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交際ゼロ日からの、契約結婚 ~夫が抱える25の嘘~  作者: 当麻月菜
潮風に隠す嘘と本音

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2

 ──ピコロン!ポコポコ。


 テーブルに置いてある瑞穂のスマホが、突然鳴った。二度聞きしたくなるような、個性的な着信音である。


「あ、ごめん。ツレから誘われたから、うち行くね」


 スイスイとスマホを操作しながらそう言った瑞穂に、真澄は怪訝な顔になる。


「元旦から誘うなんて……誰だ?」

「ん?クラスの子。この近くでカラオケしてるから、おいでって」

「異性もいるのか?」

「異性って……あはっ、すみ兄おやじかっ。そんなわけないじゃん。うち女子校だよ?女の子しかおらんし」

「なら余計に──」

「もうっ、大丈夫だから!うちの学校にやんちゃする子なんていないこと知ってるでしょ?それよりもさ」

 

 ここで会話を区切った瑞穂は、真澄に両手を出した。


「すみ兄ぃー、コート着忘れちゃったから寒い!あと財布もないから、お小遣いちょーだい」


 今日一番の笑顔を向ける瑞穂に、真澄はあからさまに溜息を吐く。


「幾らだ?」

「ん?ええっとー、あるだけ!」

「ふざけるな」


 そう言いながらも真澄は上着の内ポケットから財布を取り出し、数枚の札をテーブルに置く。


 続くように菜穂子も、お年玉として財布から札を抜いて、真澄の置いた札に重ねた。


 二人合わせた金額は、瑞穂の予想を上回るものだったのだろう。喜びと戸惑いの表情が入り混じっている。


「……こんなに、いいの?」

「帰りのタクシー代も入ってるからな」

「うん!」

「タクシーがつかまらないなら、山南を呼ぶんだぞ」

「うん!」


 セレブ要素を含んでいるとはいえ、なんだかんだ言って妹想いなんだなと、菜穂子は二人の会話を微笑ましい気持ちで眺めている。


「なほ姉も、ありがとう!」


 満面の笑顔を向けられ、菜穂子は照れてしまう。期間限定とはいえ、妹っていいな。大事にしたい。


「楽しんできてね」

「うん!やっぱ、なほ姉のこと好きだな。純玲さんとは大違い。あの人さ──」

「おい」


 真澄の低い声で、瑞穂は自分の失言に気づいた。


「……ごめんなさい」


 しゅんとしてしまった瑞穂に、菜穂子は笑みを向ける。


「大丈夫、気にしないで。それよりも、待ち合わせ場所は近い?先にコート買う?まぁ君に近くまで送ってもらおっか?」


 矢継ぎ早に問いかけられた瑞穂は、首をフルフル振る。


「ううん、いい。歩いてすぐだし、コートはクラスの子と一緒に選びたい」

「そっか。じゃあ急がないと遊ぶ時間減っちゃうよ?」


 菜穂子から助け船を出された瑞穂は、ギュッと隣に座る菜穂子に抱きついた。


「なほ姉、ありがと!大好き!……ねぇ、また連絡してもいーい?」


 最後は小声で尋ねる瑞穂に、菜穂子は大きく頷く。


 カフェに入ってすぐ、真澄が席を外した隙に菜穂子と瑞穂は、連絡先を交換している。


「それじゃ、うち行くね!すみ兄、さっきは本当にごめん」

「わかった、わかった。そのことはもういいから、気を付けて行ってこい。あまり遅くなるなよ」

「はーい!」


 元気よく返事をした瑞穂は、振り返ることなくカフェを後にした。

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