第4話
二人の心は重苦しかった。前の階での血にまみれた混戦の後、剣を振るたび、絶望の叫びがまだ頭の中でこだましていた。そのため、足取りは次第に重く、魂も抜けたようになった。いくらペースを保とうとしても、メインもクラウスも集中できず、モンスター討伐も普段より苦戦を強いられる。
二人はなんとか十四階まで辿り着き、そこで休むことに決めた。ダンジョンの湿った空間の中、二人は黙って隣り合って座った。かすかな炎が揺らめくとき、ようやくクラウスが口を開いた。
「さっきのこと…本当に恐ろしいな。」
メインは黙ったまま、目を火に向ける。しかし内心は吐き気に似た感覚に飲み込まれていた。慣れ親しんだモンスターの血ではなく、人間の血だったからだ。仲間がただ一つの鉱石のために互いに剣を振り回す光景は、彼の心に深く刻まれる刃となった。
「なぜ…ただのアイテムのために、パーティの仲間を殺せるんだ?」メインはかすれた声で呟く。
心の奥で、否定的な感情は次第に沈殿し、言葉にしがたい陰鬱な恐怖となった。ただの嫌悪ではなく、人間そのものへの恐怖だった。
二人はダンジョンで一晩休むことにした。わずかな体力を取り戻すためだ。しかし同時に、二人は理解していた。最初の目的は経験値を稼ぐことだけだったが、今やより遠い視点を考えざるを得なくなっていた――生き残る方法と、この世界の本質について。
その後の日々も冒険は続いた。メインとクラウスは奇怪なモンスターを次々と攻略し、剣のリズムや回避のタイミングを磨いた。二十階に到達したとき、彼らは突然、見知らぬ人々の集団と出くわした。
それは奇妙な組織で、道を塞ぎ、にこやかに「新人冒険者の導きのチャンス」と「道」を宣伝していた。メインは警戒しつつも近づき、丁寧に尋ねた。
「我々は新人を支援する者です。二十一階に進むなら、こちらのルートに従ってください。」
しかしその瞬間、メインの目に一つの視線が飛び込んできた。群衆の中、質素な服を纏い、髪は乱れ、深い目で苦悶を宿す少女が彼を見つめていた。その瞳はまるでこう言っているかのようだった:「彼らを信じるな。」
メインは一瞬立ち止まった。しかしすぐに目を逸らし、胸のざわめきを押さえた。「もし彼女がもっと美しければ、きっと気にしていただろうな」と、ほんのわずか頭をよぎる思いに苦笑した。
組織の者たちは地図や「安全なルート」、「生存の秘訣」を延々と説いていたが、メインには明らかに詐欺臭が漂っていた。少女こそが犠牲者なのだろう。しかし、なぜ彼女は助けを求めないのか?なぜ抵抗しないのか、目の前に他人がいるのに?
答えは見つからず、彼もまた危険を冒して対抗する気はなかった。「関係ない。」
その後、クラウスが尋ねた。
「なぜ彼らの指示を無視した?ルートをよく知っているように見えたのに。」
メインは口元を緩め、答えた。
「成功する者はいつも自分の道を選ぶ。彼らに頼る必要はない。」
二人はモンスターを狩りながら、組織の指示するルートを避けつつ進んだ。ついに二十一階のボス部屋に辿り着く。しかし、そこには驚くべきことにボスはいなかった。
「まだボスはいないのか?」クラウスは眉をひそめた。
メインが答える前に、人影が現れた。先ほどの組織の者たちだ。彼らは涼しい顔で歩み入り、作り笑いを浮かべて言った。
「また会ったね。ここ三日間で、いろいろ稼いだだろう?全部寄越せ、そうすれば安全に帰れる。」
クラウスは柄を握り締め、眼光に殺気が宿る。メインは小さくため息をつく。
「いいえ…そんなことは決してない。」
空気が張り詰め、組織の者たちが一斉に武器を握り締めた。言葉は不要、戦闘が始まった。
彼らの戦闘力は並ではなかった。特にクロスボウ使いは強烈で、射出された矢はメインの防御エネルギーを削り、わずかに傷をつけた。クラウスでさえ、盾を持っても長く耐えられず、風を切るような矢の連射に防御が脆くなる。
悔しかったのは、彼らは基本技しか使わないのに、動き一つでメインを追い詰めていたことだ。
その時、少女は黙ってはいなかった。躊躇しながらも、毅然として小さな魔法を繰り出した――風の刃、小さな炎、冷水の流れ、薄いバリア。威力は微小でも、メインへの圧迫を和らげ、クロスボウの連射を少しでも遮った。
さらに彼女は防御魔法を施し、メインの鎧を強化した。おかげでメインは組織の首領――巨大で冷酷な大男、両手で大剣を握る者――と対峙できるようになった。
メインが正面から戦う間、クラウスは自身の支配力を展開した。土の壁を築き、数人の傭兵を閉じ込め、火と水を組み合わせて濃い蒸気を立ち上らせた。視界を遮り、敵の連携を断つ。クラウスの目的は明確:メインが首領を討ち取り、脱出経路を切り開く時間を稼ぐこと。
戦いに戻ったメインは徐々にバランスを取り戻す。鎧の強化で重い攻撃に耐え、何より少女の真価――視覚で魔力を感知する能力――が明らかになる。
敵が力を使うたび、少女は的確に指示を出す。「左!肩に力が集中している!」簡潔だが正確無比。おかげで、メインの一撃一撃は鋭さを増し、意図的に攻撃できるようになった。押されていた状況から、次第に優位に立ち、ついに敵の包囲網を突破する。
三人は十九階へと急ぎ、暗闇が追跡者を飲み込むのを待った。追跡組は、逃げた標的に構わず、別の目的――捕縛された女性冒険者たちを奴隷として連行する――に移った。
ここでようやく真実が明かされた。彼らは単なるダンジョン略奪者ではなく、人身売買の集団だった。戦利品を要求するふりは外見だけの欺瞞。ダンジョン略奪は日常の“掟”に過ぎず、冒険者の女性を狙うことこそ、評議会の注意を引き、処罰の対象となる。
少女は最初からそれを察していた。二十一階には、武器と衣服を奪われた少女たち特有の弱く脆い魔力が大量に存在していた。それゆえ、メインに避難させるよう促したのだ。
メインは驚き、好奇心を抑えきれず訊ねた。「魔力を感じることは分かる…でも、どうして服を着ていないと分かるの?」
少女は沈黙し、瞳を暗くした。メインは問い詰めず、彼女の秘密として受け入れた。
三人は数日間、奴隷商の跡を追った。最終的に彼らは権力者の領地前で立ち止まった。そこは冒険者で溢れ、出入りは頻繁で、巨大な黒市のようだった。
メインとクラウスは軽挙妄動を避け、小さな宿屋を借り、時を待った。証拠がなければ評議会に報告しても無駄である。監視と証拠収集が唯一の手段だった。
数日後、メインは領地内で権力者について情報収集を始めた。酒場や闇市で囁かれる噂は、一つの事実に繋がった――「命を懸けたゲーム」。
それは血にまみれた狩りで、冒険者たちは領地内に放たれたモンスターと戦わされる。開始時刻は不明で、誰も逆らえない。
メインの不安は増した。よく観察すると、町は人で賑わうが、若者や一般労働者の姿は皆無だった。普通の住民は一人もいない。 戦闘経験豊富な者か、諦めた目をした者だけがいる。
強風が吹き、メインの帽子を飛ばす。顔を露出した瞬間、巨大な音が天を震わせた。
――「ゲーム開始!」
空から光柱が立ち上がり、巨大な結界が領地全体を覆った。地は揺れ、空間が歪み、巨大な現代都市が出現した。黒い舗装道路、鋼鉄とガラスの高層ビル、広告や電子スクリーン、奇怪に点滅するネオン。
メインは深く息を吸い、声を震わせた。
「まさか…ここは渋谷、日本の首都最大の交差点だ。」
渋谷に投げ込まれた冒険者たちの群れを見て、彼は圧倒され、恐怖を覚えた。ここでは最後まで生き残る二人だけが生き残ることが明白だった。
ゲームは一か月続く。トビアスの妹は、その間、一人で生き抜かなければならない。思いはトビアスの拳に力を込める。
メインと仲間は彼を励まし、精神を保たせようとした。最終的に四人は、最初の避難場所として地下鉄駅の地下に潜むことを決めた。
そこには長く狭い車両区画があり、敵に遭遇した際に退避しやすい。理想的な一時避難所だ。
階段を急ぎ降りながら、メインはトビアスの真の力を尋ねた。
彼は長いマントを整え、肩にかかる髪を払い、落ち着いた表情で答えた。
「私は空間魔法使い。強みは敵を一点に集め、味方を強化し、いくつかの基本元素を操ること。サポート役だが、単独でも十分警戒させられる力を持つ。」
メインは軽く頷き、少し安心した。トビアスには力もあり、生きる理由もある。しかし、このゲームで、その理由と信念が、人間の欲望に勝てるだろうか。




