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交際ゼロ日からの、契約結婚 ~夫が抱える25の嘘~  作者: 当麻月菜
絡まる想い

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9

 傷ついた顔をする真澄に、菜穂子はまず最初に、狡いと思った。


 でもどんな理由であれ、好きな人を傷つけてしまった事実は、菜穂子の冷静さを奪ってしまう。


「あ、ごめん……私、変なこと……言った……」

「謝る必要はない。俺が菜穂ちゃんにどう思われてるのか良く分かったから」


 動揺する菜穂子に、真澄は冷たい声で言い捨てる。


 ズキン、と胸がナイフで刺されたような痛みが走る。あまりの痛みに、菜穂子が左胸に手を当てたと同時に、エレベーターが到着した。


「乗るか?」


 わざわざそんなことを尋ねる真澄が憎い。


「……乗る」

「そうか」


 わざと間を置いて返事をするまでの間、真澄はドアを押さえて待っててくれてる。そういう一つ一つの仕草に、自惚れてしまいそうで嫌になる。


「一応言っておくが、あの部屋は俺がリモート用に使ってる」

「そうなんだ」

「ああ。あそこに俺以外の人間が入るのは菜穂ちゃんが初めてだからな」

「そうなんだ」

「そうだ」


 エレベーターが動き始めた途端、釈明を始める真澄と、感情を殺して返事をする菜穂子。


 異様に重たい空気が二人を包むが、息苦しさを感じる間もなく、エレベーターは目的の階に到着した。


 長い廊下を歩いて、部屋の前に到着する。真澄が上着の内ポケットからカードキーを取り出して、鍵を解除する。


 開いた扉の先には、リビングのような空間が広がっていた。


「ん?ここは……?」

「いわゆるスイートルームっていうところだ」

「ぅわ、すごっ!初めて見た」


 ド庶民丸出しの菜穂子のリアクションに、真澄はクスリと笑う。


「カードキーは二枚あるから、一枚やる。気に入ったならいつでも来ればいい」


 そう言って、真澄は菜穂子に予備のカードキーを差し出した。


「い、いい……!要らない!」


 ブンブンと首を横に振って、菜穂子は後ずさる。


 こんな部屋、使い方も、使う予定もない。


「俺が浮気してるかどうか、いつでもチェックできるのにか?」

「カードキーを渡そうとしてくれた時点で、浮気なんてしてないでしょ!?」

 

 そもそも、自分以外の好きな人がいる相手と結婚したのだ。今更、浮気がどうのと責める権利は、菜穂子にはない。


 そういった気持ちで拒絶しただけなのに、真澄は違う意味に捉えてしまった。


「つまり俺の浮気疑惑は解消されたってことか」

「え?」

「違うのか?」

「そ、それは……違いま……せん」


 指をこねながら菜穂子が答えれば、真澄は満足げに「よしっ」と頷く。


 何が「よしっ」なんだ?と、菜穂子が疑問を口にする間もなく、真澄は再び口を開いた。


「じゃあ、今度は俺から質問だ。菜穂ちゃん、どうして今日の祝賀会、他の男と一緒に来たんだ?」


 急に怖い顔になった真澄は、菜穂子との距離を一歩縮める。


 その圧に耐えかねて、菜穂子は詰められた分だけ後退してしまった。

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