054 家族の姿
翌朝には、熱はすっきりと下がっていた。朝の診察で風邪ではなく体が冷えたことと疲労だと、ある意味太鼓判を押された私は、侍女に案内されるまま食堂へ向かう。
中にはすでにルカと公爵が席に着いていた。
そして二人はさも当たり前かのように私を迎えてくれる。
ほんの少し前までの、みんながバラバラだった頃が嘘のようだ。
理想の家族像って、きっとこんなだった気がする。
向こうでは最後まで手に入れられなかったけど、今が幸せだから十分ね。
「おはよう、二人とも」
「おはよう、ビオラ」
「おはようございましゅでしゅ」
いつも二人で食べる食事も、最近は会話が増えてきたが、三人だとさらにその会話は増えた。
そして運ばれてくる食事は量こそ違うものの、全て同じものだった。
「ルカはお野菜が嫌い?」
隣に座るルカに、そう尋ねる。
「うー。そんなことは……ないこともないでしゅが」
ルカは一番最初に運ばれてきたサラダを、もう全ての料理が出揃ったというのに、一口も手をつけてはいない。
そして私の言葉に、サラダを見つめたまま固まってしまった。
スープの中に入っている野菜などは気にせず食べていたけど、生の野菜が苦手みたい。
私が子どもの時もそうだったから、なんとなく気持ちは分かるけど、そのままってわけにはいかないわね。
「ルカ、好き嫌いは……」
そう言いかけた公爵に、私は片手を上げて合図をし、制止する。
こういうのってストレートに言えば言うほど、嫌になっちゃうのよね。給食もそうだけど、嫌いなものを無理やり詰め込ませると、食事が楽しくなくなってしまう。そうなったらもう、なかなか好き嫌いって治らないのよね。
「ねぇルカ。嫌いなモノでも、一口ずつでも食べられたら私はすごいなって思うわ。昔ね、私もサラダが大嫌いだったけど、今ではなんでも食べられるのよ」
「うー」
「あなたのお父様もそうよ? 初めは嫌いでも、食べていくうちにきっと好きになるわ」
「本当でしゅ?」
ルカは公爵を見た。
すると彼は優しい顔のまま、大きく頷く。
「ああ。ビオラの言う通りだ。まずは一口でいいから、食べてみなさい」
「……はいでしゅ」
フォークにサラダの葉っぱを刺し、ルカはやや震える手でそれを口に運ぶ。
そして目を固くつぶったまま、頑張って飲み込んでいた。
「すごーい、食べれたね。ルカはお利口さんね。偉いわ」
「エライでしゅか?」
「ええ。もちろん。今日は一口食べられたから、明日は二口食べられるように頑張りましょうね」
「明日も……いっしょでしゅか? いっしょに食べてくれるでしゅか?」
「ええ。もちろんよ」
伏し目がちに私たちの顔色を窺うルカの頭をなでた。
「いいですわよね、アッシュ様」
「ああ。今日からは共に食事が出来る時は、必ず家族そろって食べることにしよう」
「わーーーーい。うれしいでしゅ」
「ええ、本当ね」
ルカの満面の笑みに、私も公爵も笑顔になっていた。




