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私のための異世界転生  作者: 桃栗パメロ
第一章 魔法使いは恋を知る
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026 旅の始まり

書きました。最後まで読んでくださると幸いです。

 太陽は雲の隙間から、街を淡く、白く照らす。そよ風が葉を揺らし、鳥が楽しげに歌う。曇りときどき晴れってとこか?この調子なら日中暑くならないか。

 蒸し暑くも、視界が悪くもない、エルファスまで歩いて旅するにはちょうどいい日だ。


「ライヤ様、カスミ様、おはようございます…………なんですか?この大荷物。」


「あっマリ、おはよ!早速で申し訳ないけどちょっと準備して、私も手伝うから!」

「今からエルファスってとこに行くことになったから、よろしく!」


「…………なぜぇ?」


 寝起きのマリは困惑した様子で、ぱちくりと瞬きをしていた。すまん、急だったよな。やっぱり昨日起こしてでも教えとくべきだったか……?


 ♦︎


「レイシャさんが……。なるほど、それでエルファスに行くってことになったのかい。」


「急な申し出になってすまない。しばらく城の方には来れなくなるが……。」


「構わないさ。未来ある君たちを私の元で縛らせるわけにもいかないし、どうせ君たちを頼った理由は排除されているんだ。王国のことなど気にせず好きにするといい。」


 急だったにも関わらずクロノ王は快く旅立ちを承認してくれた。……理由は排除されたって、昨日のドラゴンやらのことじゃないか?言い方がまるで昨日の戦いを予見していたみたいだ。


「エルファスに向かうというならば、途中に野営地があっただろう?その辺りで一泊してから向かうのが良いんじゃないか?」


「はい、私もそのような方向性で考えておりました。一日で行こうとしたら夜の森を通らざるをえなくなります故、道中で野営を取ることにする手筈です。」


 マリから教えてもらったが、エルファスに行くまでの道中にある森。ここでは毎年冒険者の行方不明届が出ている、迷いやすく危険な森なんだとか。

 そんな森を夜に抜けていくなんて厳しいし、そこまでに安全な場所があるなら一旦休んでから行きたいな。


「あの辺りは魔物も近辺に比べて強くなってくるが……君たち三人なら問題は無いはずだ。」

「カスミはともかく、ライヤ。君は遠出するのは初めてだろう?確固とした目的意識の下で行くのだろうが、色んなものを見て、思う存分旅を楽しんでくると良い。」


 そう言って、追加でレイシャさんによろしくとだけ伝えてから、クロノ王は玉座に座ってから手を振っていた。


 城を出てからというもの、兵士に囲まれては深く敬礼をされ、エルファス方面の門へと案内された。まるで大御所の出陣みたいな丁寧さだが、王国の警備は良いのか?


「ねぇ、雷也。私たち、今から野を越え森を越え、新しい街に行くんだね。」


「佳澄はもう旅そのものはしてたんじゃないか?なんだ……あの、デザルマーバってところから。」


 緊張しているのか、ソワソワした様子だな。いや、それとも……。


『勘違いだって自分に言い聞かせて想いに気づかないフリするのは良くないよ。』


 昨夜言われたことを思い出す。まだ…………この答えを出すタイミングじゃないのかはずだと、頭から振り払う。


「それは……あの時は馬車で移動してたから、外の景色とか見ることはあまり無かったんだよね。だから実感が湧かなかったていうか……。」


「あー、そうでしたか。街道を行くとはいえ、歩き慣れてないと疲れるはずです。休みたい時はすぐおっしゃってくださいね。」


 最後尾にいたマリが後ろから心配の声を浴びせる。佳澄は申し訳なさそうに、かつ心配されることそれ自体が嬉しかったのか、照れて頬をかいてる。

 まあ、佳澄がソワソワするのも理解できる。小さい頃くらいしかRPGは触ってこなかったが、子どもながら冒険の数々にワクワクしていたものだ。


「門にお着きいたしました。雷也御一行様、御武運をお祈りいたします。」


 エルファスに続く門が開かれる。そういえばレイシャの指示以外で王国の外に出ることは無かったな。改めて見ると広大の草原、清々しい気分が湧いてくるな。


「行きましょう、ライヤ様。」


「行こう、ライヤ!」


 二人が小走りで俺を追い越す。…………うまく言えないが、今まさに、旅が始まったんだと、しみじみと思っていた。

読んでくださりありがとうございます。

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