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愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


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054 家族の姿

 翌朝には、熱はすっきりと下がっていた。

 私は侍女に案内されるまま、食堂へ向かう。


 中にはすでにルカと公爵が席についていた。

 そして二人はさも当たり前かのように私を迎えてくれる。


 ほんの少し前までの、みんながバラバラだった頃が嘘のよう。


 理想の家族像って、きっとこんなだった気がする。

 向こうでは手に入れられなかったけど、今が幸せだから十分ね。


「おはよう、二人とも」

「おはよう、ビオラ」

「おはようございましゅでしゅ」


 いつも二人で食べる食事も、最近は会話が増えてきたが、三人だとさらにその会話は増えた。


 運ばれてくる食事は量こそ違うものの、全て同じものだった。


「ルカはお野菜が嫌い?」


 隣に座るルカに、そう尋ねる。


「うー。そんなことは……ないこともないでしゅが」


 ルカは一番最初に運ばれてきたサラダを、もう全ての料理が出きったというのに、一口も手をつけてはいない。


 そして私の言葉に、サラダを見つめたまま固まってしまった。


 スープの中に入っている野菜などは気にせず食べていたけど、生の野菜は苦手みたいね。

 私が子どもの時もそうだったから、なんとなく気持ちは分かるけど。


「ルカ、好き嫌いは……」


 そう言いかけた公爵に、私は片手を上げて合図をし、制止する。


 こういうのってストレートに言えば言うほど、嫌になっちゃうのよね。

 

「ねぇルカ。嫌いなモノでも、一口ずつでも食べれたら私はすごいなって思うわ。昔ね、私もサラダが大嫌いだったけど、今ではなんでも食べれるのよ」

「うー」

「あなたのお父様もそうよ? 初めは嫌いでも、食べて行くうちにきっと好きになるわ」

「本当でしゅ?」


 ルカは公爵を見た。

 すると彼は優しい顔のまま、大きく頷く。


「ああ。ビオラの言う通りだ。まずは一口でいいから、食べてみなさい」

「……はいでしゅ」


 フォークにサラダの葉っぱをさし、ルカはやや震える手でそれを口に運ぶ。


 そして目を固くつぶったまま、頑張って飲み込んでいた。


「ルカ、お利口さんね。偉いわ」

「エライでしゅか?」

「ええ。もちろん。今日は一口食べれたから、明日は二口食べれるように頑張りましょうね」

「明日も……いっしょでしゅか? いっしょに食べてくれるでしゅか?」

「ええ。もちろんよ」


 伏し目がちに私たちの顔色をうかがうルカの頭をなでた。

 

「いいですわよね、アッシュ様」

「ああ。今日からは共に食事が出来る時は、必ず家族揃って食べることにしよう」

「わーーーーい。うれしいでしゅ」

「ええ、本当ね」


 ルカの満面の笑みに、私も公爵も笑顔になっていた。

 

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