表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/89

085 悪あがきの果て

 ルカに手を伸ばし、その小さな手を取ろうとした瞬間、ガタンというやや大きめの音で私は振り返る。

 そこにはやや下を向きながら髪を振り乱し、つい先ほどまでと余裕や勝ち誇った笑みなどまったくないノベリアがいた。


 彼女は青白い顔で、ブツブツと恨みのごとのような何かを呟いている。

 その言葉は聞き取れないものの、彼女の手にはなぜか三つの蝋燭(ろうそく)に火がついたままの金で出来た燭台(しょくだい)があった。


 おそらく先ほどのガタンという音は、暖炉の上に置いてあったそれを下ろした音だろう。


「なにを……」


 声をかけてもノベリアはこちらを見ようとはしない。

 ただフラフラとそれを持ったまま歩き出し、窓の前に立った。

 ゆらゆらと揺らた蝋燭の炎が、力なく歩くノベリアに似ている気がした。


 どこまでも危うい動きに、誰もその場から動けないでいる。


「ノ……」


 彼女の名前を呼ぼうとしたその瞬間、顔を上げてこちらを見た。虚ろな瞳に私が写る。


「いつだって何もかもあたしのものにならない。彼だって愛していたのに」

「ノベリア」


 彼とは、アッシュと別れたあとに一緒になった人かしら。素性など詳しくは知らないけれど、ノベリアがお金などではなく、本当に愛した人だったのだということは何となく分かる。


 自分よりも身分も低く、お金がなくても一緒にいたかった人なのだから。


「何もかも思い通りにならない世界なんて、いらないわ」

「!?」


 ノベリアは、力なくただ笑った。

 そして笑ったあと、蝋燭の火をカーテンに押し付ける。


「いけない!!」


 シルクで出来た柔らかく細かな刺繍の施されたカーテンは、あっという間に火を飲み込んだ。

 そしてすぐに火は天井までたどり着き、一気に燃え広がる。


「あははははははは。いらないものなど、全部消えてしまえばいいのよ」


 狂ったようにノベリアはその炎を見つめながら、ただずっと笑い続けていた。


 いけない。この屋敷が何で出来ているか分からないけど、このままだと一気に全焼してしまうわ。


 黒い煙が室内に立ち込める、焦げる嫌な匂いが鼻につく。

 手で口を押さえたものの、喉が一気に痛くなる。


 このままここにいたら、一酸化炭素中毒になってしまうわ。焼け死ぬのも、どっちも嫌よ。

 

 狂ったように、笑いながら一人くるくると回るノベリアを助ける手立てはない。

 彼女に構っていたら、ルカが危ないわ。


 先にルカを外に出してから、助けを呼ぼう。


「ルカ」

「ビオラ!!」


 私が喋るのとほぼ同時にルカが声を上げた。そしてその声と共に、ドアが閉まる大きな音もする。


 一瞬、何が起きたのか理解出来なかった。

 しかしドアの外側で暴れるルカの声を聞いた瞬間、ようやく頭が理解し始める。


「離して!! 離せでしゅ!! うわぁ。ビオラ、ビオラ!!」


 暴れる声のあと、ルカがドアを叩く音が部屋に響いた。


「ルカ、そこにいるの? 乳母は? ルカ、大丈夫なの!?」

「ぼくは大丈夫でしゅ。でも、乳母が鍵を……ビオラ、ビオラ、開かないでしゅ」


 矢継ぎ早に聞いた私に、ルカは答えてくれる。だけどその声は泣いているように聞こえた。


 おそらく気が動転した乳母がルカを連れて部屋の外に出たのだろう。

 そして鍵を閉めた。火事から自分たちを守ろうとしたのか、それとも悪事がバレたことに対しての仕打ちか。


 今は考えてもそのどちらかなど、分かりはしない。だけど、とりあえずルカが無事なのだけは分かった。


「ビオラ、ビオラ、ビオラ!!」

「ルカ、落ち着いて。私は大丈夫よ。だからとりあえず誰か大人を呼んできてくれるかな。火事になってドアが開かないと言って?」

「でも」

「出来る? これは重要な任務よ」


 こうして会話しているうちにも、どんどんと火は広がっている。

 本当は全然大丈夫ではない。だけど今ルカにそれを伝えるのは得策ではないだろう。


 私は私でここから脱出する手段を探さないとダメね。もう時間はなさそう。


「分かったでしゅ。行ってくるでしゅ。待ってて!!」


 大きな声と、駆け出す足音を聞いて、私はほんの少しホッと胸をなで下ろし

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ