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愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


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045 親と子

 不意に、やや大きな声が中庭の奥から聞こえてくる。

 確かあっちの方角は子どもたちがいる方よね。


「何かあったのかしら」

「きっと子どもたちがじゃれてるだけですわ」


 そう言いながら、さも興味がなさそうにソニアたちは会話を続けようとする。


 しかし私はそんな彼女たちを気にせず、立ち上がった。

 するとやや遠くから、リナが二人の子どもを連れてこちらにやって来るのが見える。


 一人はルカで、もう一人はルカよりやや背が高い女の子だった。

 二人は可愛らしく手を繋ぎ歩いているものの、明らかにルカは泣いていた。


「ルカ! 何があったの」


 誰に構うわけでもなく、私はルカに駆け寄る。

 すると同じようにフィリアもその子どもに駆け寄っていた。


「バイオレッタ! どうしたの?」


 フィリアに似た黒髪に、エメラルドのような瞳。

 ああ、見たコトあるわ。

 まさにヒロインだ。


 でもこんな形で二人がもう出会ってしまうなんて。

 ある意味、今後の展開を考えると頭が痛い。


 だけど今はルカがなぜ泣いているか。

 二人並ぶとまさに可愛さが溢れた天使たちなのに。


 その全てがルカの涙で、悲しいものにされてしまっている。


「リナ、何があったの⁉」

「それが、ルカ様がいつものように観察をしていたところ……」

「あの乱暴な子たちが、虫を踏み潰したの!」


 言いかけた言葉の先を、バイオレッタが代わりにこたえる。

 そしてリナたちの後ろを、何か誤魔化すように笑いながら歩く子どもたちを指さした。


 ルカと同じくらいの歳の子から、もう少し上の子たちまで。

 どれも男の子ばかりだった。


「なんでそんなことを」

「そいつが虫なんて見てるからだよ」

「そーだよ。そんなもん見て、何になるんだっつーの」


 これくらいの歳ならば、身分やそんなものを理解するのはまだ難しい事なのかもしれない。


 しかしこんな暴言を平気で吐いても、親たちが何も怒りもしないというのはどういう了見なのだろう。


 ビオラは元より正妃の子ではなく、城でも境遇は良い方ではなかった。

 正妃の子である兄に疎まれ、寵姫の子である妹からは、いじめられていたくらいに。


 だけどそれはそれだ。

 ここにいる人間たちは、あくまでも元王女であり現公爵夫人より下でしょうに。


 今までビオラが何も言い返さなかったからだとは思う。

 

 屋敷でも公爵からの愛情がなかったために、使用人たちからすら馬鹿にされてきたのがいい例だ。


 でもそう、こういうのは廃墟などの落書きなどと同じで、打ち消したりしていかなければ、許容されたと勘違いしたモノたちがあふれ出すと私は思っている。

 

 せっかく公爵の顔を立ててあげようと思ったけど、それとこれとは別。

 きちんとした公爵夫人でいるためには、切り捨てることの方が大事よね。


「品のない子たちでビックリしましたわ」

「そ、それはまだ子どもで」

「そうですわ。子どものすることに、いちいち大人が出るのは間違っていますわ」


 ソニアたちは反省の色もなく、ただ薄ら笑いを浮かべている。


「そうですか? 悪いことをしたのに叱りもしない大人に育てられた結果ではなくて?」

「な、それは……」

「いくら勉強が出来ようとも、礼儀もなければ生き物の命を粗末に扱うような子では意味がないのでは?」

「ですが、まだ子どもですし!」


 子どもだとばかり言い張るソニアに、私は詰め寄る。


「うちのルカとはお宅の子どもは合わないようなので、今後のお付き合いは全てお断りさせていただきますわ」

「そんな! ビオラ様は子どもを生んだことがないから、そんな風に言われるのです」


 こんな公の場で、言っていいことこダメなことの区別もつかないなんて。

 さすがの私も怒鳴りそうになった時、時間通りに彼が姿を現した。


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