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愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


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053 嫉妬違い

 侍女たちが下がった後、夜になって公爵が私の部屋にお見舞いに来てくれた。


 熱といっても、ほんの少し高い微熱程度。

 だけどルカにうつしたらいけないから、一緒に食べる約束をしていた夕飯は一人キャンセルしてしまった。


 ルカはこの旅行に来る際に、虫の観察もそうだけど、それ以上に三人で摂る夕飯を楽しみにしていたのに。

 私のせいで、それが台無しになった。母親失格だわ。


「調子はどうだ、ビオラ」

「熱はさほど上がっていませんので、大丈夫です」


 公爵は私の顔色を見ながら、ベッドで寝たままの私のおでこを触った。

 その手は冷たく、心地好い。


「すみません。私のせいで夕食会が台無しになってしまって」

「いや、そんなのは大丈夫だ」

「でも、ルカがせっかく楽しみにしていたのに……」


 どこまでも申し訳なさでいっぱいだ。

 ベッドに横になったままうつむく私に、公爵は眉尻を下げた。

 

 この公爵家では、少し変わったルールがある。

 その一つが食事だ。


 子どもはある程度大きくなり、マナーが身に付くまでは基本的に乳母と自室で食事を摂る。

 そして乳母から問題ないと言われて初めて、ダイニングなどで他の家族との食事が出来るようになるというものだった。


 ルカはあの乳母のせいで、そんなマナーやすべてのことが遅れてしまっていた。


 だからなかなか一緒に食事が出来ていなかったのだが、ルカは年齢もある程度あり、基本的におとなしく行儀よくは座っていられるため、今日は練習もかねて家族揃って食事をする予定だった。


「反省しています。ちゃんとアッシュ様の言う通り、すぐに水から上がっていればここまで大事にはならなかったかもしれないのに」

「でも楽しかったんだろう?」


 公爵はそう言いながら私の顔を覗き込んだ。

 そう、楽しかった。

 あんな風にみんなでワイワイするのも初めてだったし、何もかも新鮮だった。

 だからつい、時間が経つのも忘れてしまっていたのだ。


「楽しかった……です」

「他の者たちも同じようにそう言っていたよ。君に声をかける前、俺も少し見ていたんだ」

「え? みんなで湖にいたのを、ですか?」

「ああ。それで皆と楽し気に遊ぶ姿に、少し嫉妬した」

「へ?」


 嫉妬? この人が?

 今まで一度だってそんなこと言ったことないのに。


 そんなに一人で仕事をするのが嫌だったのかしら。でも気持ちは分かるわ。みんながバカンスを楽しんでいるのに、一人だけ仕事なんて私でも嫌だもの。だから少し意地悪な言葉を私に言ってきたのね。

 こんなことなら、ちゃんと誘ってあげれば良かったわ。せっかく遊びに来たのだもの。一人仕事なんて寂しかったでしょうに。


「まず始めに、アッシュ様をお誘いするべきでしたね。一人でお仕事だなんて……」

「いや、それはいいんだ。自分でも子ども染みたことを言っている自覚はある。だからあの時、また君を傷つけてしまった。俺は一体、何度君を傷つけたら済むんだ……」


 公爵はそう言いながら顔に手を当て、天を仰いでいた。

 案外子どもみたいなところもあるのね。やはり公爵という肩書のせいで、窮屈な子ども時代を過ごしたに違いないわ。ルカはそうならないように、気を付けなくちゃ。


「すまない。どうも君相手だと、俺はいろいろやらかしてしまうようだ」

「私は特に気にしないので大丈夫ですよ? 今度はちゃんとみんなで一緒に遊びましょうね」

「……いや、なにか根本的に違うようだが」

「そうですか?」


 かみ合わない会話に、公爵は再び天を仰ぐ。何が違うというのかしら。遊びに交じりたかったから嫉妬したんじゃないって、どういうこと? 全然分からないし。難しいわね、この人。


「まぁ、今日はもういいさ。とにかく今はゆっくり休んで熱を下げることに専念してくれ。三人での食事は明日以降すればいい」

「はい」

「何か欲しいものはあるか?」


 公爵の言葉に、過去がチラつく。

 こんな言葉をかけてくれる人なんて、本当に初めてだ。


 少しくらいワガママを言ってもいいのかしら。

 弟がいつもそうしていたように。私でも許されるのかな……。


 不安になりながら公爵の顔色を窺えば、彼は私の頭を優しくなでてくれた。

 たったそれだけでも、満たされていく自分がいる。


「何でもいいから言っていいんだぞ?」

「……では……私が寝付くまでそこにいて下さいますか?」

「あ、ああ。もちろんだ」


 心なしかそう答えた公爵の顔も赤く見えた気がした。

 しかし誰かが付いてくれている。

 そんな安心感から、私はすぐに眠りについた。


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