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私のための異世界転生  作者: 桃栗パメロ
序章 少女は出会いを待っている
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004 展望

書きました。最後まで読んで評価や感想などくださると幸いです。

「こんな可愛らしい娘を連れてくるなんてねえ。一体何があったのか教えてくれるかい?」


「わかった!話すからちょっと待ってくれ、無言で近寄るな!」


 宿屋に帰った矢先想像はしていたが、二日酔いも吹き飛んだレイシャにもの凄く詰め寄られ、部屋の隅に追い込まれている。怒っているというよりは、……なんだか妙にニヤついた、まるで弄りがいのある話題が転がってきたかのような表情でだが。


「違うんです!これは私めが望んだことであって、彼は悪くありません。むしろ私を暴漢から助けてくださった……勇敢なお方なのです!」


「君の話もあとでゆーっくり聞きたいんだけど、その前にライヤから話を聞かないとね。というか暴漢から助けたって、随分と無茶したものだね。戦闘の経験は浅いと思っていたのだがね。」


「いや、気づけば体が動いていたというか……所でなんでこんなコソコソと話してるんだ。」


「なんでって言ったって……あの瞳を裏切られるかい?あれは単なる感謝や憧れの目ではないよ?君はその感情を向けられる対象なんだよ、むしろ部外者たる私よりもよく分かっていると思っているのだけどねえ。」


「…………?どういう意味なんだそれ。」


 途端に信じられないとばかりに口をあんぐりと開けて、ぱちくりと目を瞬かられた。そんなに驚かれるようなこと言ったか今?


 ♦︎


「で、君は今後何したいとかあるのかい?」


「何がしたいって……お前の手伝いするんじゃないのか?」


「勿論それはそうなんだけど、以降の話さ。店を開くか、冒険者として旅をするか、魔王に立ち向かうか。君のやりたいようにやれば良いのさ。」


 やりたいこと……確かにここに来てからずっとレイシャに誘導されて、若しくは必要に駆られてやったことばかりで、自分がやりたいことをあまり考えてこなかったな。マリがジュースを飲みながら興味津々に聞いている横で深く考える。


「……やりたいと言っていいのかは分からないけど、一つ思いついたな。」

「俺は勇者に会いに行きたい。勇者に会って、話を聞いてみたいな。」


「勇者様に……。」


「へぇ、勇者に会うか。じゃあ強くならないとね!君がどれくらいやれるのかはわかんないけど勇者のいるとこは魔王の軍勢と争っている以上、どうしても危険な所になるからね。マリちゃんもビシバシ鍛えてやってくれたまえ!」


「は、はい!決して成熟してる身とは言えませんが、私なりにお役に立って見せます。」


 マリが深々とお辞儀を下げ、レイシャの声に応える。あんまり心配してなかったが、マリも過度に怖がっているような様子はないし、この調子ならマリの緊張が解け次第、すぐに仲良くなるんじゃないか?


「じゃ、君のやりたいこともわかったし、そろそろ本題に入らさせて貰おうかな!さっきの手伝いの話、まだしてなかったからね。」


 レイシャがテーブル全体を覆うほどの地図を広げ、幾つか印を着ける。何処に何があるか、くらいの簡素なものではあるが、街がイラストで表されていて使いやすそうだな。


「私たちが今いる街、リベルテがこのお城のとこ。今勇者たちと魔王軍が争ってるのがこの谷の辺りだったかな?」

 

「へぇ、ここからだと随分遠いな。行こうとすると長旅になるか。」


 「今ライヤが言った通り、かなりに長旅になる程の距離があるのさ。その筈なのに、ついこの間リベルテ近辺に増えつつあって、なんなら魔王軍の幹部がいたなんて噂があってさ。ちょっと解決してくれないか、なんてちょっと前に頼まれてさ。」

 

「魔王軍の幹部ですか!?それって勇者様一団でないと勝てない程の強さを持った方々じゃないですか!どうしてこんな王都近くに……。」


 幹部ってだけでそんな厄介なんだな……。魔王軍、想像以上の強さかもな。


「で、ここからは私の予想も混じるんだけどさ、この地図のある山、この辺りに誰か魔王軍の幹部辺りが潜んでいる筈。」


 そう言って指差したのはリベルテから北東方向に少しだけ離れた場所にある山、タナビ山と言うみたいだ。


「……確かにここに身を潜めるのは理に適っています。ここ近辺に村は無く、王都から程々に離れたここに態々来るような人はいません。強いて言えば一攫千金を狙って採掘しようとする人はいるかもしれませんが……。」


「ほぼマリの言う通りだね。それにライヤ、昨日のでっかい鳥覚えてる?あいつ本当はタナビ山に生息しているんだよ。それがあんな所にいたなら、あそこで何かしらが起こったと考えるのは自然じゃないかい?」


 二人とも頭が回るタイプのようで、なんとなく話の内容はわかるが口を挟む間も聞き返す間もなく、とんとん拍子に話が進んでいく。


「ま、つまりここに偵察、あるいは制圧に行きたいんだよね。ライヤは行くとして、マリちゃんはどうしたい?」


「怖くは、ありますが…………私もお二方様について行きます。一人前とまでは言えませんが、お役に立ってみせますから。」


「ちょっと待ってくれ、幹部って勇者とかじゃないと倒せないくらいに強いんだろ?そんな奴がいるかもしれないって所に俺たちだけで行くのか!?」


「大人数だとバレて先手を打たれる可能性はあるし、君たち二人までなら私が抱えて逃げれるからこの三人で行くよ。それに今日明日で行くって訳じゃないんだ。不安なら君が強くなれば良い。」


 強くなれば良いって、投げやりな……。


「そうと決まれば準備と行こうか。一週間後にはここを出てタナビ山に向かいたいから、それまでに各自最高の体調で望めるようにすること!」

「てことで。はいこれ、欲しい道具。全部ここいらの店で買えて、この袋に必要な金額が入ってるから頑張って買ってきてねー!」


「ほぼパシリじゃないかそれ?まあ待っててくれ。今から行ってくる。」

 

 扱いに不満は感じなくはないが、大人しく買いにいくとするか。


 ♦︎


「さーて、ライヤは暫くは帰ってこないかな?ちょっーとマリちゃんと二人きりになりたかったんだよねえ。」


「……お久しぶりです、レイシャ様。私のこと、多分覚えてらっしゃいますよね?」


 雷也が半ばパシリのように買いに行かされた後、残った女子二人は、密かに再会を祝っていた。


「いやー、一時期は一切話題を聞かなくなったものだから生きてるか不安でさ。久しぶりに見たと思ったらこんなに大きく……はなってないけど立派に成長しちゃうなんて!驚いた驚いた。」


「確かに小さくはありますけどぉ……。」

「……できればあの……ライヤ様の前ではちゃん呼びは……。」


「……そうだね。子どもっぽく見られたくはないか。ごめんね!そこまでは気が回らなかったや。」


「いえ、すみません私も烏滸がましいことを……。」


 マリは深くお辞儀をする。それは緊張というよりも遠慮、謙遜が混じった行動。レイシャがどんな人か知っているからこその態度だった。

 レイシャもそれに気づかない者では無かった。あまり畏まりすぎるのも疲れるだろうと思い、少し考えた後。


「そうだねえ。君は否定すると思うけど、そうであると仮定して一個アドバイスをしてあげよう。」


「は、はい。何でしょうか?」


「ライヤの前で名前呼んだことある?無いなら名前呼びはとっておきとして残しておくべきだよ。そしていざって時に呼ぶのさ。きっとグッと来るだろうねえ。」


 自分を応援する者だと彼女に定義づけさせることで、自分との距離を近づけることにした。


「はい!?そっそそそそんな!決して私がライヤ様に恋慕しているとかそういうことは無くって……。なんというかその……。」


「そうなんだ、じゃあ私が貰っちゃおうかなあ。」


「ええ!?いや違うんです。困りません、困りませんけど……。」


「なんてね、冗談冗談。ごめんね!」


 顔を茹で蛸のように真っ赤にしながら、わたわたと慌てふためく彼女を見てつい悪戯な笑みが零れる。ちょっと悪いかなとも思いつつも、目論見は大成功のようだった。


「私は君のこと、応援してるからね。」


 顔を膨らますマリの前で、優しく微笑んでいた。

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