040 ささやかな作戦
公爵は約束した通り、すぐに子爵家に抗議をしてくれた。
あのラナの誘拐未遂の件は未だに捜査中で、ノベリアや乳母が指示したという証拠は見つかっていないらしい。
しかし犯罪が発覚すれば、極刑になることなど分かり切ったことを彼女は実行した。
お金か脅されたか、下働きに降格されてヤケになったか。
どう転んだってメリットがなければ、ヤケになったくらいでそんなことしないわよね。
どれだけ考えても専門家ですらない私は役に立てそうもない。
だから先に出来ることから始めることにした。
「きゃー、ルカすごくかわいい」
「でしゅか?」
リナたちの手によって完璧なるお出かけモードにされたルカを見た私は、叫ばずにはいられなかった。
整えられた髪に、公爵の服装に似せた青色の服にはボタンなどに小さな宝石が使われている。
先に準備が出来た私は、ルカの部屋に迎えに行ったのだが、ルカの方がなれない服装に時間がかかってしまったらしい。
準備が出来上がるまでは見ちゃダメとルカに言われ廊下待機していた、私。
ずっと楽しみにしていたのよね。
この日のために、ルカの服は公爵の服と同じ感じでオーダーメイドしてもらった。
親子コーデって、昔憧れてたのよね。
ルカと公爵って、瞳の色以外はあんまり似ていないけど、こうやって同じような服を着ることで親子ってことが他の人に強調できるし。
「ビオラもきれーでしゅ」
もじもじしながら、ルカは部屋の入り口に立つ私に声をかけてきた。
「本当? ルカにそう言ってもらえるとうれしいわ」
「えへへ」
二人でお互いを褒め合い笑う。
私はこの髪色に青が少し似合わなくて、薄い水色のドレスとハーフアップにした髪に着けたアクセサリーだけが辛うじて青色という。
見た目とか服装だけ似せても、所詮は外側でしかないわけで。
大事なのは中身だということは十分わかっている。
前世なんて劇的に両親に似てたけど、でもそれだけだったからなぁ。
「さぁ、行きましょうか、ルカ」
「はいでしゅ」
にこやかなルカと引き換え、私の方が今日はやや緊張をしていた。
ルカの手を引きながらエントランスまで降りると、執務室から公爵が出てくる。
「では行ってきますね」
「ああ、あとで迎えに行く」
「ええ、お願いします」
そう軽く挨拶を交わした。
ルカと私は、今からお呼ばれした公爵家の親族にあたる男爵家のガーデンパーティーへ行く。
子どもを連れて行けるということで、普段社交界には参加してこなかった私も向こうからの誘いに快諾した。
狙いとしては、まずルカのお友だちになってくれそうな子を探すこと。
そして他の人たちからの公爵家の評判を聞きつつ、公爵本人に迎えに来させる。
ラブラブアピールするつもりはさらさらないけど、家族愛アピールがしたいのよね。
ノベリアに付け入る隙はないんだよって、思い込ませる作戦なのだ。
もっともそんな大がかりな作戦というより、本当に少しずつ家族になるためにはと考えた結果なんだけどね。
「じゃあ、ルカ行きましょう」
「はいでしゅ」
ルカの手を引き、晴天の空の元、私たちは出発した。




