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009 狙いは仲間割れ

「奥様だって理解しててのその対応なんでしょう? その方がよっぽどおかしいと思わないの?」

「ご自身が公爵様に愛してもらえないからと言って、あたしたちに当たらないでくださいます?」

「そーよ、そーよ」


 どこまでも侍女たちは私に食ってかかってくる。

 身分どうこう言う前に、人としてどうなのかしら。

 こんな人たちを雇っているこの家も、やっぱりおかしいわよね。


 馬鹿にしたように、三人はクスクスと笑った。

 今まではそうでしょうね。

 だからこそ、余計にこの子たちを付け上がらせたのだわ。


「それとこれとは関係ないって、まだ分からないみたいね」

「負け惜しみ言っちゃって」

「ホント、やだやだ」


 私のことはあとでもいいし、先にルカの待遇改善と思ったけど。

 さすがに頭に来たわ。

 ここまで言われて、反撃されないとでも思ってるのかしら。


「もう、食事の用意も、持ってこなくていいわ」

「食べないつもりですか? そんなことしたって、同情も買えませんよ?」

「同情同情って、みんな馬鹿の一つ覚えみたいに。まさか、そんなことするわけないでしょう」

「じゃあ、なんだって言うんですか」

「こうするのよ」


 私はズカズカと彼女たちの脇をすり抜けると、いつもの硬いパンと具なしスープを持って部屋を出た。


 流石に私の行動に驚いた三人が追いかけて来る。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


 しかしそれすら気にせず、私は一直線に厨房へ向かった。


 待てと言われて待つ馬鹿がどこにいると言うのよ。


 厨房には昨日いた料理長以外にも、数名の料理人たちがいる。

 私は追いかけて来た侍女たちの制止を振り払いながら、厨房にスープの皿を出した。


「あの、奥様、これは一体?」


 私が差し出した料理に、その場にいた人たちの注目が集まる。


「ごめんなさい。毎日こればっかりで味気なくて。私の朝ご飯、どうにかならないかしら。侍女たちに言っても、そんなのはココでは贅沢だと言われてしまうし」

「な、や、そんなこと言ってないじゃないですか!」

「言いがかりです!」

「今さっき言ったじゃない。いらないのなら、今後もう食べなくてもいいって」


 私の言葉に、侍女たちは青ざめていた。

 そしてその料理を見た料理人たちも、固まってしまっている。


「奥様、毎日の朝食はこれだけだったのですか?」 


 料理人が恐る恐る私に尋ねる。


「朝食も夕食も、ほとんど同じではないの? お昼ご飯なんて、昨日初めて頂いたのだけど。あまりに美味しくて感動してしまったわ」


 私は白々しく、視線を落とした。

 ざわざわとし始める厨房。

 もちろん私も分かってやっていた。


 そう、この料理が本来私に出すべきものではないことなど分かりきっていたから。


 そしてここで大声で食事の批判をすることで、出した方が悪いのか運んだ方が悪いのか、はっきりさせようと思ったのだ。


 こんな粗末な料理だって、誰かが作って、誰かが運んだのだから。

 もちろんわざと、私に食べさせるために。


 こんなことをどこまでの人間が知っているか知らないけど、普通で考えればおかしいことなど分かり切っている。


 自分たちの非を認めたくない人なら、結果は簡単だろう。

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