041 パーティの始まり
バラやたくさんの花が咲き誇る男爵家の中庭。
その広いスペースに、いくつもの丸テーブルのセットが出されている。
テーブルの上には紅茶やたくさんのお菓子たちがあり、優雅に婦人たちはそれを食べながら会話を楽しんでいた。
思ったよりその規模は大きく、大人が十数人に子どもはさらに数が多い。
今さらながらにめっちゃ緊張してきた。
やるしかないのだけど、出来れば逃げてしまいたい。
アーユにも確認をしたが、ビオラとルカがこうやって外に出るのはこれが初めて。
元々こういったものに興味がない公爵の影響もあるのだけど、ビオラ自身もあまり好きではかなったみたいだ。
だからこそ私たちがこの中庭に立ち、参加者たちに私たちが来たことが告げられると、一斉に注目が集まった。
好意的な視線から、まるで品定めをするような視線まで。
そして耳を澄ませば『あれが公爵夫人』なんて声すら聞こえてきた。
「こんにちは」
それでもただ平然を装い、笑みを浮かべる。
これはルカのため。
私が嫌がったり嫌な顔をしたら、余計にルカがこの輪に入ることを嫌がってしまうもの。
にしても、主催者の男爵夫人は公爵の従姉にあたるからきっと問題ないだろうって言った人どこだっけ。
このまま永遠に雰囲気悪かったら、あとで迎えに来た時に小言いってやるんだから。
「これは公爵夫人、この度は我が家のガーデニングパーティにお越しいただきありがとうございます」
一番奥の席に座っていたグレーの髪にピンクのやや派手目なドレスを着た女性が立ちあがり、こちらにやってきた。
この人が男爵夫人なのね。
髪色は公爵に似てるけど、雰囲気はあの方よりだいぶ華やかというか、うん。派手ね。
昼間で子どもメインのガーデンパーティだっていうから、化粧もドレスも控えめで来たんだけど。
彼女はがっつりピンクのアイシャドウに、アイラインも同じくがっつり。
いや、化粧は自分の好きにしたらいいんだろうけど。
他の人たちもドレス派手だし。
むしろ私たち、地味すぎじゃないって思えてくる。
もっとちゃんとリサーチしてから来るべきだったわ。
公爵に聞いても、大丈夫だろうってそれしか言わないし。
女の人は、そういうの大変なんだから。
一歩間違えたら、二度と呼ばれなくなっちゃうかもだし。
十分気をつけていかないと。
「いえ。中々こういうのに参加してこなかったので、お誘いいただけてうれしいですわ。あと、夫から皆様にとお土産があるんです」
私たちの後ろに控えていたリナに指示を出し、手土産を男爵夫人へと渡した。
公爵からってしてあるけど、これも私が用意してもらったものだ。
初めてのお呼ばれだし、手ぶらは嫌だったのよね。
「まぁ、うれしい。さぁどうぞ、こちらに座って下さいな」
男爵夫人は手土産を受け取ると、自分が座るテーブルに私たちを案内した。




