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愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


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061 一人でやってみよう

 スタンピードによる騒ぎが収まった数週間後、だんだんと秋は深まりつつあった。

 

 あれほど青々としていた庭の木々はやや色を失い、落ち葉が風に舞うように。

 そして夏とはまた違った虫たちが夜は鳴いていた。


 ルカは毎日行っていた虫の観察を週の半分ほどに減らし、その代わり騎士団との体力づくりに参加したり、次期公爵となるための勉強も始めた。


 そうなると手持ち無沙汰になるのは私だった。

 元より一人ここでの仕事がない私は、本当に何もすることがなかった。

 

 しかも貴族令嬢が嗜むというような、刺繍や絵画などは驚くほど才能がない。

 辛うじてお菓子は作れるけど、料理長の腕には敵わなかった。


 ただ一つだけ良かったことがある。

 それはあの別荘の湖の奥で、オパールによく似た宝石が採取出来たことだ。


 そして私の絶妙に下手な絵を元に、職人がブローチやタイピンを作ってくれている。

 完成したものを売るか何かすれば、かろうじて一人無職というわけでもなくなるというもの。


 公爵夫人なのだから働かなくてもいいのは分かっているけど、どうしても一人だけ楽しているのは嫌なのよね。前みたいな社畜になるつもりはないけど、少しくらい働かないと。


 そんなことを自室でぼんやり考えていると、最近はほぼ私付同然のアーユがノックのあと入室してきた。


「奥様、工房から試作品と奥様宛のお手紙が届いております」


 その手には私が職人に頼んでおいたものが入った宝石箱と、薄紫色の花が添えられた手紙が。


「手紙? 珍しいわね」


 ひとまず手紙を自室のテーブルの上に置くと、先に宝石箱を開けた。


 中には二サイズのネクタイピンと、同じ石を使ったブローチが入っている。

 驚くほど絵心がない絵から、オパールを中心に座した細やかな金細工のブローチが出来上がるなんてすごいわね。


 読解力というか、なんというか。

 こんなに綺麗なものを作ってくれて感謝しかないけど、それ以上に職人さんへ平謝りしたい気分だわ。

 もう少し絵が上手くなるように最低限の練習はしなくちゃ。あれじゃあ、幼稚園児の方がまだ上手だと自分でも思うもの。


「それはルカ様のお誕生日祝いですか?」


 アーユが宝石箱をのぞき込み、尋ねる。

 そうなのだ。

 あっという間で、ルカのお誕生日まではあと一か月ほど。


 それまでに招待客の選定と、プレゼント、あとは会場の飾りつけの打ち合わせや料理の打ち合わせなど、やらなければいけないことが山積みだ。


 取り急ぎ、私が一番にとりかかったのはこのネクタイピン。

 家族みんなでお揃いにするために、特注したのだ。


「そうなの。いいと思わない?」

「初めて見る石ですね。それがあの湖で採れたものですか?」

「そうなの。こんなに綺麗なら売れそうじゃない?」

「確かに……高値で売れそうですね」


 まじまじと見れば、確かに売れそうな気がする。

 もっとも、デザインはちゃんとした人に頼む方が良さそうだけど。


 この世界で主流な宝石たちで、こんな石見たことないものね。

 やってみないとお金になるか分からないけど、楽しそうなことはやってみたいかな。さすがに赤字にはたぶんならないでしょう。


「ルカのお誕生日が終わったら、ちょっと何か作って売ってみようかしら」

「それはいい案かもしれませんね」

「ふふふ。ちょっと楽しみだわ。で、これは誰からかしら?」


 私宛に手紙が届くのは初めてだ。しかも花まで添えられて、とても丁寧だし。


「んー?」


 でも見たコトがない家紋ね。誰からかしら。

 私は少しワクワク感を覚えながら、手紙を開いた。

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