011 予期せぬ遭遇
「ふふふ」
廊下を一人歩いていても、思わず声が漏れた。
別に彼女たちを徹底的に断罪したかったわけじゃないけど、食べるものはちゃんとしないとね。
これから毎日ルカと遊ぶんだもの。
ちょっとは体力を付けないと、この前みたいに倒れてしまったら大変だわ。
だいたいあの子たちのせいか分からなけど、この体は痩せすぎよ。
絶対、体重は40キロちょっとしかなさそう。胸もないし、ガリガリもいいとこね。
足なんて棒みたいだし。転んだら絶対折れるわ、これ。
もうちょっと太らないと。
前世みたいにコンビニご飯とお菓子ばっかりで太りすぎなのも健康にはよくなかったけど、少なくとも貧血とかで倒れたことはないからなぁ。
やっぱり、痩せているよりかは多少ふっくらの方が健康的よね。
だいたい私、食べるの好きだし。
「それにしても、ご飯が楽しみだわ」
一人ブツブツ言いながらダイニングの扉を開けると、中には昨日ぶりとなる公爵の姿があった。
うわぁ、最悪。
一人は給仕なのか公爵の侍女なのか、やや年配の女性侍女。
もう一人は、濃い緑の短い髪の秘書のような男性がいた。
公爵の後ろに控える彼らも、私を見るなりその目を大きくさせる。
こちらが驚きよ。
まだ食事中だったのね。
んー。せっかく新しく作り直してもらう食事が来るのに、この人と一緒だなんて。
ムスっとしている人と食べるご飯ほど、おいしくないものはないのよね。
無視しておこう。あの人は空気。ここには私一人だけ。
うん。これがいいわね。
無視を決め込んだ私は、向こうの反応を見ることなく、勝手に一人離れた席に座った。
長いテーブルの本当に端と端。
ベッドの縦の長さの二倍ほどあるだろうか。
うん。ここなら視界にも入らないし、便利ね。
「何のつもりだ?」
無視を決め込んだというのに、逆に向こうから私に声をかけてくる。
嫌いなら、私と同じように無視してくれればいいのに。
こっちは初の温かい食事待ちでウキウキなのよ。構わないでちょうだい。
「何の……ですか。見て分かりませんか? ただ食事を待っているだけですが」
「普段ここでは食事をしない君がか?」
そう言われて、ふと考える。
なんでビオラはここで共に食事をしなかったのかしら。
少なくとも、この子は公爵のことが好きで好きで仕方がなかったはず。
それは叶わないし、通じないとしても同じ空間にいたいって思わなかったのかな。
それとも終始こんな態度だったから、悲しくなっちゃったとか?
それはあり得そうだけど。でもなぁ。自分から後妻でもいいから公爵と結婚したいって言い出すほどだったんだから、もっと押してそうなんだけどな。
「部屋で、一人食事をするように言われておりましたので」
なんとなく、この返答の方が私にはしっくり来た。
誰がそうするように言ったのかは分からないけど、なんとなくね。
好かれていないことくらい、結婚前からビオラは知っていたわけだし。
「誰がそんなことを……」
そう公爵が言いかけた瞬間、ダイニングの扉が勢いよく開いた。




