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愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


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079 初めから仕組まれた計画

 私が勢いよく開けたルカの机の引き出し。

 ガタンという乾いた音と共に、中からいろんなものたちが飛び出てくる。


 夏に避暑地で訪れた湖から採ってきた石や、いつから入っていたのかすら分からないようなやや黄ばんだ紙切れ。しおれた花、短くなった鉛筆。

 そんなすべての物が一気に床に散らばり落ちた。


 その中でも比較的に新しい真っ白な紙でありつつも、ややくしゃりと握りつぶしたような手紙が目に入る。


「手紙……?」


 少なくとも、私がルカと交流するようになってからは誰かに手紙をもらったという話は聞いたことがなかった。だけど他の紙類たちに比べ、これは何よりも新しく見える。


「誰から?」


 綺麗な封筒に入っているでも、可愛らしい便箋が使われているわけでもないその無機質な手紙には、とても子どもに宛てたとは思えないような内容が書かれていた。


 『愛しい私の息子 ルカへ


  プレゼントは気に入ってくれましたか? ママはあなたがいない日々を寂しく過ごしています。あたしにとって、今は愛する者はあなただけ。傍にいない寂しさをいつも感じていますだからあなたが会いに来てくれて、また一緒に過ごせる日を待っています。そうそう、子猫はとてもかわいいですよね。あなたの継母も、とても気に入っているのではないでしょうか。


 でももしそうなら気を付けて? だってあなたのお父様と継母の間に子が生まれたら、その子は可愛がってもらえても、あなたは放置されてしまうかもしれないから。母はあなたがとても心配です。もし連絡をくれればすぐに迎えに行くわ                          ノベリア』



「奥様、その手紙は?」


 手紙を握りしめたまま、固まった私にリナが声をかける。

 だけど私はなんと言っていいか分からなかった。


 嫌な予感は少し前からずっとしていた。

 だって全てが計画されていたようで、誰かの手の上で踊らされているみたいだったから。

 偶然だって考えても、心のどこかで何かがおかしいって分かっていたのに。


 静かになったノベリアが、こんなことを計画していたなんて思いもしなかった。

 実の息子に宛てるような手紙ではない。

 表面上はルカを気遣い、愛していると言いつつ、こんなの全然愛情から書いたものじゃないじゃない。


 ノベリアはただルカを手に入れるために、こんな卑劣なことを……。

 これを読んだルカがどう思ったなんて、考えもしなかったわけでしょう。

 どれだけこの手紙で傷ついて、ルカはここを出る決意をしたなんか絶対に考えていない。


 でもそれ以上に、こんな悲しい決断をルカにさせてしまった自分が不甲斐なさすぎる。

 最低だ。何もかも。あの女も、私も……。


「奥……様」


 私は涙を止めることが出来なかった。

 そしてこの手紙はルカのものだと分かっていても、力任せに握りつぶす。


 許せない。ううん。絶対に許さない。

 子どもにしていいことじゃないわ。

 わざと子猫を焚きつけて、自分はもう愛されないかもしれないなんてルカに刷り込むなんて。


「リナ、アーユと執事長をすぐにここに呼んで」

「は、はい!」


 悲しみよりも怒りが湧き上がってくる。

 私は涙を拭うと、すぐにリナに指示を出した。

 そしてほどなく呼ばれた二人が部屋に入ってくる。


 私は二人に手紙を見せた。


「すぐに旦那様へ連絡いたします」


 執事長は私からの説明を聞くまでもなく、手紙を読み終えるとすぐに行動し始めてくれた。

 今日、アッシュは朝から兄に呼ばれて登城したきりだ。

 どうにも父の容体が悪いらしく、兄を王とするためにいろいろと忙しさが加速しているようだった。


 だけどこの非常事態には、さすがに忙しくとも帰ってきてもらわねばならないだろう。


「奥様、旦那様の到着を待って子爵家へ行かれますか?」


 私はアーユの言葉に、首を横に振った。


「いえ。アッシュ様の到着を待たずに、先に子爵家へ私は向かいます」

「ですがさすがに危険すぎるのでは?」

「いくらなんでも公爵夫人である私に危害を加えることないでしょう。例えあったとしても、ルカの安全のためならばそちらを優先すべきです」


 アーユは私の言葉に、難しそうな顔をする。

 アーユの言いたいことは分かる。だけど、私があんなところにルカを置いておきたくなんてないのだ。

 絶対に許さないし、絶対に認めない。ルカを取り戻すわ。


「アッシュ様には一足先に私が子爵家へ向かったことも伝えて。すぐに出ます。馬車の用意を」

「……かしこまりました」


 私の決意が揺るがないと分かったのか、アーユはそれ以上言及してくることはなかった。

 そして私は用意された馬車で、そのまま子爵家へ向かった。

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