 そんな過酷な時間を過ごしてしまえば、投げやりな生き方になってしまうのも仕方がない。

 

 でもあの時──生まれたばかりの赤ちゃんを見て泣いた真澄は、生きようとしてると、未来を望んでいると言ってくれた。


「瑞穂ちゃん、話してくれてありがとう。でも、まあ君は大丈夫。ちゃんと生きようとしてくれているよ」


 掴まれた瑞穂の手に空いてる方の手を重ねると、瑞穂は縋るように見つめてくる。


「ほんとう?」

「うん」

「絶対?」

「うん.」

「……どうしてわかるの?」

「まあ君がそう言ってくれたから」


 目を逸らさずに告げれば、やっと瑞穂は安堵の表情を浮かべてくれた。


「そっか、わかった。うち、なほ姉の言葉を信じるよ」

「うん。信じてくれてありがと」


 じゃあ、この話はこれで終わり。そう言う代わりに瑞穂の手をポンポンと軽く叩くが、瑞穂は掴んだ手を離そうとしない。


「ねぇ、なほ姉……すみ兄のエッチが下手でも見捨てないであげてね」

「っ……!」


 だから、なんで童貞だと決めつけるの!?と、菜穂子は心の中で叫ぶ代わりに、幹久に助けてと目で訴える。


 しかし幹久は、助けてはくれなかった。それどころか菜穂子と瑞穂のやり取りすら聞いてなかったようだ。


「幹久さん、どうしたの?食べ過ぎてお腹痛くなった?」

「まさか。瑞穂じゃあるまいし」


 すぐさま瑞穂が「ちょっと!」と非難の声を上げるが、幹久はそれを無視して口を開く。


「菜穂子さん……俺もやっぱ伝えたいことがあるんだ」

「ん? わ、わかった……」


 立って聞く内容じゃない予感がして、菜穂子は再び席に着いた。


 幹久は緊張しているのだろうか、ぬるくなってしまった水を一口飲んでから、こう切り出した。


「純玲には、気を付けた方がいい。俺の母親と同じで、欲しいものがあればどんな手段を使っても手に入れる女だ。法や倫理より、自分の欲求を優先する」


 感情を押し殺した幹久と目が合い、菜穂子はゴクリと唾を吞む。


「今回は俺も瑞穂も協力できたし、兄さんだって見えないところでいっぱい動いてくれていた」

「うん、知ってるよ」


 事務所が盗作疑惑をかけられたことを、菜穂子は包み隠さず真澄に伝えている。


 助けて欲しかったわけじゃない。夫婦なら話すべきだと思って。


 真澄は菜穂子が語り終えるまで、口を挟むことなくじっと耳を傾けてくれて、最後に「わかった」と言って頷いた。


 その時の真澄の顔は、今思い出しても身震いする。

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