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私のための異世界転生  作者: 桃栗パメロ
序章 少女は出会いを待っている
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007 消えた山

書きました。最後まで読んで感想や評価などくださると幸いです。

 雲一つない晴天、清々しい晴れ間の中俺たちはタナビ山……があったであろう場所へ向かっていた。


「おいおい凄いことになってるねえ、山が消えたとか言うわけだ。山というか最早凹んでるじゃないか!」


 そこにあったのは生物の気配一つすら感じさせない、草の焼けた匂いがする巨大なクレーター。ここに山があったなんて信じがたいな。


「では手筈通り、私たち全員にバリアを貼っておきますね。ある程度までなら攻撃から防いでくれますが、どうか無茶しすぎぬよう。」


「特にライヤには強固な物お願いするよ。私は弓だけどこいつは剣でさ、負う可能性のある傷は彼の方が多くなるからね。」


 全員同じくらいで良いだろ、なんて言う暇もなくマリは三人分の詠唱を始めてしまった。待っている間レイシャは落ち着かなさそうにかつて山があった場所を見ている。


「レイシャ、気掛かりなことでもあったか?」


「いや?大したことじゃないさ。ただここにいた筈のホークの群れは何処に行ったのかな。なんて思ってさ。」


「ホーク……って最初に会った時の鳥だろ?ああ、確かこの山に生息してたって話だったか。」


 ふむ……確かにレイシャの言う通り妙だ。

 クレーターには死骸のようなものも見当たらず、かと言って上空に飛んでいるかと言われたらそれも違う。じゃあここに元々いたというホークは何処に消えたんだ?


 ……あの時一羽で襲いかかって、レイシャに軽く仕留められた奴。あいつは移動中に逸れたもの、だとかそういう可能性もあるか……?


「バリア、貼り終わりました!」


 マリが言ったと同時にこの前見たばかりの、周りにサッカーボールのような模様が浮かび上がった。バリアは大体こういう形なんだな。


「まあこういうことは今考えた所で仕方ないし、忘れて良いさ。」

「想定と違って登山も下山もする必要ないし、魔物の気配も無い。一日かかる想定だったけどこれなら日が落ちる前に終わりそうだね。さっさとやってしまおうか。」


 レイシャが斜面を滑り降りていくのに追従する形でクレーターに近づいていく。上から見ていた時と然程変わらなさそうだな、強いて言えば土の匂いがするくらいか?


「貴方様、少々お時間頂いてもよろしいですか?」


 マリが控えめに裾を引く。何か手がかりでも見つけたのか?


「こちらの……タナビ山が消えたこの一件、恐らく一朝一夕で起こった事象ではないかと。」


「一朝一夕じゃない?確かに昨日今日の出来事じゃないだろうが……。」


「この辺りの土なんですけど、何か抉れているような地形なんですが……見てください、苔が生えているんですよ。」

「タナビ山に坑道はありませんし、洞窟があった報告も無かった筈です。なのにここに苔が生える余地があった。」


「ここに……ある筈ない空間があったってことか?」


 肝が冷えた感覚があった。何の意味があってそんな空間があった。涼しい風が通り過ぎていく。直射日光も当たらないしこの辺りは冷えやすいな。


 ……なんで直射日光が当たらないんだ?風を遮るもの一つもないこんな所で、いくらここが凹んでいるといっても日差しが当たらない角度じゃないはずだ。


「なあ、不可視の魔法ってどのくらいの大きさまで隠すことができるんだ?」


「どのくらい……ですか?えーっと、魔力が持つのならどれだけ大きなものでも隠すことができる筈です。家どころかお城一つだって隠すことができるかもしれないですね。もちろん魔力が持つのなら、という前提ではありますが。」


 マリからの返答を受け取った。瞬間、リュックからある道具を取り出す。


「貴方様、一体なに、を……。」

「……!レイシャ様、一旦お引きください!」


 それは出発前に荷物から抜く話も出ていた、不可視魔法を打ち消す閃光弾。それを野球でフライでも打つかのように空高く打ち上げる。


「どうしたのさ急に声を張り上げて。」


「レイシャ様、これは罠です。私たちはここに誘い込まれたのです!」


 打ち上がった閃光弾は目論見どおり不可視を破壊する。それこそ最悪の事態、自分たちが罠にかかっていたことを思いさせられる。


「あら、自力で気付いたのね。レイシャ・スプリングは兎も角、他二人への評価は上方修正させるべきね。」


「ライヤ、マリ、今すぐ逃げるよ!」

「あいつは魔王軍の四天王、紫炎のバーニアだ!今の戦力で勝てる相手じゃない!」


 そこに現れたのは中が空洞になった山と青肌の女性。紫色の炎のドレスが、静かに揺れていた。

 

読んでくださりありがとうございます。

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