表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/89

075 小さな嵐

「ただいま」


 そう言いながら玄関を開けてエントランスに入ると、ルカが私に飛び込んでくる。


「ビオラ!」


 足に顔を埋めるようにルカは私に抱きついてきた。

 私はやや驚きながらも、そっとルカの背中に手を回す。


「ただいま、ルカ。元気だった?」

「ビオラ……おかえりなさいでしゅ」


 ルカはそう言葉にしてくれたものの、私を抱きしめたまま動こうとはしない。


「ルカの元気な顔が見たいのだけど?」

「うん……」


 ゆっくりとだがルカは、私の足から顔を離してこちらを見上げる。

 今にも泣き出しそうなのか、不安を堪えているのか。

 きゅっと下がった眉からは、そんな感情が読み取れた。


「帰って来てくれて、良かったでしゅ」

「うん」

「会いたかったでしゅ」

「うん。私もよ?」

「もうどこも行かないでしゅか?」

「もちろん、どこにも行かないわ。だってここが私の家だもの」


 一つ一つルカを安心させるために、私は質問にゆっくりと返していく。

 そしてその度に、私もルカと同じ気持ちを噛みしめていった。


 ここは私の家。やっと見つけた居場所ね。


「ボク、ビオラが帰ってきたら言おうって思っていたことがあるんでしゅ」

「なあに?」


 ルカは一度私を抱きしめる手に力を入れたあと、手をゆっくりと離した。

 そして数歩下がり、私をしっかりと見つめてくる。


 ほんの数日会っていないだけなのに、その顔はややしっかりしてきたように思える。


「ビオラ……その、あの……ボクの、おか……」

「みゃー」


 ルカの言葉が終わらぬ間に、その声をかき消すくらいの大きな鳴き声がエントランスに響き渡った。

 その場にいたみんなの視線がその鳴き声を探すように、辺りを見渡す。


「なに?」


 声の主である、小さな白い子猫が二階から一気に階段を駆け下りてくる。


「だ、ダメよ!」


 猫を追いかけてきたルカの侍女リナが、半泣きになりながら階段を一緒に降りてきた。


「ルル、ダメでしゅよ! まだ出てきちゃ」

「ルル?」


 子猫は真っすぐにルカを目指し全速力で駆けてきたと思ったものの、そのままの勢いでなぜか私の足から胸めがけて上ってきた。


「え、な、猫ちゃん?」

「ルル、勝手にビオラに上っちゃダメでしゅ。こっちおいで」


 もう何が何だか。捨て猫か何かをルカが拾ってきちゃった感じかしら。

 子猫はなぜかゴロゴロと喉を鳴らしながら、立てた爪で器用に私に引っ付いてしまっている。

 そっと抱えるように手を回せば、小さな体は小気味よく上下していた。


「これは一体どういうことだ? 猫はどこから来た?」


 今まで私の後ろで状況を見守っていたアッシュが、頭を抱えながら声を上げた。


 触っていて気づいたことがある。

 転生する前に捨て猫を拾ったことが一度あるけど、もう少し痩せていたわね。しかもこんなにも毛並みはよくなかった。


 私が城へ行ってすぐに屋敷に来てお世話されたからといって、こんなにもすぐにふくよかで毛並みが復活するものかしら。

 

「この子は……」

「きゃあ!」


 ルカの言葉を遮ったのは私。

 抱いていた猫からじんわりと生暖かいものが溢れ、私のドレスを濡らす。その感覚ですぐに私は猫を両手で抱き、高く掲げた。


 すると予想通り、ぽたぽたと水滴が床を濡らす。


「わわわ。ビオラ、大変でしゅ」

「奥様! すぐにお着替えを」

「……誰かビオラの入浴の用意を」


 私以上にルカやアッシュたちが、一気に慌てだす。

 ルカが言いかけた全ての言葉を聞けぬまま、私はまず急ぎ部屋に強制的に戻ることとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ